「虫酸が走る」の意味は「ひどく不快なこと」
「虫酸が走る」とは「ひどく不快なこと」を意味する言葉です。虫酸とはたくさん出た胃酸が逆流してきたものを指します。
吐き気を催すほどむかむかするという意味が込められており、状況や相手に対して嫌悪感を表現することわざです。また、実際に症状として胃酸が逆流してきた場合にも用いられます。
ただし、一般的には強い嫌悪感を抱いたときに使うケースが多いでしょう。
漢字表記は「虫酸」「虫唾」の2種類
「虫酸」は「虫唾」という漢字を使用する場合もあります。いずれも意味やニュアンスに違いはないため、どちらの漢字を使っても問題ありません。一般的には「虫酸」と表記するケースが多いです。
ただし、仮名遣いが異なる点には注意しましょう。虫酸は「むしづ」、虫唾は「むしず」となります。文章を打ち込んで変換する際は、この仮名遣いの違いを理解しておくと便利です。
「虫酸が走る」における語源
「虫酸が走る」は、胃酸が逆流して口内に出てくることが語源となっています。前述の通り、虫酸が走るの意味は、吐き気でむかむかするほど嫌悪感を抱いている状況です。
逆流してきた胃酸である「虫酸」と、口に出てくることを意味する「走る」が合わさったことわざといえます。ただし、漢字表記が「虫唾」になると語源が若干変わる点には注意が必要です。「虫唾」は漢字の通り、胃に寄生した虫のつばだと考えられます。
どちらが語源として合っているのかは定かではありませんが、いずれにしても言葉の意味は同様であると認識しておきましょう。
「虫酸が走る」を使った例文
「虫酸が走る」は、人やモノを対象に吐き気がするほどの嫌悪感を抱いた場面での使用が適切です。一般的にあまり気持ちよく受け取れる言葉ではないため、相手の誤解を招かないように注意しなければなりません。
具体例を理解して、正しい使い方やシーンを理解しておきましょう。「虫酸が走る」の例文は、以下の通りです。
【例文】
・食事中に音を立てて食べる人が近くにいると【虫酸が走ります】
・名前を聞くだけでも【虫酸が走る】ので、その人の話をしないでください
・【虫酸が走る】ような夢を見て、夜中の1時に飛び起きてしまった
・事件現場の横を通るとき、思わず【虫酸が走った】
・人にゴマすりばかりしている上司を見ていると【虫酸が走る】
「虫酸が走る」における2つの類義語
「虫酸が走る」の類義語に、次の2つが挙げられます。
・胸糞が悪い
・反吐が出る
いずれも不快感を露わにする言葉です。しかし、ニュアンスが若干違っていたり、強調する意味が違ったりしています。
そのため、意味を理解して実際に使う場面を想定する必要があるでしょう。ここからは、「虫酸が走る」の類義語を例文とともに詳しく紹介します。
【類語1】胸糞が悪い(むなくそがわるい)
「胸糞が悪い」は「胸がむかむかするほど不快」という意味が込められた言葉です。むかむかする状況で使用される点は、「虫酸が走る」と同様です。
しかし、気持ち悪さを表現した「虫酸が走る」に比べて、「胸糞が悪い」は「イライラする」や「腹立たしい」といったニュアンスが強いといえます。「虫酸が走る」は実際に胃酸が逆流してきたときにも使用されますが、「胸糞が悪い」は胸がむかむかするといった症状での使用はできません。
また、「胸糞が悪い」は「糞」という表現が入るため、品のない印象を与えかねません。そのため、目上の人に対しての使用は避けるべき言葉といえます。具体的な例文は、以下の通りです。
【例文】
・あいつの態度はいつ見ても【胸糞が悪い】
・【胸糞悪くなる】ようなニュースばかり流れている
・仕事で忖度しているあいつが出世していって【胸糞悪い】
【類語2】反吐が出る(へどがでる)
「反吐が出る」は「吐きそうになるほど不愉快な状態」を表現します。「反吐」は一度飲み込んだものを吐いてしまうという意味で、強い不快感を感じたときに使う言葉です。
また、「虫酸が走る」に比べて不愉快さを前面に出して伝えるときに使われることが多いといえます。具体的な例文は以下の通りです。
【例文】
・あなたの歪んだ考え方には【反吐が出る】
・今回の発表会は、【反吐が出る】ほど嫌だった
・そのときは言えなかったが、あの上司の決断には【反吐がでそう】になった
「虫酸が走る」における2つの対義語
「虫酸が走る」における対義語として、次の2つが挙げられます。
・崇める
・恋い慕う
いずれも相手に対して尊敬したり、慕ったりすることを表現しており、日常生活でも耳にする機会の言葉といえます。どちらも近い意味を持つ言葉であり、使い分けの方法を例文で確認して活用してください。ここからは、対義語ごとの意味や例文を紹介します。
【対義語1】崇める(あがめる)
「崇める」は「尊敬する」や「崇拝する」といった意味を持ちます。よく耳にする「神を崇める」というように、このうえなく尊敬しているときに使われます。神様に対してだけでなく、自分の尊敬する人を対象にしても表現できるため、日常でも活用可能です。
ただし、対象が非常に大きなものという印象があるので、相手によっては「尊敬する」で表現したほうが無難です。
「虫酸が走る」は、不快感を抱いてその人やものを遠ざけたいという意味が込められています。一方、「崇める」は尊敬して慕う気持ちを表現するため、「虫酸が走る」の対義語となります。「崇める」を使った例文は以下の通りです。
【例文】
・美しく強い人を【崇めて】いる
・大好きなアイドルを神のように【崇める】サークルに入っている
・私の【崇めて】いる監督は、選手時代に華やかな成績を残した人だ
【対義語2】恋い慕う(こいしたう)
「恋い慕う」とは「すがるように寄り添う」という意味を持ち、読み方は「こいしたう」です。恋心があふれて、寄りすがりたいほど相手を慕うときに使います。
実際に恋をしている人に限らず、寄り添いたくなるほど魅力的な人に対して使うと理解しておきましょう。先程の「崇める」と同様に、慕って寄り添っていたいと表現するため、「虫酸が走る」の対義語にあたります。
また、「崇める」は尊敬するよりも強い表現になり、「恋い慕う」は憧れや寄り添いたい気持ちを表現するためニュアンスが異なります。「恋い慕う」を使った例文は、以下の通りです。
【例文】
・憧れの彼を一方的に【恋い慕って】いたが、告白はできなかった
・母を【恋い慕い】、思い出のアルバムを作って送った
・【恋い慕う】先輩から食事の誘いがあり気分が高揚している
まとめ
「虫酸が走る」は、吐き気を催すほどの強い不快感を露わにする言葉です。実際に胃酸が逆流したときだけでなく、自分にとって嫌な出来事や不快な相手にも使われます。
また、むかむかする感情を伝えたいときに使用します。「虫酸が走る」に限らず、類義語の「胸糞が悪い」や「反吐が出る」は良い印象を与える表現ではありません。
そのため、相手に伝えるときには誤解を招かないように注意する必要があります。また、自分の伝えたい表現にふさわしいかを確認して、正しく使用しましょう。
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