「艱難辛苦を舐める」 は間違った使い方
この例文は間違った使い方です。正しくは「辛酸を舐める(しんさんをなめる)」です。意味は「辛く苦しい体験をする」になるので、つい混同して「艱難辛苦を舐める」と使いたくなるかもしれませんが、このような言い回しはありませんので、気をつけましょう。
類語や⾔い換え表現にはどのようなものがある?
「艱難辛苦」には、どんな類語や言い換えがあるのか、紹介します。
「四苦八苦」
この四字熟語は馴染みがあるのではないでしょうか。仏教用語で、「人間のありとあらゆる苦しみ」を表しており、「四苦」は「生・老・病・死」の苦しみを、「八苦」は四苦に、「愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五蘊盛苦」を加えたものを言います。読みは「しくはっく」、意味は「非常に苦しむこと」。「艱難辛苦」をより身近な言葉で表現すると「四苦八苦」になるでしょう。
「七難八苦」
こちらも「四苦八苦」と同じく仏教用語で、「しちなんはっく」と読みます。「四苦八苦」で紹介した八苦に、「七難」を加えたもので、七種類の災難を指す「七難」は経典によってちがうそう。「ありとあらゆる困難」を表していて、「四苦八苦」よりも「七難」が追加されているので、より「困難」の度合いが高い時に使用されます。
「櫛風沐雨」
「しっぷうもくう」と読みます。文字からもわかるように「風で髪を櫛けずり、雨に体を洗う」という意味を転じて、「風雨にさらされながら、辛苦奔走すること」という意味です。こちらは他の四字熟語よりは苦しみの表現は柔らかいですが、「苦労を重ねている」ことがわかるニュアンスの言葉となります。
対義語にはどのようなものがある?
「艱難辛苦」の対義語には、「順風満帆(じゅんぷうまんぱん)」が挙げられます。「順風」は「進行方向に吹く風」、「満帆」は「帆を目一杯張ること」で、「物事が順調に進むこと」を意味する言葉です。「艱難辛苦」とは違い、辛さや苦しみとは縁がなく、晴れた穏やかな海を船が帆を張り、ぐんぐん進んでいく様子が目に浮かぶ四字熟語です。
「艱難辛苦」の英語表現は?
「艱難辛苦」にそのままに当てはまる英語表現はありませんので、近い意味の言葉を使うことになります。例えば、「suffering(苦しむ)」「hardship(苦難)」「difficulties(困難)」「tribulation(苦難)」「trial(試練)」などが近い表現の単語となります。文章にすると、「He bore this trial.(彼は試練に耐えた)」や「They want to overcome hardship.(彼らは苦難を乗り越えたい)」や「All is full of tribulations.(世の中は苦難に満ちている)」といった形で活用できるので、覚えておきましょう。
最後に
「艱難辛苦」について紹介してきました。普段使うには、かなり硬く難しい印象のある四字熟語ですが、知っていると表現の幅も広がりますね。類語や英語表現も含めて、使えるようにしておきましょう。
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