【目次】
・「忖度」の意味は?
・「忖度」の正しい使い方は?
・「忖度」のシーン別の使い方と例文
・「忖度」の7つの言い換え表現
・「忖度」の対義語は?
・「忖度」の意味を表す英語表現
・「忖度」の意味を理解して正しく使おう
「忖度」の意味は?
「忖度」には「相手の気持ちを推し量る・推察する」といった意味があります。意味がわからなければ、「忖度」という言葉を適切に使用することはできません。
使い方や例文を知る前に、まずは言葉そのものの意味を理解しておきましょう。ここでは「忖度」の正しい意味や「忖度」が使える対象、主な使用シーンについて解説します。
■「忖度」の意味は「推し量ること」
「忖度」は、簡単に言うと「相手の気持ちを察すること」を意味します。漢字の「忖」と「度」を組み合わせた言葉で、読み方は「そんたく」です。
「忖」と「度」はどちらも「量る」という意味合いがあります。「量る」は「推し量って見当をつける」「慮る」を表す言葉です。つまり「忖度」は、相手の気持ちや意図を察したり、推測したりするといった意味をもちます。
中国最古の詩集である『詩経』で使われているほか、日本においては平安時代中期の『菅家後集』での使用が確認されるほど、「忖度」は長い歴史をもつ言葉です。
「忖度」を使う対象は限定されておらず、目上の人から家族や友人まで幅広く使えます。ただし、かしこまった印象を与えるため日常会話で使われることは多くありません。主に政界やビジネスシーンで多用されます。
「忖度」の正しい使い方は?
「推し量る」「推察する」といった意味をもつ「忖度」は、ポジティブな表現です。拡大解釈によってネガティブな用法で使われることもありますが、本来は悪い意味をもちません。ここでは「忖度」の正しい使い方を説明します。適切に使用できるように、正しい使い方を確認しましょう。
■ポジティブな意味で使用する
「忖度」は、ポジティブな表現として使うのが正しい用法です。「相手の意図や感情、状況を推し量る」とは、言い換えると「相手が望んでいるものや求めるニーズは何かを考えること」です。
つまり「忖度」は相手への配慮や思いやりに関する表現です。「忖度」にはこういった「推し量る」以外の意味がありません。よって「忖度」を使えるのはポジティブな場面だけに限定されます。
「忖度」のポジティブな使い方の例を以下に挙げます。
・クライアントに忖度して、打ち合わせの日程を調整する。
・購入するか迷っている顧客に忖度し、離れた所で控える。
・家事や育児が忙しい妻に忖度して、食事を準備する。
ネガティブな意味で使用するのは誤り
「忖度」は良い意味しかもたないため、ネガティブな文脈で使うのは誤った使い方です。ネガティブな用法が広まったきっかけは、流行語大賞に選ばれた2017年に、政治問題の中でネガティブな発言として使用されたことです。
当時は「目上の人の意見を汲み取り、その意図に沿った行動や良くない行いをする」といった文脈で使われましたが、そもそも「忖度」にはそういった意味はありません。立場が上の人へのおべっかやひいきを表す言葉ではないため、ネガティブな使い方をしないように気をつけましょう。
注意すべき「忖度」のネガティブな使い方の例は、以下を参考にしてください。
・彼は上司に忖度ばかりして、部下には何もしてない。
・会長に忖度すれば、組織に対して批判的な行動を取りにくくなる。
「忖度」のシーン別の使い方と例文
「忖度」が使える主なシーンは以下の4つです。
1. 相手を思いやる
2. 相手の気持ちを推察する
3. 不確かな根拠を信じる
4. 背景を推し量る
それぞれのシーンごとに「忖度」のニュアンスが異なります。ここではシーン別に「忖度」の使い方と例文を説明します。使いたい場面で適切に表現できるように、ぜひ参考にしてください。
1. 相手を思いやる
「忖度」は相手を思いやる場面で使えます。「忖度」と「思いやり」は似ている言葉ですが、感情が強くこもっているかといった違いがあります。「忖度」は「相手の様子から気持ちや意図を考えて行動する」という意味です。
一方、「思いやり」は「相手の立場になり、相手の気持ちに配慮すること」を表します。どちらかというと「思いやり」の方が感情がこもった表現です。
相手への思いやりを表す「忖度」の例文をご紹介します。
・妻を忖度して誕生日プレゼントを選ぶ。
2. 相手の気持ちを推察する
