「琴線に触れる」の正しい読み方
「琴線に触れる」の「琴線」ですが、意外にも読み方を間違えられやすい漢字です。あまり馴染みのない言葉なので、読み方を知らない方もいるかもしれません。
どのような読み方をするのか悩んでいる方向けに、少しヒントをご紹介します。琴線の「琴」は単体で読むと「こと」ですが、この漢字の並びになると別の読み方をします。
正解は……「きんせん」でした!
「琴線に触れる」は「感動したときに使う言葉」
「琴線に触れる(きんせんにふれる)」は「感動したときに使う言葉」です。辞書では、以下のように解説されています。
【琴線に触れる】
良いものや、素晴らしいものに触れて感銘を受けること。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「琴線に触れる」は、ただ感動したときに使う言葉ではありません。辞書に載っているように、良いものや素晴らしいものに触れることが必要です。また、感動も小さいものではなく、大きく感動したときに使います。
人間生きていれば、心が震え、言葉にできないくらいの感動が押し寄せる場面もあります。そんなときに使うのがベストです。
怒りを表すときに使う言葉ではない
「琴線に触れる」は、怒りを表すときに使うと誤解している人もいるそうです。文化庁が「琴線に触れる」の意味を問う調査でも、以下のような結果が出ています。
(ア) 怒りを買ってしまうこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35.6%
(イ) 感動や共鳴を与えること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37.8%
(ア)と(イ)の両方の意味で使う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.4%
(ア),(イ)のどちらの意味でも使わない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.6%
分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24.6%
(引用 「琴線に触れる」の意味|文化庁)
全体の1/3の人は間違った意味で使っているのです。誤用している原因は「逆鱗に触れる」という言葉と混同していることが考えられます。逆鱗は竜のうろこを指しており、鱗に触れるということは、竜の怒りを買うことに繋がるのです。
この言葉と混同して誤用している人が多いのでしょう。
由来は故事と比喩表現2パターン
「琴線に触れる」の由来は、故事と比喩表現の2パターンがあります。
1つ目は、中国の周の時代に作られた故事の話です。琴の名手である伯牙(はくが)が弾く琴の音色を、親友である鍾子期(しょうしき)が聞いただけで、歌の趣旨や意味を理解し心の底から感銘した話から「琴線に触れる」という言葉ができました。
2つ目は、弾いている琴の見た目を比喩表現した由来です。触れると震える琴線を、心が感動して触れるさまに例えたことにより、「琴線に触れる」という言葉が生まれたと言われています。「琴線に触れる」の由来には、諸説あることを覚えておきましょう。
「琴線に触れる」の使い方と例文
「琴線に触れる」は、感動したり共鳴した際に使うことができます。しかし、ただの感動で使う場合は、大げさだと思われてしまうことも。心が震えたときに使うのがベストです。
使う対象は、限られていません。
・誰かの言動
・映画
・本
・音楽
・舞台
どんなものでも使えます。心が震えたことを表現したいときには、使ってみましょう。以下の例文を参考にしてみてください。
〈例文〉
・彼女は音楽を聞いて「【琴線に触れる】体験をした」と言っていた。
・彼の言葉が、私の心の【琴線に触れた】。
・美術館にあった絵が、【琴線に触れて】その絵の前から動けなくなった。
「琴線に触れる」の類語
「琴線に触れる」の類義語は、以下の言葉です。
・感銘を受ける:忘れられないくらい感動すること
・感動する:心を深く動かされること
・胸を打つ:深く感動されられること
・ときめく:喜びや期待でわくわくすること
心を強く揺さぶられるという意味が込められた言葉が多いです。感動の度合いによって、使い分けるといいかもしれません。またこれらは、感動するものを人に紹介するときや感想を述べるときに使えます。
「琴線に触れる」の対義語2つ
「琴線に触れる」の対義語は、以下の2つです。
1.興味・関心が乏しい「無関心」
2.気分を害する「気に障る」
感動するの反対は、関心がないことや怒りの感情と言われています。それぞれどのような意味があるのか、どのように使えばいいのか、ご紹介します。対義語を知りたい方は、以下を参考にして使いこなしてみてください。
【対義語1】興味・関心が乏しい「無関心」
興味・関心が乏しいという意味で「無関心」があります。読み方は「むかんしん」です。辞書では、以下のように解説されています。
【無関心】
関心がないこと。興味を持たないこと。また、そのさま。
無関心とは、つまり心が動いていない状態のことです。そのため、琴線に触れるの対義語とされています。以下の例文を参考に、使ってみてください。
〈例文〉
・彼は趣味の話をしているが、みんな【無関心】のようだ。
・【無関心】な人の特徴に、感情の起伏が無いことが挙げられる。
・彼女が仕事に【無関心】な様子を、なんとかしたいと思う。
【対義語2】気分を害する「気に障る」
気分を害する意味がある「気に障る」も、「琴線に触れる」の対義語とされています。読み方は「きにさわる」です。辞書では以下のように解説されています。
【気に障る】
いやな気持ちを起こさせる。感情を害する。
(引用すべて〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「琴線に触れる」は、感動させる言葉です。それに対して、「気に障る」は気分を害してしまう意味があります。そのため、対義語と判断されるのです。
また、「気に障る」と「琴線に触れる」は、誤用しやすい言葉のため、注意しましょう。類義語ではなく、対義語なので間違えないようにしてください。以下の例文を参考にして使ってみましょう。
〈例文〉
・彼女のことを思って言った言葉が、【気に障った】らしく話をしてくれない。
・彼は私に【気に障る】ことばかり言ってくる。
・【気に障る】かもしれないけど、はっきり言うね。
まとめ
「琴線に触れる」とは、感動するときに使う言葉です。ただの感動ではなく、心を深く震えさせるくらいの感動なので、使い方には注意しましょう。怒りの感情を表す言葉だと勘違いして使っている人もいます。
「逆鱗に触れる」と混同することがないよう、注意してください。使う対象は、ものでも誰かの言動でも問題ありません。自分の感動した思いを相手に伝えたいときには、積極的に使っていきましょう。
もしも感動したときの表現方法を知りたい場合は、類義語を参考にしてみてください。また対義語は、2パターンあるので使うときには注意しましょう。誤用に気をつけて、正しく使えるようにマスターしてください。
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