あなたは入浴時間が長い方ですか? それとも短い方ですか? 「お風呂に入っても、あっという間に上がってしまう…」という人は、もしかしたら「カラスの行水」に当てはまるかもしれません。一体「カラスの行水」はどんな意味を持つことわざなのか、由来や使い方を含めて解説します。
「カラスの行水」の意味とは?
まずは、「カラスの行水」ということわざの成り立ちや、なぜ“カラス”が使われるのかについて確認していきましょう。
入浴の時間が短いことを表す言葉
「カラスの行水」は、漢字で「烏の行水」と書くこともあります。言葉の意味を辞書で確認してみましょう。
入浴時間が短いことのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「カラスの行水」とは、「入浴にかかる時間が非常に短いこと」を表すことわざです。「行水(ぎょうずい)」とは「水浴び」のことを指しており、おけにお湯や水をためて体を洗うことを意味する言葉です。もともとは仏教の用語で、まだシャワーなどが存在しなかった時代の入浴方法を表しているといえるでしょう。
日本では毎日のように風呂に入るのが一般的な習慣ですが、湯船にそれほど長く漬からない人に対して「カラスの行水」は使われます。入浴時間が極端に短いと、しっかり体を洗っているのか? と疑念を抱かれることも。そのため、汗を流す程度で風呂から上がる人は「カラスの行水だ」と言われるのです。
カラスが水浴びをする姿が由来
ゴミ捨て場などに集まるカラスに対して、不潔なイメージを持っている人も多いかもしれませんが、実はきれい好きな動物です。カラスには、体や羽をきれいにするため水浴びをする習性があり、水を浴びる時間が非常に短いことからこの言葉が生まれたとされています。カラスに限らず、鳥の水浴びは全体的に時間が短いといわれています。
カラスは漢字で「烏」と書き、この字は「鳥」と非常によく似ているため「鳥の行水」と間違えないよう注意してくださいね。なお、同じ鳥の名前が入った「スズメの行水」は、誤用とされる表現の一つです。
「カラスの行水」の類義語
「カラスの行水」と同じような意味を持つ言葉に、「ひろ風呂」があります。意味と例文を見ていきましょう。
「ひと風呂」「ひとっ風呂」
「ひと風呂」「ひとっ風呂」は、「カラスの行水」と同様に「入浴時間が短い様子」をイメージする言葉です。一度湯船に浸かって、すぐに出てしまうような入浴の仕方が想像できます。熱い湯にさっと入って上がる、せっかちな江戸っ子らしい方法です。
しかし、単に「入浴する」という意味でも使えますので、必ず入浴時間が短い様子を表すわけではないことに注意しましょう。前後の文脈で理解することが大切です。
例文
・今日は暑いから、ひとっ風呂浴びるか
「カラスの行水」の対義語
「カラスの行水」の対義語には、「腰抜け風呂」「垢も身の内」があります。どのような意味か一緒にチェックしていきましょう。
「腰抜け風呂」
「腰抜け風呂」は、「カラスの行水」とは反対に「長湯をする人」に対して使われる言葉です。風呂で腰が抜けてしまったのではないかと思われるほど、入浴時間が長いことを表しています。
基本的には、あまりに長い入浴時間をからかう表現といえるでしょう。「腰抜け」というフレーズが含まれていることから分かるように、相手を小馬鹿にするようなニュアンスを含む言葉でもあります。言われた相手が不快に感じる可能性もあるため、使うときには慎重に。
例文
うちの父親は腰抜け風呂だから心配している
自分と違って、姉はかなりの腰抜け風呂だ
「垢も身の内」
「垢も身の内」は、長風呂の人に対して使われる表現の一つで、「カラスの行水」の対義語にあたります。「垢」はもともと体の一部であるため、そこまで気にして洗い流す必要はないと諭す言葉です。
食べすぎを注意する「腹も身の内」という表現をもじったのが、由来ともいわれています。長く風呂に入る人が念入りに体を洗う様子をからかう表現なので、こちらも使い方には配慮しましょう。相手を心配すると同時に、ジョークのような意味合いもあるのが特徴です。
例文
・きれい好きなのはいいけど、垢も身の内だよ
・垢も身の内というし、湯あたりに気を付けて
「カラスの行水」の使い方と例文をチェック
「カラスの行水」は、悪口だと思われる可能性もあるため、気軽に使うのは控えたいところ。使う場面やすぐに使える例文を紹介します。
悪口と捉えられる可能性もあるので注意
「カラスの行水」は、風呂に入る時間の短さを表す言葉ですが、さほど親しくない人の入浴時間を知る機会は少ないでしょう。そのため、同居している家族や、一緒に旅行に行くような友人に対して使われることが多いともいえます。
たとえ親しい相手であっても、「カラスの行水」という言葉を使うことで、不快な印象を与える可能性があることには留意しておきたいですね。人によっては、「不潔だ」と言われたように感じる人もいるかもしれませんから…。
近年では、湯船に漬からずシャワーを浴びるだけで入浴を済ませている人も多く存在します。入浴時間についてからかうような表現だと捉える人もいるため、使う場面には注意が必要です。