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「心ばかりですが」とはどんな意味?
「心ばかり」とは、漢字では「心許り」と表現されます。「許り」は、「~だけ」「~のみ」という意味を持つ言葉。つまり、「心ばかりですが」には「ほんの気持ちだけですが」という意味合いが込められています。
心ばかりは、口頭で伝えるだけでなく、のし袋の表書きにも使われる言葉です。相手に感謝や思いやりを届けるためにも、正しいマナーを身につけておきましょう。
■贈り物をするときの謙遜した表現
「心ばかりですが」という言葉を聞くと、贈り物を渡すシーンを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「心ばかりですが」は、贈り物を渡すときの謙遜した表現です。
贈り物は、ときに相手に気を使わせてしまうこともありますよね。そのような場面でも「高価なものではありませんので、どうぞお気遣いなく」という気持ちを添えることができます。
■目上の人やお客様に使う言葉
「心ばかりですが」は、目上の人やお客様への謙遜を表す言葉です。目上の人やお客様へお詫びをする際に、品物に添える言葉として使用することができます。反対に、自分が品物を受け取るときには使用できません。以下のような文章はNG表現の一例です。
・心ばかりの品、大変感激いたしました。奥様にもどうぞよろしくお伝えください
「心ばかりですが」を使うシーンの注意点3つ
「心ばかりですが」と使うときには、以下の3つのポイントに注意する必要があります。「ていねいな気持ちを伝えたはずが、相手に対して失礼だった」ということのないように、それぞれについて確認していきましょう。
(1)高価な贈り物にはNG
「心ばかりですが…」という言葉には、「このような品物では到底お気持ちを伝えることはできませんが…」という気持ちが込められています。
そのため、あまり高価な贈り物に添えると、かえって失礼な印象を与えてしまうため注意が必要です。「たいしたものではないので、どうぞお気になさらず」と伝えたつもりが、相手に気を使わせてしまうこともあるのです。
とはいえ、「気持ちに合わせて高価な品物を選びました」と伝えることはできません。そのような場合には、「精一杯の気持ちを込め、お贈りさせていただきます」とひとこと添えましょう。
「心ばかりですが」は、あくまでも日常的な贈り物のやり取りに使われる言葉。自分本位にならないよう、贈られる相手を思いながら使用していきましょう。
(2)謝罪のときはお詫びの言葉を冒頭に
目上の人やお客様に品物を渡すシーンは、お祝いの席だけとは限りません。謝罪目的で相手のもとを訪れ、お詫びの品を渡すときにも、「心ばかりですが」のひとことが使えます。
ここで注意しておきたいのが、まずはお詫びの言葉を第一に伝えることです。あくまでも、謝罪を伝えるために相手先を訪問したことを忘れないようにしましょう。
(3)お返しの言葉や品物にも要注意
贈り物をいただくと、「お返しをしたほうが良いのでは?」と考えてしまうこともありますよね。しかし、「心ばかりですが…」と言われて受け取った品物には、お返しは不要だとされています。相手にお返しの品を贈ることで、「ほんの気持ち」「大したものではない」という心までそのまま返すことを意味するからです。
「心ばかりですが」と言われて差し出されたものは、ありがたく受け取りましょう。後日顔を合わせたときに、「先日はありがとうございました」「おいしく頂戴しました」など伝えることができれば、贈り主にも喜ばれます。
ただし、お中元やお歳暮のような品には、お返しをするのが正しいマナーです。その場合は、「心ばかり」ではなく、「御礼」とのしに書いて渡すことを覚えておきましょう。
シーン別「心ばかりですが」の正しいマナー
「心ばかりですが」を添えて渡す贈り物は、のしをかけたお菓子だったり、封筒やポチ袋に入れたお金だったりします。それぞれのマナーについてチェックしていきましょう。
■封筒で贈るとき
「心ばかりの気持ちを品物ではなく、お金で渡したい」。そのような場合には、「お礼金」として封筒にお金を入れて渡すことができます。車を出してもらったときや、冠婚葬祭でお世話になったときなど、お金を渡すシチュエーションはさまざまでしょう。
お金を贈るときの封筒は、郵便用の封筒ではなく白無地が一般的です。封筒上部には、水性マジックや筆ペンで「心ばかり」と書き入れましょう。必要に応じ、下部には名前も書きます。
贈る相手が部下や後輩など目下の場合には、「心ばかり」ではなく「寸志」と書き入れることも合わせて覚えておきましょう。
■ポチ袋で贈るとき
ポチ袋の「ポチ」には、「小さい」「ほんの少し」という意味があるとされています。そのため、お車代やおこづかい、お年玉など「ほんの少しのお金や気持ち」に適した入れ物です。
ただし、「心ばかり」のお金を入れるポチ袋は、目上の人に使うことはできません。あくまでも目上の人から目下の人へと渡すものです。
小さな袋のため、入れるお札は3枚ほどが目安となります。お車代の場合は相手がすぐに取り出せるよう、あえて封をしないこともポイントです。表書きは必ずしも必要ではないものの、場面に応じ「お車料」「心ばかり」とひとこと書き入れましょう。
■のしをかけて贈るとき
贈り物にのしをかけるときには、シーンに合わせた表書きが必要です。この際も封筒と同様に「心ばかり」と書き入れます。また、謝罪に持参する品の場合には、お祝い用ののしは使用しないよう注意します。表書きとしては「お詫び」「深謝」が適していると言えるでしょう。
「心ばかり」にプラスしたい言葉と使用例
「心ばかりですが」という言葉は、シーンに合わせたひとことをプラスすることができます。3つのシーンに合わせた正しい使用例を見ていきましょう。
■食べ物を贈るとき「お召し上がりください」
お菓子などの食べ物を贈るときには、「お召し上がりください」というひとことをプラスします。食べ物には好みもあるため、あらかじめ謙遜した気持ちを添えることが大切です。
・心ばかりですが、どうぞ皆様でお召し上がりください
・先日はお世話になりありがとうございました。心ばかりですが、どうぞお召し上がりくださいませ
■香典をお渡しするとき「お供えください」
「心ばかりですが」という言葉は、お悔やみの席でも使用できます。相手が気を落としている場面で失礼のないように、正しい使用例を確認しておきましょう。
・心ばかりの御香典ですが、御霊前にお供えください
・一周忌にあたり、心ばかりですがお花を送らせていただきました。お供えくださいませ