「情状酌量」とは状況を考慮して大目に見ること
「情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)」とは、裁判で用いられる用語です。訴えられている側の状況に配慮して、刑を軽くすることを指します。
【情状酌量】じょうじょうしゃくりょう
刑事裁判において、同情すべき犯罪の情状をくみ取って、裁判官の裁量により刑を減軽すること。「―する余地がある」
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より)
なお、情状とは「実際の事情」を指します。酌量は「処置や処罰に手心を加えること」です。つまり、事件を外から見ているだけでは分からない実情を知り、訴えられている側の気持ちに寄り添って処罰を変えることを意味する言葉といえるでしょう。
裁判で「情状酌量」となる条件
どんなときでも情状酌量が行われるわけではありません。訴えられている側の事情はいつでも同情できるとは限らないため、情状酌量されず、規定通りの刑罰が定められることもあります。
裁判において情状酌量となるには、次のいずれかの条件を満たしていることが一般的です。
・故意ではない
・今までに罪を犯したことがない
・訴えているほうにも問題がある
・偶発的な事件と考えられる
・訴えているほうに与えた被害が大きくはない
・まだ若く、更生の余地がある
・反省している様子が明らかである
ただし、上記のいずれかの条件を満たしていても、裁判官によっては情状酌量できないと判断することがあります。情状が同情すべきものであっても、あくまでも「刑を軽減できる」のであって「刑を軽減しなくてはならない」というわけではないため、訴えられている側の態度に問題があるときなどは情状酌量されません。
減刑の範囲は決まっている
情状酌量される場合であっても、どこまでも刑が軽くなるのではありません。罪に対して処罰はある程度決まっているので、その処罰を基に減刑される範囲も決まっています。
例えば死刑に相当する罪の場合は、情状酌量されると無期懲役・禁固あるいは10年以上の懲役・禁固になることがあります。無期懲役・禁固の場合は7年以上の懲役・禁固、有期懲役・禁固の場合は期間の上限あるいは下限が1/2に減刑することが可能です。
また、罰金刑の場合は、過料の上限が1/2になることがあります。情状酌量された刑でも重すぎると考えられる場合は、上告などにより裁判をやり直し、判決からし直す必要があるでしょう。
情状酌量の同義語・類語
情状酌量という言葉は、裁判以外でも使われることがあります。よくないことをした人に対して、その人の状況に配慮して責めないようにするときなどにも、情状酌量という言葉が使われることがあるでしょう。
情状酌量と似た意味の言葉としては、次の3つを挙げられます。それぞれの意味とニュアンスを例文を使って紹介します。
酌量減軽(しゃくりょうげんけい)
「酌量減軽」とは、情状酌量と同じ意味の言葉です。訴えられている人の状況や事情などに配慮すること、結果として刑罰を軽くすることなどを指します。
一般的には情状酌量という言葉がよく用いられますが、法律上は酌量減軽が正式な用語です。なお、刑を軽くすることを「減刑」といいますが、酌量減軽は刑罰が軽くなる理由として使われる言葉なので、減刑ではなく減軽が正しい漢字となります。
なお、訴えられている人の状況を調べたときに、同情できる余地がまったくなく、かえって悪質さが判明することもあるでしょう。そのような場合でも、情状を酌量して刑罰を重くするということはありません。ただし、何度も同じ犯行を繰り返している場合などには、刑が重くなることがあります。
忖度(そんたく)
「忖度」とは、「相手の気持ちを考える」という意味の言葉です。裁判で用いられることがある言葉ですが、裁判以外の日常生活でもしばしば用いられます。例えば、次のように使うことができるでしょう。
例文
・病院長に忖度して、新しく作る病院の玄関ホールには前病院長の銅像を設置した。病院長は前病院長である祖父を大変尊敬しているから、きっと気に入ってくれるだろう。
・彼の話は上司への忖度ばかりで、本当に彼がしたいことが見えてこない。
▼あわせて読みたい