朝ごはんのひとつひとつにある特別なストーリー
私には台湾朝ごはんの中でも特別な思い入れがあるものがいくつかあります。
台湾朝ごはん屋に憧れるきっかけとなったもの、はじめて見たときに衝撃を受けたもの、新人時代の緊張感を思い出すもの、私の考えかたに影響を与えたものまで思い入れの理由はさまざま。
今回はその中から5つのおすすめ台湾朝ごはんを私のストーリーと共にご紹介します。
1. さつま芋のお粥 (=地瓜粥 Dìguā zhōu)
私が朝ごはん屋をはじめるきっかけとなったのはニュージーランドのとある中華料理屋で食べた「皮蛋瘦肉粥 (Pídàn shòu ròu zhōu)」というピータンとミンチが入ったとろとろのお粥でしたが、その後さらに朝ごはん屋への憧れを強くしたのは台湾で食べた「地瓜粥 (Dìguā zhōu)」というお粥。台湾ではこの大きなさつま芋が入ったほんのり甘いお粥に豆腐を発酵させた旨味の塊「豆腐乳 (Dòufu rǔ)」を入れて食べるのが定番。甘味と旨塩味の絶妙な融合にはじめて口にしたときは「お? これは…」と不思議な気持ちになりましたが、徐々に口の中で広がるなんともクセになる新しい食の経験に、気がつけばすっかりハマっていました。機会があればぜひ一度試してみて欲しい一品です。
▲ とある日の私の試作。この日の「地瓜粥」には紅はるかと龍眼を入れてアレンジ。右の小皿は2種の腐乳。
2. 台湾おにぎり (=飯糰 Fàntuán)
台湾の航空会社に勤めていたとき、とある台湾人の先輩CAが私の分も朝ごはんを買ってきてくれたことがきっかけで出合った台湾おにぎり。「丸太型だし大きいしなんかすごい重いし!」 それが私のおにぎりに対する第一印象でした。具材は肉でんぶのみのシンプルなものもあれば、薄焼き卵やチーズや高菜や揚げパンまで入っているものあり、もはや概念としては外国の太巻き。コンビニおにぎりの2.5倍くらいのサイズでしかもお米は餅米100%。こんなにインパクトがあって腹もちがいい朝ごはん、後にも先にも台湾おにぎりだけかもしれません。
3. 生卵入りの甘い豆乳 (=甜豆漿加蛋 Tián dòujiāng jiā dàn)
私が決まって注文する豆乳、それが生卵をぽとんとひとつ落とした甘くあたたかい豆乳。口が広いおわんに入ったれんげを使って食べるものや透明のテイクアウトカップに入った太めのストローで飲むものなど形状はお店によって異なります。はじめて口にしたときは「これはデザート? それともごはん?」と少し混乱したのですが、最終的には「朝ごはん!」というポジションに落ち着きました。ほっこりしたい朝や十何時間の長距離フライト明けによく買いに行っていました。
4. 冷麺 (=涼拌麵 Liángbàn miàn)
新人CAだったころ、会社の食堂で出店していた朝ごはん屋ではじめた買ったのが冷麺でした。台湾の乾麺はシンプルなものが多く、このときの冷麺も千切りきゅうりのトッピングと胡麻ダレのみ。黄色い中太麺の表面は脂分でコーティングされていてボソッとした硬めの食感がなんともユニーク。「朝から冷麺買っちゃった」と思ったのですがこれが意外とクセになり、結局はその朝ごはん屋さんの営業が終了するまで頻繁に買いに行っていました。私にとって冷麺は初心に戻れる朝ごはんとなっています。
5. 野菜まん (=菜包 Cài bāo)
「朝だけ菜食生活」を送る人も多い台湾では、どの店の朝ごはん屋にも必ずといっていいほど肉なしメニューというものが存在します。印象的だったのが、とある日の朝台湾人の先輩CAに「今日あなたの分も朝ごはんあるわよ、肉まんと野菜まんどちらがいい?」と聞かれたこと。「肉と野菜どっちがいい?」という単純な問いでしたが、このことが菜食というチョイスがあるということを意識し始めるきっかけにもなりました。朝ごはんを提供する立場となった今、私のメニューにはノンヴィーガンとヴィーガンのチョイスがあります。
台湾に気軽に行くことができない今、私は思い出の中にある朝ごはんを再現しようと今日もキッチンに立っています。そして毎週水曜日の朝限定で、東京都目黒区にあるコーヒーとクラフトビールの店 – WR. にて朝ごはんを提供しています。
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ライター・家庭薬膳アドバイザー・中医薬膳師
有田 千幸
外資系航空会社のCA、建築設計事務所の秘書・広報を経てライターに。ニュージーランド・台湾在住経験がある日・英・中の トリリンガル。環境を意識したシンプルな暮らしを心がけている。プライベートでは一児の母。ワインエキスパート。@chiyuki_arita_official