「大義名分」の正しい読み方
行動の根拠を示すときに使用する、「大義名分」という四字熟語の正しい読み方をご存じでしょうか。「見たことはあるけど、読み方に自信がない」と思う人もいるかもしれません。
読めそうで読めないとお悩みの方に、ここでヒントです。「大義名分」の「大」には、「だい」以外にも読み方がありますよね……?
正解は……【たいぎめいぶん】でした。
「大義名分」の意味と由来
「大義名分」とは、行動の根拠や口実を示す言葉です。「本音に対する建前」という意味で使用する場合もあるため、あまり良い印象を与えないケースもあります。しかし本来は正当な理由に使用する言葉であるため、誤解のないようにしましょう。
また「大義名分」は、儒教の考え方が由来です。今でも職場の年功序列や上下関係といった考え方で根付いています。ここでは、「大義名分」の意味と由来をご紹介します。
「大義名分」とは行動の根拠を示す言葉
【大義名分(たいぎめいぶん)】
1.人として、また臣として守るべき道義と節度。「―にもとる」
2.行動のよりどころとなる道理。また、事を起こすにあたっての根拠。「―が立つ」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「大義名分」とは根拠や口実を示す四字熟語です。大義名分の「大義」には、重要な意義という意味があります。「名分」には「自分の身分や立場に応じて守るべき正しい道」との意味が込められています。
「大義名分」は建前というニュアンスを含めて使用する機会も多く、使い方によってはあまりいい印象を与えない場合もあるでしょう。例えばある事柄に対して言い訳をする際に、「大義名分」という言葉が出てくることもあります。
しかし「大義名分」の本質は、根拠や口実など正当な理由に使用される言葉であることに注意が必要です。
「大義名分」は儒教が由来
「大義名分」の由来は、儒教の考え方です。儒教とは、中国の思想家である孔子による教えのことで、日本をはじめとするアジア地域に大きな影響を与えました。
「大義名分」は本来、「人または巨民として守るべき節義や分限」という意味で使われていました。「下の者は上の者に尽くす」という考えが根付いたことにより、今でも上下関係や年功序列となって残っているのです。
「大義名分」の使い方と例文
「大義名分」は、行動を理由づける根拠という意味で使用するのが一般的です。例えば英語の漫画がほしいときに、「この漫画を買えば、英語を楽しみながら学べる」とはっきりとした購入の理由を提示することを「大義名分」といいます。
「大義名分」は本当の理由を隠して、もっともらしい理由を提示している印象を与えるため、ずるいイメージを持つ場合もあるでしょう。
【例文】
・海外で歴史や語学を学ぶという【大義名分】のもと、海外へ行きます。
・私の父は【大義名分】を掲げたものの、母には通じなかったようです。
・実家の母が体調を崩したことを【大義名分】にして、仕事を早退してきました。
・あなたの意見はすばらしいのですが、【大義名分】が必要だと思います。
また言い回しとして、以下のような表現方法があります。
・大義名分を得る
・大義名分が立つ
・大義名分を果たす
・大義名分に掲げる
「大義名分」の類義語4つ
「大義名分」の類義語は、以下の4つです。
1.口実
2.建前
3.錦の御旗
4.免罪符
「口実」とは言い訳をすることで、責任逃れをする様を表現する言葉です。「建前」は、表向きの方針や考えを示すときに使用します。「錦の御旗」とは、天皇軍の旗のことです。自身の主張を権威づけたいときに使われます。
「免罪符」とは、罪や罰を免れる際に使用する言葉です。ここでは、大義名分の類義語について解説します。
【類義語1】口実
【口実(こうじつ)】
1.言い逃れや言いがかりの材料。また、その言葉。「病気を―に欠席する」「―を与える」「―をさがす」
2.日ごろよく口にする言葉。言いぐさ。「朝暮の―として誦しける」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「口実」とは、言い訳をして責任逃れをする際に使用する言葉です。例えば特に用はないものの片思いの相手と会いたいがために、もっともらしい理由を提示すれば、会うための「口実」を作ったと表現できます。
そのため「大義名分」を簡単な言葉で表現したいときに、「口実」を用いることも可能です。ただし、「口実」はあまり良い印象を与えないことに注意しましょう。
【例文】
・とある友人も参加する食事に行きたくなかったので、欠席する【口実】を作った。
・私は叔父に会うのが嫌だったので、仕事を【口実】に帰省しなかった。
・日本酒にぴったりなおつまみを購入したのを【口実】に、今夜は晩酌を楽しむつもりです。
【類義語2】建前
【建前(たてまえ)】
1.原則として立てている方針。表向きの考え。「―と本音」「―を崩す」
2.行商人や大道商人が商品を売るときの口上。売り声。「さあさあこれからがこちの商売…、ああこりゃ―どころぢゃない」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「建前」とは、表向きの方針や考えを表現するときに使用する言葉です。例えば物事の裏側で良からぬ作戦を立てていた場合、本音を隠したいときもあるでしょう。そのときに裏の意図を隠して、体裁を繕うための言葉が「建前」です。
ほかにも商人が商品を売るために述べる宣伝も「建前」と表現されます。
【例文】
・「地域を活性化させる」というのが、この計画の【建前】です。
・みんなで食事に行きたいというのは【建前】で、本当は2人きりで食事に行きたくなかった。
・政治家の多くは、本音と【建前】をうまく使い分けながら活動している気がします。
【類義語3】錦の御旗
【錦の御旗(にしきのみはた)】
1.赤地の錦に、日月を金銀で刺繍(ししゅう)したり、描いたりした旗。鎌倉時代以後、朝敵を征討する際に官軍の旗印に用いた。錦旗(きんき)。
2. 自分の行為・主張などを権威づけるために掲げる名分。「環境保護を―に掲げる」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「錦の御旗」とは「にしきのみはた」と読み、天皇軍の旗のことです。「錦の御旗」は天皇が討伐するように命令したときのみ掲げられていたことから、自身の主張を権威づけたいときに使用する言葉に変化しました。ただし現代では、あまり使用する機会はないでしょう。
【例文】
・大河ドラマの中で、【錦の御旗】が掲げられると興奮する。
・【錦の御旗】を掲げた瞬間、勝負の勝敗が決まるような気がする。
・この戦いに勝利すれば、【錦の御旗】を掲げて行進しよう。
【類義語4】免罪符
【免罪符(めんざいふ)】
1.カトリック教会が善行(献金など)を代償として信徒に与えた一時的罪に対する罰の免除証書。中世末期、教会の財源増収のため乱発された。1517年、聖ピエトロ大聖堂建築のための贖宥(しょくゆう)に対しルターがこれを批判、宗教改革の発端となった。贖宥状。
2.罪や責めをまぬがれるためのもの。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「免罪符」とは、罪や責めを免れるときに使用する言葉です。もともと、カトリック協会が罪を免れるために発行していた証明書のことを指していました。そのため、あまり良い印象を与えない言葉といえるでしょう。
【例文】
・彼が発した一言が【免罪符】となりました。
・この書類だけでも用意していれば、【免罪符】になるだろう。
・たとえ【免罪符】によって周囲からの批判をまぬがれても、私は許せない。
「大義名分」を正しく使おう
「大義名分」とは「たいぎめいぶん」と読み、行動の根拠や口実を示したいときに使用する言葉です。建前を伝える際に使用するケースもあるため、あまり良い印象を与えないこともあるでしょう。
「大義名分」には、類義語がいくつかあります。それぞれ意味は似ているものの、詳細は異なるため、違いを理解して正しく使い分けすることが大切です。
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