「将又」は〝はたまた〟と読む!選択肢を並べるときに用いる接続詞
「将又(はたまた)」とは、いくつかの選択肢を並べるときに使う接続詞です。「あるいは」や「それともまた」の意味で用いることができます。
なお、「将(はた)」だけでも「あるいは」や「それともまた」の意味がある言葉です。あまり現代では使われませんが、源氏物語や伊勢物語、今昔物語集の中では「はた」という言葉は、「あるいは」や「それともまた」、「そうは言っても」、「言うまでもなく」などの意味でしばしば用いられています。
【将又】はたまた
副「はた(将)」を強めていう語。それともまた。あるいはまた。「夢か―幻か」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「将又」の語源
「将(はた)」一文字だけでも、選択肢を並べるときに用いる「あるいは」や「それともまた」の意味の言葉です。また、「又(また)」も同じく、「あるいは」や「それともまた」の意味で使われます。
「将又」は同じ意味の言葉を重ねることで、意味を強調した言葉だと考えられるでしょう。「AかBか」とシンプルに問うのではなく「Aを選ぶのか、それともBを選ぶのか」というように、選択するという行為を強い意味合いを込めて促すときに用いることができます。
「将又」を例文を使ってご紹介
「将又」の使い方を例文を通して見ていきましょう。
【例文】
・彼女はもう一人で生活することに疲れたようだ。このまま学校に残るのか、【将又】退学して実家に戻るのか、毎日繰り返し自問自答をしていた。
・彼を選ぶのか、【将又】、誰も選ばないのか。彼女が決めたことを知りたくて、周囲は好奇の目を向けている。
・今のままで良いのか、【将又】、あの会社に転職をするのか考えているが、なかなか結論が出ない。
「将又」の類語と対義語を例文でご紹介
2つ以上の選択肢を比較するときに用いる「将又」には、似た意味の言葉が多数あります。例えば、次の3つはいずれも将又と同じように使うことが可能な言葉です。
・翻って(ひるがえって)
・これとは反対に
・その一方で
また、「将又」の対義語としては、次の2つが挙げられます。
・いずれにせよ
・どちらにしても
それぞれの言葉の使い方やニュアンスについて、例文を通して見ていきましょう。
【類語1】翻って(ひるがえって)
「翻って」とは、「別の立場で見れば」「反対に見れば」という意味の言葉で、「将又」と同じようにいくつかの選択肢を提示するときに使うことができます。
ただし、「将又」は物の名前などの名詞を選択肢として提示するときに使うことが多いです。「翻って」はどちらかといえば、文章全体を選択肢として提示することに使うことが多いです。いくつか例文を紹介するので、ニュアンスや使い方の違いについて考えてみましょう。
【例文】
・私は日本という国のあり方について考えてみた。問題点は多いが住みやすいと常々感じている。【翻って】A国はどうだろうか。実際に10年間住んでみたが、住みやすいとは思えなかった。
・この会社にいると居心地が良いことを当たり前だと感じるが、実際にこんなに過ごしやすい会社はない。【翻って】転職前の会社は、毎日誰かが怒鳴っていて、生きた心地がしなかった。
・【翻って】周囲を見回してみた。誰も追いかけてこないことからも、私の悪事は誰にも気付かれていないようだ。
なお、「翻って」という言葉は何かを選択するとき以外にも、「振り返る」というニュアンスで用いることがあります。過去や背面などを見返すときにも、「翻って」を使ってみましょう。
【類語2】これとは反対に
まったく異なるものを選択肢として提示するときに、「これとは反対に」と表現することができます。「翻って」や「将又」と比べるとくだけた表現なので、日常会話にも使うことができるでしょう。いくつか例文を紹介するので、ニュアンスを感じ取って下さい。
【例文】
・私は赤い大きなボールを集めて袋に入れた。【これとは反対に】、彼女は小さな緑のボールだけを集めていた。
・彼女は社員が少しでも楽しく働けるように、さまざまな提案をしてきた。【これとは反対に】、彼が部長になってからというもの、仕事の効率性を上げるための提案しかしていない。彼には社員が利益を上げるための駒としか見えていないのだろう。
・昨日行ったカフェのケーキは非常に美しく、パティシエの技を感じたが、【これとは反対に】今日のカフェのケーキはクリームの絞り方が雑で、プロが作ったものとは思えない。
【類語3】その一方で
ある事柄が進行しているときに生じた異なる動きを紹介するときに、「その一方で」と表現することができます。「将又」と同じようにいくつかの選択肢を提示するときにも使うことができますが、単に2つの事象を並べるときにも用いることができる言葉です。いくつかの例文から使い方を見ていきましょう。
【例文】
・私は学業に専念し、大学合格を目指した。【その一方で】、万が一に備えて働く準備もしている。
・彼女は大きな声で叫んでいた。【その一方で】、彼女の姉は何か本のようなものを読んでいる。
・彼はある人にとってはとても有能で優秀な人物といえるだろう。【その一方で】、その優秀さを間違った方向に活かしているのも事実だ。
【対義語1】いずれにせよ
「将又」は選択肢を提示するときに用いる言葉ですが、「いずれにせよ」はどちらかを選択するのではなく、「どちらでも構わない」「どちらを選んでも同じだ」という意味の言葉です。そのため、意味が反対の対義語だと考えられるでしょう。いくつか例文を紹介します。
【例文】
・書類を持ってきていただいてもこちらから取りに行ってもいいですが、【いずれにせよ】来週にはそちらに行く用事があるので、その時でいいのであれば受け取りに参ります。
・どちらの大学に行くか決めたの?【いずれにせよ】来週までには入学金を納めるのだから、早く決断するほうが良いよ。
【対義語2】どちらにしても
「いずれにせよ」とほぼ同じ意味の言葉として「どちらにせよ」があります。使い方を見ていきましょう。
【例文】
・この服もあの服もよく似合うね。【どちらにしても】かわいいよ。
・彼は今日のコンパに来るの?来ないの?【どちらにしても】、場所が変わったことを伝えておいて。
まとめ
「将又」は漢字の読み方は難しいですが、意味は簡単です。2つ以上の選択肢を並べる際に使われる言葉です。正確に意味を理解して、普段の会話などに使っていきましょう。
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