相手の気持ちを推察する場面には「忖度」が適しています。「推察」のほか、「見当をつける」「想像する」と言い換えるとわかりやすいでしょう。「忖度」を使うと「相手の状況を見て、相手の胸の内を考えること」を表現できます。
相手の様子などから相手の気持ちを考え、何らかのアクションを起こす際に使える「忖度」の例文をご紹介します。
・私は彼に忖度して行動する。
3. 不確かな根拠を信じる
「忖度」は不確かな根拠を信じる際に使える言葉です。確信を持っていないものの、相手の様子などから仮定した根拠をもとに行動するようなケースです。例えば具合が悪そうな相手に対し、「早く帰ってゆっくりするほうがいいよ」と提案する場面が挙げられます。
根拠がはっきりしない場合に相手を配慮する際は、以下の例文を参考にしてください。
・部下へ忖度して早退するように勧めた。
4. 背景と結論をまとめて表現する
「忖度」は、自分の行動について、行動に至った背景や結論をまとめて伝える際に使う言葉です。例えば「彼に忖度して行動した」と言うと、「彼が望んでいたことを推察した結果、そのような行動を起こした」といったニュアンスが伝わります。つまり、「彼の思いを推し量ったうえでの行動であること」を「忖度」の一言にまとめられます。
背景や結論をまとめる際の「忖度」の例文をご紹介します。
・社長に忖度して他社に提携の話を持ちかけた。
「忖度」の7つの言い換え表現
「忖度」には似たような意味を持つ言葉があります。代表的な言い換え表現は以下の7つです。
1.「推測」
2.「憶測」
3.「推察」
4.「臆説」
5.「お気遣い・お心遣い」
6.「斟酌」
7.「慮る」
「忖度」と言い換えられるものの、表現ごとに伝わるニュアンスが異なります。立場やタイミングに適した表現を使えるように、「忖度」の言い換え表現を確認しましょう。
1.「推測」
「推測」は「データや資料などの情報に基づいて推し量ること」を意味します。ビジネスシーンで多用されるため、聞き馴染みがある人は多いでしょう。「相手はこう考えているのではないか」と推し量ることを表す点は「忖度」と同じです。
ただし、「推測」は客観的に物事を見るニュアンスを含みます。自ら物事をよく考えて判断を下す際には適していますが、「忖度」のように「相手への思いやり」といった意味はありません。
「推測」の使い方の例をご紹介します。
・証拠から事故の原因を推測する。
・売上データを見ると、今期も継続した利益が見込めると推測できます。
2.「憶測」
「憶測」は「人や物事について深く考えず、いい加減に推し量ること」を表す言葉です。根拠はなく、想像や予想に基づいて意見を述べる際に多用されます。
「忖度」と同様に「相手の感情を察すること」を表せますが、「憶測」の方が主観が強く抽象的な表現です。データに基づいて憶測する場合は「推測」、より人の気持ちにフォーカスして推し量る場合は「推察」に言い換えられます。
「憶測」を使った例文には以下が挙げられます。
・彼は憶測でものを言うので真に受けてはいけません。
・次のリーダーは誰になるのかについて、さまざまな憶測が飛び交っています。
3.「推察」
「推察」は、人を対象として「事情や心中を推し量ること」を意味する言葉です。すでに把握している事実や状況から相手の気持ちを考えて配慮を示す際に、「忖度」の言い換え表現として使えます。
また、ビジネスシーンでは「ご推察のとおり」といった形で使用するケースもあります。「ご推察のとおり」は「そのとおり」を意味する慣用表現です。
「推察」を使った例文をご紹介します。
・本件に関しては、おおよその推察がついていました。
・部長の気持ちを推察して、事前に準備をするように意識しています。
4.「臆説」
「憶説」の意味は「根拠なく予想した仮説」です。相手にしか真相がわからないことについて、曖昧な基準をもとに仮説を述べる点は「忖度」も「憶説」も変わりません。そのため、相手の事情や気持ちを察する際は「忖度」の代わりに「憶説」と言い換えられます。
ただし、親しい相手に対しては多少なりとも理解が深いと考えられることから、「憶説」よりも「忖度」が適しています。
「憶説」を使った例文は以下を参考にしてください。
・ただの憶説にすぎません。
5.「お気遣い・お心遣い」
「お気遣い・お心遣い」は、どちらも「配慮や心配り」を示す表現です。丁寧さを表す接頭語「お」が付いているため、敬語として目上の人にも使えます。配慮が伝わる点は「忖度」と似ていますが、「お気遣い・お心遣い」は相手から自分に対する行動に対して使う言葉です。
