五感をフル活用!アート教室で伸びる力とは!?
学習塾や英語教室のような、勉強系の習い事が人気を高める一方、良し悪しを点数で判断することのない、アートのような習い事にも注目が集まっています。そこで、自由な創作を楽しむことによって、集中力や何かを学ぶ意欲を身につけることができるとも言われているアートについて、「子どものアトリエ・アートランド」代表の末永蒼生さんにお話をうかがいました。
絵や創作に夢中になることで、五感や感情、認知能力が伸びていく
アートによって、子供のどのような能力を伸ばすことができるのでしょうか?
「子供の心と脳の成長期には、五感、感情、認知能力が交差しながら総合的に伸びてゆきます。アートランド教室での実践研究からも、絵を描く作業は視覚や感触などを始め五感をフル活用しながら造形することで、感情や感覚の伴った認知能力を養います。また、表現するために観察力が鍛えられ、言語野だけではない前頭葉全体を活性化しながら総合的な認識力が自然に高まる様子が観察されています」(末永さん 以下同)
アートは感情のバランスを整え、安定したメンタリティを保つのにも役立つ
▲好きなものを自分で選べるよう豊富な画材が用意されている
「近年、教育を始めネットなどによる情報偏重の環境で左脳中心の刺激にさらされ、子供たちの感情発達、思考力、コミュニケーション能力の発達が心配されています。そのバランスを取り直すのがアート体験です。とくに色選びや粘土遊びなどは、直接感情や身体感覚を活性化してくれ、子供たちは生き生きとして夢中になり取り組みます。
かつては自然の中の遊びで得られていたことが失われつつある時代、それに代わる知情のバランスを保った成長に役立つのがアート体験です。ただし、その効果は大人目線でやらせるアートではなく、あくまで子供が自由に自発的に表現する体験でこそ得られるものです。さらに自由表現の体験は、心を安らかにするアートセラピーの効果により健やかな成長をうながすことが分かっています」
養育者のメンタルが子供の心の発達に大きく影響する
アートランドでは、子供だけでなく、養育者のケアまでされているそうですが、それはなぜですか?
「子供は親を始め関わる大人たちの影響下で心が育ちます。養育者の一挙一動が幼い脳にインプットされます。それだけに養育者が最適の関わりをするためには、子供の心理状態を敏感に感じ取る必要があります。アートランドでは、養育者が安心し、また安定した状態で子育てができるように希望者にはカウンセリングを行ったり、養育者自身の心のケアに役立つぬり絵タイムなどアートセラピーを提供しています」
▲養育者の方が塗られたのぬり絵。個性豊かな色遣いが素敵な作品たち
作品からわかる子供の成長や変化を養育者と共有
▲子供たちの作品
アート作品を通した子育て相談というものもあるそうですが、作品を通してどのようなことがわかるのでしょうか?
「代表・末永蒼生が長年にわたり色彩心理の研究を通して絵から子供の心理的な変化を読み解くメソッドを提供してきました。子供の色づかいひとつからでもその時々の心の変化や成長をキャッチし、それを養育者と共有しながら共により良い子育てについて考えていきます」
乳幼児のころからアート体験をすることでさまざまな発達が促される
お絵描きなどは小さいころからできそうですが、具体的には何歳くらいから始めるとよいですか?
「アート表現としては3才から10代まで体験できますが、1〜3才くらいの乳幼児から色遊びや粘土の手遊びなどを始めると身体的発達や情緒のバランスに役立ちます。
少なくとも3才前後から始めておくと、集団生活の中での表現力や自分の心を大切にする基本になります。同時に他の人を尊重するという気持ちが育っていき、より良い人間関係を結ぶ能力につながるでしょう」
自宅でも!子供専用のアトリエが自立心を育てる
▲子供の作品
家でお絵描きや工作などをする際、親が気をつけるべきことはありますか?
「子供たちがお絵描き(たとえ落書きでも)が好きなのは、絵など創作体験が人間の心と能力が調和的に育つ基本だからです。ですから遊びや学習、お手伝いの体験同様、好きなだけやらせることは子育ての場で大事です。
そして、それは決して難しいことはありません。一畳くらいの空間にシートを敷き、そこを子供専用のアトリエスペースにして、好きな画材や紙を揃えて気が向いたらいつでも楽しめるようにしてください。そのスペースなら何を描こうがどんなに汚れようが散らかそうが自由。大人が口出ししなければ、子供は自発的にその小さなマイアトリエを使いやすいように工夫していくはずです。それも楽しみながら自立心が養われることにもつながるでしょう」
お絵描きでも工作でも、大人が口出しせず自由に取り組ませることが大切なんですね。そして、好きな時に好きなだけ取り組めるような環境作りも大きなポイントのようです。