というのも、筋肉は生命維持に必要な熱を生み出す熱発生装置でもあるからです。筋肉1㎏あたり1日で10~30kcalもの熱量を生み出していて、全身の筋肉が消費するエネルギー量は基礎代謝量の20%程度を占めています。
筋肉量が減ると基礎代謝量が減少し、エネルギー収支は黒字に転換します。当然、食事量が増えていないにもかかわらずエネルギーが余剰して、体脂肪としてため込まれ続けることになります。
ですから、これを根本的に解決するには、下半身の筋肉を中心とした筋トレで、基礎代謝量を上げるしかないのです。
食事ダイエットは体の衰えを促進する?
この事実に目をつぶって単純に食事量を減らすダイエットをしてしまえば、体の衰えはますます加速します。食事量を減らしてエネルギー収支を赤字にすると、不足分を補填するエネルギーとして体脂肪だけでなく、筋肉も分解され、エネルギーに転換されてしまうからです。
下半身の筋肉を鍛えて基礎代謝量を引き上げれば、肥満の先にあるメタボリックシンドロームや、さらにその先にある動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病の予防にもつながります。
加えて、熱発生装置の筋肉が増えて体温が上がることで、免疫力も向上します。例えば、気道の腺毛運動や免疫細胞の活動といった免疫機能は、体温が上がると働きやすくなるからです。
このように下半身の筋肉を鍛えることは大変有用ですが、上半身や体幹の筋トレが不要といっているわけではありません。下半身ほどペースは速くありませんが、加齢や運動不足によってこれらの筋肉も衰えていくのは間違いありません。
下半身の筋肉を鍛えると、”インスリン様成長因子1(IGF-1)”という筋肉の発達を促すホルモンの分泌が顕著に促進されます。ホルモンは血液に乗って全身の筋肉に運ばれるので、下半身の筋肉を鍛えると、上半身や体幹の筋トレの効果も上がるのです。