「胡蝶の夢」を使った例文5つ
胡蝶の夢は、「胡蝶の夢のよう」「まるで胡蝶の夢」という使い方をすることがほとんどです。
【現実と夢の区別がつかないこと】
・確かに宿題を終えたつもりでいたが、どうやら夢の中の出来事だったようだ。まるで【胡蝶の夢】だ。
・いつから寝ていたのだろう。妙にはっきりとした夢を見ていて、夢の中では夢とは思っていなかった。【胡蝶の夢】のようだったな。
【物事が移ろい変化すること】
・一斉を風靡したタレントだったのに、たった一つのスキャンダルによって、【胡蝶の夢】のように世間からはすっかり忘れ去られてしまった。
【人生のはかなさを表現する】
・人生はまるで【胡蝶の夢】のよう、あんなにも充実した時を過ごしたのに、今はあとかたもなく、何もない日々だ。
・人生はしょせん【胡蝶の夢】、どんなに成功して巨額のお金を手に入れても、そのことに意味はあるのだろうか。
「胡蝶の夢」の関連語
「胡蝶の夢」に関連する語句としては、類語である「荘周之夢(そうしゅうのゆめ)」、「邯鄲の夢(かんたんのゆめ)」などが挙げられます。
「荘周之夢(そうしゅうのゆめ)」の「荘周」とは、胡蝶の夢を見た荘子の別名で、現実と夢の区別がつかないさま、人生のはかなさなど「胡蝶の夢」と同じ意味をもつ言葉です。「邯鄲の夢(かんたんのゆめ)」は、唐の時代の古典作品である「枕中記」の中の故事が由来とされる、こちらも「胡蝶の夢」と同様に人生のはかなさを伝える故事成語です。
また、「胡蝶の夢」のキーワードは、「人生」と「夢」です。ここからは、「胡蝶の夢」の二つのキーワードが入った四字熟語をいくつかご紹介します。
「胡蝶の夢」のキーワード「人生」に関する四字熟語
「胡蝶の夢」は、人生のはかなさのたとえとしても使われます。胡蝶の夢と同様に人生に関する四字熟語には、「佳人薄命」や「盛者必衰」があります。
「佳人薄命(かじんはくめい)」は、美人は幸せな人生を送れないこと、また短命であることを意味する言葉です。「佳人」は美人、また「薄命」は幸運に恵まれないことをあらわします。
「盛者必衰(じょうしゃひっすい)」は、勢いが盛んなものは必ず衰えること、この世の無情さをあらわす四字熟語です。歌謡曲の歌詞に使われるなど、広く親しまれている言葉の一つといえるでしょう。
「佳人薄命」も「盛者必衰」も、胡蝶の夢に通じる「人生のはかなさ、物事の移ろい」の意味をもつ四字熟語です。
【佳人薄命:かじんはくめい】
《蘇軾「薄命佳人詩」から》美人は、病弱で早死にしたり、運命にもてあそばれて、不幸になったりすることが多いということ。美人薄命。【盛者必衰:じょうしゃひっすい】
無常なこの世では、栄花を極めている者も必ず衰えるときがあるということ。「娑羅双樹の花の色、―のことはりを表す」〈平家・一〉
「胡蝶の夢」のキーワード「夢」が入った四字熟語
胡蝶の夢のキーワードである夢の文字が入った四字熟語には、既にご紹介した「荘周之夢」や「邯鄲の夢」をはじめとして、人生のはかなさをあらわす語句が多いことが特徴です。そこで今回は、それ以外の意味をもつ「聖人無夢」と「昼想夜夢」をご紹介します。
「聖人無夢」は、「せいじんむむ」または「せいじんにゆめなし」と読み、徳を積んだ聖人は心を乱すことや悩みがないため、夢を見ないことのたとえです。夢か現か区別がつかないという意味をもち、幻想的なイメージの「胡蝶の夢」と比べると、かなり現実的な言葉という印象を受けます。
「昼想夜夢」は、「ちゅうそうやむ」と読む四字熟語で、昼間に考えていたことを夜も夢に見るという意味の言葉です。恋愛ににまつわる四字熟語としても知られています。
【聖人に夢なし:せいじんにゆめなし】
《「荘子」大宗師から》聖人は悟りの境地にあり、雑念に煩わされないから、安眠することができて夢など見ない。
人生は「胡蝶の夢」、毎日を大切に過ごそう
胡蝶の夢は、夢と現実の区別がつかないさま、また人生のはかなさをあらわす言葉です。日常の会話やビジネスシーンで活用するというよりは、人生について思いを馳せる際にふと思い出す言葉なのかもしれません。
人生は胡蝶の夢のようにはかなく移ろいゆくものです。だからこそ、今この瞬間を大切に過ごしていきたいものですね。
(引用すべて〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
写真・イラスト/(C)Shutterstock.com
▼あわせて読みたい