一般的には「お気遣いありがとうございます」「お心遣いありがとうございます」といった形で、相手がしてくれた配慮に対する感謝を伝える際に使います。
「お気遣い・お心遣い」を使ったその他の例文をご紹介します。
・どうぞ、お気遣いなく。
・お気遣いに感謝します。
・お心遣いに感謝申し上げます。
6.「斟酌」
「斟酌(しんしゃく)」は「忖度」と同じく、「相手の心情を汲み取ること」を意味する言葉です。「忖度」との違いは、相手の気持ちを考えたうえで実際に行動に移すかどうかです。
「忖度」は行動を伴わず、「あなたの気持ちを理解しています」といった姿勢を見せる際に使用します。一方、「斟酌」は心情を汲み取った結果、手加減したり言動を控えめにしたりといった行動を起こすことまでを含みます。
「斟酌」を使った例文を確認しましょう。
・斟酌を加えて採点した。
・景気の現状を斟酌して生産高を調整する。
7.「慮る」
「慮る(おもんぱかる)」は「思いはかる」の読み方が変化した言葉です。そもそも「思いはかる」には「考えを巡らせる」といった意味があります。「忖度」と同様に、「慮る」は相手の気持ちを踏まえたうえで行動する際に使える表現です。
ただし、「忖度」は相手の心情にフォーカスする言葉ですが、「慮る」は自分の考えを深く巡らせるといったニュアンスがあります。
「慮る」を使った例文には以下が挙げられます。
・部長の事情を慮って、今夜の食事会は延期にします。
・明日のミーティングは万一の事態を慮って、違う対応も検討して臨みましょう。
「忖度」の対義語は?
「忖度」には反対の意味をもつ対義語がいくつか存在します。なかでも代表的な対義語は「独善」と「身勝手・利己的」です。
「忖度」の類義語に加えて対義語を把握することは、「忖度」への理解をさらに深めることにつながります。ここでは、「独善」と「身勝手・利己的」の意味や「忖度」との違いをまとめました。「忖度」を正確に理解するために、それぞれの意味を見ていきましょう。
■「独善」
「独善(どくぜん)」は「忖度」の対義語です。「独善」には「独りよがり」「自分だけが正しいという思い込み」といった意味があります。自らの考えや意見を優先し、他人の事情は考慮しない様子を示す表現です。
「忖度」は他人の状況や気持ちを推し量ることを意味するため、自分のことしか考えないような言動を表す「独善」とは大きく異なります。
■「利己的・身勝手」
「忖度」の対義語として、「利己的・身勝手」も挙げられます。どちらも「自分の利益だけを考える様子」を表す言葉です。
「利己的・身勝手」は、相手の立場や事情を考慮する意味は含みません。他者は顧みず、あくまで自分の利益だけを追求して行動することを表します。相手の心情や気持ちを推し量り、相手が求める行動を起こす「忖度」とは正反対の意味であることがわかるでしょう。
「忖度」の意味を表す英語表現
「忖度」を英語にするならば、意味が似ている表現として以下の5つが使えます。
・conjecture(推測する、憶測する、推量する)
・surmise(推測する、推測する、思う)
・guess(推測する)
・reading between the lines(行間を読む)
・reading what someone is implying(誰かが暗示していることを汲み取る)
相手の感情を推し量るといった考え方は日本ならではのものです。欧米ではストレートに発言する文化があり、他者の事情や気持ちを推し量るといった習慣は根付いていません。
そのため、「忖度」を英語で正確に表現するのは困難です。例えば「conjecture」「surmise」「guess」を使って「忖度」を表す文章を作ろうとしても、細かなニュアンスが伝わらない可能性がある点には注意しましょう。
「忖度」の意味を理解して正しく使おう
「忖度」は「相手の事情や気持ちを推し量ること」を意味します。対象となる相手を選ばず、目上の人から親しい間柄の人まで幅広く使える表現です。
ただし、「忖度」にはポジティブな意味しかないため、ネガティブな使い方をしないように注意が必要です。「忖度」の意味や使い方を正しく理解し、適切な場面で使えるように覚えておきましょう。
こちらの記事もたくさん読まれています
「忖度」の本来の意味を確認しておきたい!正しい使い方や例文、類義語も解説
【今からでも間に合う!】決断力のある人とは? 臨床心理士が指南する決断力の鍛え方も!