ビジネスシーンで時折使われる、「善処します」というフレーズ。実際に使ったことはありますか? 丁寧に聞こえる言葉ではありますが、使うシーンを誤るとかえって失礼に当たることも…。本記事で、「善処します」の意味や類語、注意点を解説しますので、正しい使い方をしっかり押さえてみてくださいね。
「善処」の意味や読み方とは?
まずは、「善処」の読み方と意味からチェックしていきましょう。
読み方と意味
読み方は「ぜんしょ」。意味を辞書で確認してみましょう。
[名](スル)
1 適切に処置すること。「事情に応じて―する」
2 (「善所」とも書く)仏語。来世に生まれるべきよい場所。人界・天上・諸仏の浄土など。「後生(ごしょう)―」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
さらに各字に分解して、それぞれの意味を詳しく見ていきます。「善」の意味は、「物事にうまく対処する」「行いや性質などが好ましい」。「処」は、「とりはからう」「物事がうまく運ぶように対処する」という意味です。つまり、「善処します」とは「状況に合わせて、適切に対処します」という表現として使われます。
ポジティブな印象を持たれるかもしれませんが、「できるかぎり対応します」「前向きに検討します」という曖昧なニュアンスを含む表現でもあります。
ビジネス等で使う時の注意点
「善処」の意味を解説しましたが、次に使う場面などの注意点を見ていきましょう。
返事としては曖昧
「善処します」は依頼などの返事として使うことができる言葉ですが、上記でも述べたように「できる限り対応します」というような、明言を避けた表現です。そのため、相手からは「曖昧な返答」と受け取られる可能性があります。
したがって、確実に対応する場合、「善処します」を使うのは相応しくありません。その場合は、「承知いたしました」「~に対応いたします」などとした方が良いでしょう。
目上の方への使い方
「善処」自体は敬語表現ではありません。「善処」+「します(丁寧語)」とすることで目上の方にも使える敬語表現となります。さらに丁寧な表現は「善処いたします」です。
また、目上の方や取引先の相手に「善処」をお願いする場合は、「ご善処」という表現が好ましいでしょう。「ご善処のほど、よろしくお願い申し上げます」とすると丁寧に伝えることができます。
「適切に善処します」は二重表現
二重表現とは、同じ意味の言葉を重ねて使う誤った表現のことです。例えば「頭痛が痛い」、「馬から落馬」といった具合です。「適切に善処します」は、「適切に」が「善処」の意味合いと重なり、二重表現となります。
使い方を例文でチェック
「善処します」を使うシーンは主に依頼への返答や、こちらから適切な対応をお願いする際に使われることが一般的です。以下、例文で使い方を紹介していきます。
「その件につきましては、善処します」
依頼を受けて、「その件は、できる限り対応いたします」という意味。「Yes・No」などの断定的な表現を避けた「一旦保留」というニュアンスを含んだ表現であり、すぐに返事ができないことに対して使う言い回しです。こうした返答をした場合は、曖昧なままにせず、後日はっちりとした返事をする必要があります。
「善処いたしますが、ご期待に添えない場合はご容赦ください」
こちらのフレーズは、「できるかぎりの対応はしますが、期待に添えない場合はお許しください」という意味。依頼に対して、「できないかもしれません」という旨を事前に断っておく表現です。「ご容赦ください」とあらかじめ謝罪の言葉を添えることで、相手に低姿勢な印象で伝えることができるでしょう。
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