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マーケティングや商品開発に携わる人の中には、「シーズ」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか? 企業の技術力やアイデアから生まれる「シーズ志向」の商品やサービスは、私たちの生活に変革をもたらすのでしょうか。本記事では、「シーズ」の意味や具体例、ビジネスにおける活用方法を解説します。
「シーズ」の意味とは?
マーケティングや商品開発に携わったことがある方は、「シーズ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。まずは「シーズ」の意味を詳しく解説していきます。
意味
「シーズ」とは、種(=seeds)のことで、企業が持つ技術力やノウハウ、アイデアを意味します。消費者の持つ欲求「ニーズ」に対する言葉として使われることが多いビジネス用語です。
企業が持つ「シーズ」を基に生み出される新しい商品やサービスは、市場にないものが多く、人々の生活を変えるくらいの可能性を秘めています。
「シーズ」から生まれた商品は?
「シーズ」を基に生まれた有名な商品として、「iPhone」が挙げられます。「iPhone」は、アップル社の持つ高い技術力により開発された商品です。「iPhone」は、タッチスクリーン操作やアプリのエコシステム、洗練されたデザインを備え、当時のスマートフォン市場を一変させました。
アップル社を設立したスティーブ・ジョブズの有名な言葉に、「消費者が望むものを提供するのは私のやり方ではない」というものがあります。すでに顕在化している「ニーズ」に合わせて商品を開発するのではなく、「シーズ」をもとに商品を開発をする。そして、新たな「ニーズ」を掘り起こすのが、スティーブ・ジョブズの姿勢だったといえるでしょう。
こうして生まれた「iPhone」は、大ヒットし、今や全世界で支持される商品になったのです。
ビジネス等で使うときの注意点
「シーズ」を起点に新たな商品やサービスをつくっていくアプローチのことを、マーケティングの世界では「シーズ志向」といいます。「シーズ志向」は、まだ世の中にない新しい商品を生み出せる可能性があります。
しかし、どんなに高い技術や革命的なアイデアから生まれた商品・サービスであっても、使うのはあくまで消費者。消費者が興味を持ち、必要としなければ、売れることはありません。そのため、後に説明する「ニーズ志向」と合わせた商品開発やサービスの考案が必要になってくるでしょう。
「シーズ」、「ニーズ」、「ウォンツ」の違いとは?
「シーズ」や「ニーズ」のほかに、「ウォンツ」も聞いたことがあるのではないでしょうか。マーケティングでよく使われる用語ですが、それぞれ意味が違います。
「シーズ」と「ニーズ」の違い
「シーズ」と「ニーズ」の違いをわかりやすくいうと、「シーズ」は生産者視点の考え方で、「ニーズ」は消費者視点の考え方です。
まずは「ニーズ」の意味から解説します。「ニーズ」は「必要」「要求」といった意味の言葉で、ビジネスシーンにおいては、消費者が求めていることをさします。 例えば、「シワやたるみを解消したい」「喉が渇いたから飲み物が欲しい」などが「ニーズ」です。
さきほど説明した通り、企業が持つ「シーズ」を起点にしたアプローチを「シーズ志向」というのに対し、消費者の「ニーズ」を起点にしたアプローチを「ニーズ志向」といいます。このことからもわかるように、商品開発やサービスをつくる起点が「消費者」なのか、「生産者」なのかが明確な違いです。
「シーズ」と「ウォンツ」の違い
企業の持つ強みを「シーズ」というのに対し、「ウォンツ」は、具体的なサービスや商品に対する欲求のことです。「シーズ」とはまったく違う意味の言葉ですが、「ニーズ」と似ているので、よく混同されがちです。
例えば、「ニーズ」が「シワやたるみを解消したい」であれば、「ウォンツ」は「シワやたるみの改善に効く、あのブランドの美容液が欲しい」というように、特定の商品やサービスのことをさします。
使い⽅を例⽂でチェック
「シーズ」は、ビジネスシーンで使われることが多い言葉です。使い方を間違って、恥ずかしい思いをしないように、例文を参考にして理解を深めてくださいね。
「弊社の商品開発は、そろそろニーズ志向からシーズ志向に転換しないと成長が見込めない」
「ニーズ志向」によるビジネスは、すでにある需要に対して提供するため、一定の売り上げが見込めます。しかし、ライバルも多く、価格競争に巻き込まれてしまうことも多々。いま行っている事業に行き詰まりを感じたときは、自社独自の強みを起点とした商品開発をしてみると、新たな市場を開拓できるかもしれません。
「社会のニーズと、A社が持つ技術のシーズがうまく合致したから、あの商品は大ヒットした」
それまで市場になかった商品がヒットした要因に、「シーズ」と「ニーズ」がうまく合致したから、というのがあるかもしれません。そのような商品を見つけたら、開発背景にある「シーズ」は何だったのか、そしてそれが消費者のどんな「ニーズ」に合ったのか、探ってみるのも面白いでしょう。
「新規事業を生み出すシーズは揃っているが、それをニーズとマッチングさせるのが課題だ」
技術力、企画力、経験によるノウハウなど、企業にはたくさんの「シーズ」が眠っています。しかし、それを社会の「ニーズ」とどうマッチングしていけばいいのか、わからないという方は多いはず。そんなときに使える例文です。
類語や⾔い換え表現にはどのようなものがある?
企業の持つ技術力やアイデアなどを基に、商品やサービスをつくることを「シーズ志向」というと説明しました。同じような意味で、「プロダクトアウト」という言葉があります。「プロダクトアウト」とは、企業が作りたいものを優先して商品開発や生産をすることです。
なお、「プロダクトアウト」の反対の言葉として、「マーケットイン」というものがあります。「マーケットイン」というのは、消費者の「ニーズ」を優先して商品開発や生産をすることをいいます 。
「シーズ志向」のメリット
独自の技術や革新的なアイデアなどをもとにした、「シーズ志向」。そのメリットには何があるのでしょうか。
市場を独占できる
「シーズ志向」で生み出された商品は、企業の独自技術やアイデアを活かして開発されるため、まだ市場にないことが多いです。このため、競合が少なく、市場を独占できる可能性が高くなりますね。他社が参入する前に、独自の商品やサービスで市場をリードすることができるでしょう。