「泣いて馬謖を斬る(ないてばしょくをきる)」とはどんな意味?
「泣いて馬謖を斬る」とは、規律を保つためには、たとえ自分が可愛がる者であっても処罰するという意味です。
【泣いて馬謖を斬る】
《中国の三国時代、蜀しょくの諸葛孔明しょかつこうめいは日ごろ重用していた臣下の馬謖が命に従わず魏に大敗したために、泣いて斬罪に処したという「蜀志」馬謖伝の故事から》規律を保つためには、たとえ愛する者であっても、違反者は厳しく処分することのたとえ。
(引用〈小学舘 デジタル大辞泉〉より)
中国の故事に出てくる言葉で、「馬謖」とは人の名前です。泣きながら命令に背いた部下の馬謖を斬ったという内容の話で、現代でも組織などの規律を守ることを表すときに使われます。
私情を捨てて規律を守ることの重要さを説く
「泣いて馬謖を斬る」とは、規律を守るためには私情を捨てなければならないことを教える言葉です。特にビジネスやスポーツの世界など、組織の規律や規則を重視する場面で使われます。
規律を守らない者に対して私情を挟み、許してしまうと組織の秩序を乱すことになりかねません。存続を危うくする可能性もあるでしょう。そのようなことがないよう、諌めるため使われます。
『三国志』の中で出てくる言葉
「泣いて馬謖を斬る」の出典は、中国の三国時代について書かれた歴史書である『三国志』です。時代は中国が「魏・呉・蜀」という3つの国に分かれていた西暦184~280年頃になります。
『三国志』は魏志30巻・呉志20巻・蜀志15巻の65巻からなり、「泣いて馬謖を斬る」の物語は、蜀志15巻の中にある「蜀志・諸葛亮伝」に出てきます。
「馬謖」は武将の名前
「泣いて馬謖を斬る」の物語は、蜀の国の軍師である諸葛孔明と、その部下である武将・馬謖が登場人物です。
馬謖は軍の命令に背いて行動したため、それが原因で軍は敗戦してしまいます。
馬謖は諸葛孔明が実の子のように可愛がっていた部下ですが、軍の規律を守り責任を取らせるためには、泣きながら処刑するしかなかったという内容の話です。
規律を保つための教訓を示す
「泣いて馬謖を斬る」の物語は、組織の規律を保つためには、私情を挟まず責任者を処分しなければならないという教訓を示しています。
例えば、会社であれば将来を有望視されていた優秀な部下が大きな失態を犯したことで、やむを得ず解雇処分にしたというような場合です。甘い処分をしては、組織の信用や存続にも関わるため、あえて厳しい処分をしなければならないようなケースに用いることができます。
「泣いて馬謖を斬る」の例文
「泣いて馬謖を斬る」の意味をよく理解するために、いくつかの例文を紹介しましょう。
・次の主将と期待されていた彼が規律違反したため、部長は【泣いて馬謖を斬る】思いで彼を退部させた
・彼は幹部候補として期待されていたが、取引先とトラブルを起こしたため左遷された。社長は【泣いて馬謖を斬る】決断だっただろう
・我が子であっても、社会のルールが守れないようでは【泣いて馬謖を斬る】つもりで厳しく対応しなければならない
「泣いて馬謖を斬る」と似た言葉
「泣いて馬謖を斬る」とよく似た言葉がいくつかあります。「心を鬼にする」「可愛い子には旅をさせよ」などは、聞いたことのある方も多いでしょう。ほかにも、「獅子の子落とし」という言葉が類語にあたります。
似た言葉を知ることで「泣いて馬謖を斬る」が持つ意味の理解も深くなるでしょう。ここでは、「泣いて馬謖を斬る」とよく似た言葉を3つ紹介します。