「適材適所」の基礎知識
「適材適所」は日常会話でもよく使われていますが、ビジネスシーンでも用いられる言葉です。読み方は「てきざいてきしょ」で、「適材適所の配置をおこなう」などと表現します。
なお、「適所適材」という表現を見かけることがありますが、これは人事用語として使われている造語です。
はじめに、「適材適所」という表現の詳しい意味や由来・語源、使い方・例文などについて、詳しくチェックしていきましょう。
「適材適所」とは適性や能力にあう仕事につかせること
【適材適所(てきざい‐てきしょ)】
その人の適性や能力に応じて、それにふさわしい地位・仕事に就かせること。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「適材適所」とは、対象の相手の適性や能力にあった相応しい仕事につかせることを指す言葉です。人員が足りない部署に入れて適当に人数をあわせるのではなく、その人自身が持っている能力やスキルを見極めて、適任と考えられる資質に合わせた部署や役職につけることを指します。
「適才適所」という書き間違いをしないように注意が必要です。「適した人材を適した所に配置する」と覚えると間違えにくく、意味も理解しやすくなるでしょう。
「適材適所」の由来・語源
「適材適所」とは、「適材」と「適所」という二つの言葉からなる表現です。「適材」はもともと「材料」のことでしたが、その後「人材」を表すようになりました。また、「適所」は「適した場所にすること」を意味します。
「適材適所」の由来は、伝統的な建築現場における木材の使い分けからきました。木材は針葉樹や広葉樹などがあり、針葉樹のなかでも木の種類はさまざまです。
家屋を形成する木材をどう配置すると最適か考え、木の性質にあわせて作りあげることを「適材適所」と表現したものが、次第に人事についても用いるようになりました。
「適材適所」の使い方と例文
「適材適所」の使い方を例文でチェックしていきましょう。ビジネスシーンでも使われている言葉で、「適材適所に人を配置する」などと使います。「適材適所」は人材だけではなく物に対しても使われる言葉ですが、基本的には人に対して使うケースが多いようです。
「適材適所」の例文は以下のとおりです。
・【適材適所】の人員配置をおこなうことで、さらなる発展が見込まれるだろう。
・【適材適所】を実践していないせいで、誰も本来の力を発揮できていないようだ。
・彼はとてもコミュニケーション能力が高いので、営業課に配属されたのは【適材適所】といえる。
ビジネスにおける「適材適所」
ビジネスにおいては、「適材適所」に人員を配置できるかどうかは重要なポイントです。「適材適所」の配置ができた場合には一人ひとりの能力を最大限発揮できるようになるため、会社のさらなる発展が見込まれるでしょう。
しかし、「適材適所」の配置ができていないと、優秀な社員であっても本来持っている能力や経験を発揮できず、活躍するのが難しいといえます。
それでは、「適材適所」によるメリットとどのようにすればいいのか見極める方法をチェックしていきましょう。
「適材適所」のメリット
「適材適所」によるメリットはさまざまなものがあります。たとえば、「適材適所」であれば能力を発揮しやすくなるため、今まで以上の生産性が見込めます。人員を増やさなくとも一人ひとりが通常以上の成果を出せるようになることで、人件費の削減にもつながるでしょう。
また、やりがいのある仕事ができると社員の定着率を向上させることにもなります。
「適材適所」を見極める方法
「適材適所」を見極めるポイントは、個人の性格や気質・時間軸・コミュニティなどです。能力だけではなく、外向的か内向的かの個人の性格や気質の違いによってもぴったりのポジションは異なります。
また、いつの時点でのパフォーマンスを評価するかの時間軸によっても基準が変わるため、中長期的な視点でチェックしましょう。一人ひとりが、異なる組織の外に持っているネットワークや配置先の人との関係によっても、能力が発揮できるかどうかは変わります。
業務内容を洗い出して配置したい人材像を理解し、能力や性格をチェックするために適性検査などをおこない、本人の希望を確認しながら配置先を決定しましょう。
「適材適所」の類語と対義語
「適材適所」と言い換えができる類語と、反対の意味を持つ対義語は以下のとおりです。
【適材適所の類語】
量才録用・餅は餅屋・水を得た魚・相応しい
【適材適所の対義語】
大材小用・ちぐはぐ・大器小用
類語や対義語もまとめて理解することで、表現のために使える言葉が増えます。「適材適所」と一緒に類語や対義語についてもチェックしていきましょう。
「適材適所」の類語
「適材適所」と言い換えができる類語とその意味は以下のとおりです。
【量才録用(りょうさいろくよう)】
才能を見極め、十分に能力を発揮できる仕事に起用すること。
【餅は餅屋(もちはもちや)】
その道のことはやはり専門家が一番であるというたとえ。
【水を得た魚(みずをえたうお)のよう】
その人にあった場で生き生きと活躍するようすのたとえ。
【相応しい】
似つかわしい。つり合っている。
「適材適所」の対義語
「適材適所」と反対の意味を持つ対義語とその意味は以下のとおりです。
【大材小用】
才能がある人にくだらない仕事をさせること。
【ちぐはぐ】
二つ以上の物事がうまく噛み合っていないこと。
【大器小用】
素晴らしい才能を持っているが、低い地位にしかつけないこと。
【アンバランス】
つりあいの取れないこと。また、そのさま。不均衡。
まとめ
「適材適所」とは相手の適性や能力を見極めて、適任と考えられる相応しい仕事につかせることを指す言葉です。もともと木の性質にあわせて作りあげることを「適材適所」と表現していましたが、今では人員配置に対しても用いるようになりました。
ビジネスにおいては、「適材適所」に人員を配置できるかどうかは重要なポイントです。「適材適所」を見極める方法を参考に、職場の人員配置を考えてみるといいでしょう。
また、言葉自体が持っている意味や語源、使い方、類語などをしっかりとチェックして、言葉を正しく使える表現を増やしましょう。
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