「鯰」という漢字をご存じでしょうか? 普段あまり目にすることはないかもしれませんが、この魚には地震の予兆や豊作の象徴としての興味深い伝説があるんですよ。そこで本記事では、「鯰」の読み方や特徴、そして鯰にまつわる興味深いエピソードを紹介します。
「鯰」の由来や読み⽅とは?
魚に念じると書く「鯰」。まずは、由来と読み方からチェックしていきましょう。
<由来と読み⽅>
「鯰」の読みは、「なまず」です。「鯰」は鱗がなく滑らかであることから「滑らか」を意味する「ナメ」と、泥や土を意味する「ず(歴史的仮名遣いは“づ”)」で「泥の中の滑らかな魚」が由来であると一説には言われています。
漢字の成り立ちとしては、「鯰」は「ねばる」ことから「念」が使われていますが、昔の中国では「粘る」から魚へんに「占」で、「ナマズ」と読みました。それは日本では「鮎(あゆ)」と同じ漢字ですが、現在は日本と同じ漢字「鯰」が使用されています。
「鯰」の特徴
「鯰」は、ほぼ日本全国の淡水域の水底で生息している夜行性の魚です。ここでは、「鯰」の主な特徴を5つ紹介します。
長い口ひげ
「鯰」は幼魚の時は6本、成魚になると4本の長い口ひげが特徴です。ひげといっても感覚器で、それを使って餌を探します。主に小魚、カエル、エビ類などを捕食する肉食魚です。また、鯰のような細くて長い口髭のことを「鯰髭」といい、明治時代の役人がよく生やしていたことから、嘲る対象となっていたようです。
釣りやすい魚
「鯰釣り」という言葉が存在するほど、釣りをする人の間では、近年注目されている魚です。ルアーに対する反応が良いこともり、「鯰」専用の道具も開発されています。産卵期の5~7月が釣りのシーズンですが、暖かい場所では通年釣れることも。
鰻に似た味わい
「鯰」は食べることのできる魚です。味は鰻に似た味わいで、脂がよりのっています。ただし、生息環境によっては泥臭さがでるのが特徴。代表的な鯰料理は、日本では蒲焼・天ぷら・刺身・汁物で、海外ではソテーやムニエル、フィッシュ・アンド・チップスに使われています。特にベトナムが世界最大の鯰養殖国で、焼き魚や魚醤や和え物として調理されているのだとか。
夜行性
「鯰」は夜行性の魚で、昼間は水底に隠れており、夜になると活動を始めます。この特性を利用して夜釣りが盛んです。夜行性であるため、視覚よりも触覚や味覚を頼りに餌を探しているようです。
生息環境
「鯰」は主に淡水の水底に生息しており、湖や川、沼地などで見られます。泥や砂の中に身を潜めて生活しているため、捕まえにくいことがあります。また、環境の変化に強く、都市部の河川や池でも適応して生息しているようです。
「鯰」は縁起がいい
「鯰(なまず)」は、古くから日本で縁起が良いとされています。鯰は地中の振動に敏感で、地震の前に活発に動くことから、地震の予兆として地震除けの守り神と見なされ、神社に祀られることがあります。また、「鯰」が多く捕れる年は、稲作が豊作になると言われ、豊作の象徴ともされました。
このため、「鯰」は農業の守り神ともされ、農作物の豊穣を祈る際にも信仰の対象となっているようです。
「鯰」の文字が入った有名なものとは?
日本では、古くから「鯰」は神聖で、特別な力があるものと見られていたこともあり、地域によっては神社に祀られていたり、「鯰」の姿をした狛犬が存在しているのだとか。そんな「鯰」の文字が入る有名なものを4つ紹介します。
鯰尾藤四郎
ゲームやミュージカルなどで有名な『刀剣乱舞』にも、擬人化されて出てくる名刀の1つが、「鯰尾藤四郎 (なまずおとうしろう)」です。鎌倉時代に藤四郎(粟田口)吉光によって作成されたと言われている薙刀直しの脇差です。その姿が「鯰」の尾のようであったことから、そう呼ばれるようになったと『享保名物帳』(御用鑑定家の本阿弥光忠がまとめた、日本刀の古今の名品を集録したリスト)に書かれています。
最初の持ち主は、織田信長の次男・織田信雄(のぶかつ)で、その後豊臣秀頼に渡りました。大坂夏の陣の落城で共に焼け落ちたものを、再度徳川家康が焼き直しを命じ、現在は徳川美術館所蔵の品となっています。