成果主義の概要
成果主義とは、従業員の成果に基づいて実力を判断して評価する仕組みのことです。勤続年数や経験、年齢、学歴などに関わらず、企業への貢献度の高さが評価の基準という特徴があります。欧米の企業などでは一般的に実施されてきた人事評価制度です。
成果主義が広まった背景と現状、特徴、年功序列や能力主義との違いなど、成果主義の概要について解説します。
■成果主義が広まった背景と現状
近年、日本の企業でも年功序列から成果主義を取り入れる動きが目立っています。その背景のひとつとして挙げられるのは、1990年代のバブル崩壊です。業績の悪化した企業の多くが経営の効率化のために、人事評価制度を見直し、成果主義が広まったとされています。
また雇用形態や働き方の多様化によって、賃金体系の見直しが必要になったことも、成果主義を広める要因のひとつになっています。しかし、成果主義の必要性を感じていながら、導入に踏み切れていない企業がまだまだ多くあるのが現状です。
■成果主義の特徴
成果主義の特徴として、大きなものがふたつあります。ひとつ目は、成果主義とは成果を評価基準とした仕組みではあるものの、成果のみを基準にしているわけではないことです。成果や結果に至ったプロセスも含めて評価している点が、大きな特徴といえるでしょう。
ふたつ目の特徴は、数字だけで判断するものではないことです。成果を営業や販売実績の数字のみで判断してしまうと、数字に表れない部分の評価がおざなりになるケースが出てきます。企業の上層部は成果主義の特徴を理解して導入する必要があるでしょう。
■年功序列や能力主義との違い
成果主義と年功序列の違いは、評価基準です。成果主義では成果が基準であるのに対して、年功序列は年齢や勤続年数が基準であるため、真逆といえるでしょう。
成果主義と能力主義には、共通する部分があります。どちらも仕事のできる人ほど、評価される傾向があるからです。成果主義と能力主義の違いは、焦点を当てるポイントです。成果主義が「仕事」に焦点であるのに対して、能力主義は「人」に焦点を当てて評価します。つまり成果から測定できる能力・知識・経験・技術が評価対象です。
企業にとっての成果主義のメリット
成果主義には企業にとって多くのメリットがあり、企業の競争力を高める効果も期待できます。勤務年数を問わない評価の仕組みであるため、人材採用でもプラスとなるケースが多いといえるでしょう。企業にとってのおもなメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
・業務の効率化と生産性の向上
・人材育成・成長の促進
・人件費の適正化
・モチベーションの向上
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
1. 業務の効率化と生産性の向上
企業にとっての成果主義導入のメリットとしてまず挙げられるのは、業務の効率化と生産性の向上です。成果主義を導入すると、従業員は自発的に効率のよい成果の向上を目指し、業務の無駄を削減しようとします。業務の効率化は生産性の向上にもつながるでしょう。
従業員一人ひとりの業務の効率化と生産性の向上の実現は、企業全体としての業務の効率化と生産性の向上にも直結します。
2. 人材育成・成長の促進
成果主義は、人材育成によい効果をもたらすことも期待できます。成果主義を導入することによって、従業員の意識が変わり、自発的に成果をあげるために何をすべきかを考えて行動するようになる可能性があります。従業員の意識と姿勢の変化が、本人の成長につながるのです。
つまり企業側として、人材育成と成長の促進というメリットがあるのです。
3. 人件費の適正化
成果主義の企業側のメリットのひとつとして、人件費の適正化があります。年功序列による賃金体系では、従業員の年齢が上がると、成果に関わらず人件費も同じように上がっていきます。しかし成果主義を導入することによって、自動的な人件費の高騰が抑制されます。
成果に応じた給与体系をつくることによって、企業は人件費の適正化を実現できるのです。
4. モチベーションの向上
成果主義では、成果をあげることが昇給や昇進にダイレクトにつながるため、従業員が積極的にスキルアップに努め、仕事に意欲的にのぞむことが考えられます。従業員のモチベーションの向上は、企業全体の業績アップにもつながるでしょう。
従業員のモチベーションの高い職場は、外部から見ても魅力的に映ります。企業の魅力向上、人材採用などの効果も見込めます。
企業にとっての成果主義のデメリット
成果主義には企業にとってさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在します。成果をあげることは重要ですが、それだけを意識すると悪影響が出てくるケースがあるからです。おもな企業にとってのデメリットとして、以下の2点が挙げられます。
・チームワークの低下
・公平な評価が難しい
それぞれ詳しく解説します。
1. チームワークの低下
成果主義の導入によって、チームの利益よりも自分の利益ばかりを優先しがちになる場合があります。従業員が自らの成果をあげるために個人プレーに走ると、チームワークは低下し、組織全体としての力を発揮できなくなるでしょう。
チームワークの低下は、職場の雰囲気を悪くし、企業全体にも悪影響を及ぼしかねません。成果主義を取り入れる場合には、チーム全体としての成果も含めて評価するなど、チームワーク低下を防止する工夫が重要です。
2. 公平な評価が難しい
成果主義の企業側のデメリットとして、公平な評価の難しさが挙げられます。たとえば、部署や部門によって成果は異なります。営業であれば、売上を指標のひとつにできますが、人事や総務などの部署では、違う基準を設定しなければなりません。
どのように部署による評価の違いを調整するか、そして従業員に納得してもらうかは、企業にとって成果主義の大きな課題です。
成果主義を導入する際の企業側の注意点
成果主義はデメリットが生じる可能性があるため、マイナスになる要因を少なくする工夫が必要です。そのためには、企業は拙速とならないように時間をかけて、入念に準備する必要があります。企業にとっての成果主義を導入する際のおもな注意点は、以下のふたつです。
・公平な評価基準の設定が必要
・評価基準の明確化と周知が必要
それぞれ詳しく解説します。
1. 公平な評価基準の設定が必要
成果主義を導入する際には、公平な評価基準の設定が必要です。しかし誰もが公平だと感じる評価基準を定めるのは簡単ではありません。部門や部署ごとの異なる業務を、不公平感のないように調整する必要があります。
成果を数字のみで判断するのではなく、プロセスも含めて評価することによって、公平性の高い評価基準の設定が可能になるでしょう。
2. 評価基準の明確化と周知が必要
公平な評価基準を設定できたとしても、それだけでは十分とはいえません。従業員が評価基準を理解し納得できるように、評価基準の明確化と周知が必要です。
評価基準の明確化では、昇給や昇格の基準がどのようになっているか、具体的に示すことが求められるでしょう。周知する際には、疑問や不満などの従業員の反応をフィードバックします。さらに課題や問題が顕在化した場合には、すみやかに改善することが重要です。
成果主義への理解を深めて導入に備えよう
成果主義とは、成果に基づいて従業員を評価し、昇給や昇格を判断する仕組みです。近年、企業の業績悪化や雇用体系の多様化という背景のもと、国内の企業でも成果主義が広まってきました。
企業側には、業務の効率化と生産性の向上、従業員のモチベーションの向上などのメリットがある一方、チームワークの低下、評価基準の設定の難しさなどの課題もあります。