「ご入用」の使い方、注意するポイント
「ご入用」は店舗やビジネスの場などでよく使われる言葉です。直接的に「なにが必要?」「これ要りますか?」と尋ねることは、目上の人へは失礼にあたります。その際に「ご入用」を上手に使うと、品よく相手が欲することも確認できるのです。それでは、「ご入用」を実際に使う際の例や、その際に注意するべきポイントを確認しましょう。
使用例:「ご入用でしたら」「ご入用であれば」
先述のとおり、「ご入用」とは目上の相手へ必要なものの確認をする際に使う言葉。「ご入用でしたら~」「ご入用であれば~」は、「もし必要なら~」との内容を丁寧に表現可能です。取引先への営業活動でもよく選択される表現であり、「ご入用でしたら、こちらからお使いください」「なにかご入用でしたら、お気軽にご連絡ください」と使われます。「ご入用の際は~」だと「必要となったときは~」を意味します。これも営業活動でよく使われる表現です。「ご入用の際には、すぐに駆けつけます」などの表現がされます。
「ご入用ですか?」と聞かれた際の返答の仕方も確認しましょう。自分が返答する側であっても、丁寧な言葉遣いが必要です。尋ねられたものが必要なら「はい、お願いします」、要らないならば「結構です、ありがとうございます」と伝えましょう。時には「なにかご入用ですか?」などの具体性のない問いをされることも。自分から必要なものを言う場合、「では、〇〇をお願いします」と、要ると思うものを具体的に伝えましょう。
「ご入用ですか?」が使えるのは用意がある場合
「ご入用」は「あなたの為に、なにかできますか」との親切な意味が含まれる言葉です。そのため、好感を持ってもらいたい取引先や顧客へよく使用されます。注意するべきなのは、基本的に「ご入用ですか?」と聞けるのは、必要になりそうなものへの用意がある場合であることです。 例えば「スプーンはご入用ですか?」と確認した場合を見ましょう。問いに対して相手が「はい」と望んだのに「ただいま在庫をきらしております」といって渡せないようでは、逆に不快に思われてしまう可能性があります。
用意がないなら「ご希望」を選択
相手の望みを確認したいけれど用意がない場合や、用意があるものを望まれるかわからない場合は、「ご入用」ではなく「ご希望」と表現しましょう。「なにかご希望のものはありますか?」「こちらはいつまでの納品をご希望されますか?」のように使います。「ご希望」は目に映らないような内容への望み、とのニュアンスがある言葉。そのため、望むことへの強さのレベルが少し低く感じ、不快に思われにくいようです。
「ご入用」は目上の人へ使う
「ご入用」とは、自分よりも目上の人への尊敬の意を込めた言葉。自分自身の立場を下げた表現で相手への敬意を表す謙譲語のひとつです。目下や同等の相手へ「ご入用」を用いるのは正しくないので、気を付けましょう。
自分のことなら「入用」を選択
「ご入用」は目上の相手への敬意を含む言葉のため、自分が必要だと思うものや経費に対しては使えません。自分が欲しいものを表したいときには、尊敬の意味を持つ「ご」をなくし「入用」を使いましょう。欲しいものを直接的に「必要だ」と伝えるのは、相手に対してのプレッシャーになることも。しかし、オブラートに包んだ表現である「入用」を用いることでやわらかい表現にできるのです。例えば「〇〇が入用となったため、経費での購入は可能でしょうか?」のように使いましょう。
「ご入用」と間違いやすい3つの言葉
「ご入用」と似た言葉には、先述した「ご所望」「ご要望」「ご必要」以外にもあります。違う表現での言い換えをする際、ニュアンスが近いけれど意味合いが異なる言葉もあるため、気を付けなければいけません。それでは、「ご入用」との言い換えをする際に間違いやすい3つの言葉を、しっかりとチェックをしましょう。
「ご利用」
「ご入用」と間違いやすい言葉のひとつが、「ご利用」です。読みで比べてみると「ごいりよう」と「ごりよう」で、耳で聞く分にはあまり違いがわかりません。ニュアンスもなんとなく近いように感じ、「ご入用」と間違いやすいようです。「ご入用」とは「必要なもの」、「ご利用」とは「利益になるよう使うこと」「使って役立たせること」であり、意味が異なります。例えば、「なにかご利用ですか」では「なにか使いたいものはありますか」「あなたの利益になるものはありましたか」というような意味にとられるのです。
「コピー機をご利用ですか」と「コピー機をご入用ですか」の2つの文章で違いをチェックしてみましょう。前者の場合は「コピーができるサービスを使いますか」ですが、後者の場合は「コピー機を購入するなどして、手に入れますか」と、まったく違った意味合いに。このように、似たように感じる言葉であっても、言い換えると全く異なる内容になることも。きちんと自分の意図が伝えられる表現になったか、文章を作ったあとで確認すると良いでしょう。
「ご用命」
「ご用命」も、間違いやすい言葉のひとつ。「ご用命」と「ご入用」は文字にした際の見た目が似ています。さらにそれぞれの言葉を使うシーンにも一致する部分が多いため、ついつい混同しやすいようです。「用命」とはその字のとおり、「用を命ずる」「申し付ける」の意味を持つ言葉。そのため、「ご入用」を言い換える表現には使えません。ただし、「なにかご入用でしたらそちらのベルを鳴らしてご用命ください」のように、それぞれの言葉を同じ文章の中で使うことは可能です。
「物入り」
「物入り」も言い換えで間違いやすい言葉です。「物入り」とは「費用がかかる」「出費となることが重なる」を意味します。対して、「ご入用」は「必要なものやお金」を意味する言葉です。そのため、それぞれの表現している内容は異なります。 なお、「物入り」も「入用」と一緒の文章の中で使えます。「今月は入用となるものが多くて物入りだ」のように使いましょう。
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「ご入用」を理解しビジネスで正しく使おう
今回は「ご入用」について、「用事のため必要となること」との意味があることなどを解説しました。「ご入用」は、とくに営業の際などのビジネスの場において、便利に使える言葉です。直接的な言い回しを避けられるため、上手に用いれば品よく伝えたいことを伝えられるようになります。「ご入用」や似たニュアンスを持つ言葉の意味をしっかりと把握し、正しく使えるようになりましょう。
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