「可哀想」とはあわれで人の同情を誘うこと
「可哀想」とは、弱い立場や逆境に置かれているものに対し、あわれに思って何かをしてあげたくなるような気持ちをあらわす言葉です。気の毒な相手に対して、同情する際に使います。
■「かわいい」から派生した言葉
可哀想は「かわいい」が語源とされ、さらにかわいいは古語の「かはゆし」から派生した言葉とされます。かはゆしは漢字で書くと「顔映ゆし」です。
「映ゆし」は身体に影響を及ぼすような感情や状態を示し、たとえば目を開けていられないことを「まばゆし」というように、顔映ゆしも顔を向けていられないことを意味します。顔を向けていられない、つまり見ていられないほど不憫だ、気の毒だといった意味合いです。
このように「かわいい」は不憫である、気の毒であるといった意味でしたが、徐々に愛らしいという意味に移行しました。弱いものや小さいものに手を差し伸べたくなる感情と、気の毒で見ていられないという感情は近いものがあり、不憫だから助けたいから愛らしいに転じたと考えられます。
それに伴い、「かわいい」という言葉から消えつつあった“不憫の意味を「可哀想」が担う”ようになりました。漢字の表記も、「可愛そう」から可哀想に変化しています。
■上から目線のニュアンスに注意
可哀想という言葉は、弱い立場や逆境に置かれているものに対して気の毒に思い、なんとか救ってあげたいという気持ちをあらわす言葉です。
しかし、他人に対してすぐに「可哀想」と口にするのは、避けたほうが賢明でしょう。たとえ深い意味がなかったとしても、相手を不幸と決めつけ、上から目線で発言していると受け止められる可能性があるためです。
「可哀想」を使った例文
可哀想という言葉を使った例文は、以下をご参照ください。
・産まれてすぐに母犬から引き離される子犬を見て、可哀想に思った
・正々堂々と戦わず、卑怯な手を使ってやっと勝てるなんて、彼はなんて可哀想なんだろう
・可哀想なのは、真実を伝える機会も与えられない彼女のほうだ
「可哀想」の類語3つ
可哀想と同じような意味で使われる類語には、次のような言葉があります。
・哀れ
・気の毒
・痛ましい
それぞれの意味を解説していきましょう。
「哀れ」
「哀れ」は、強い心の動きを示す言葉で、しみじみと心に染みる感動をあらわします。特に、「その姿はいかにも哀れだ」というように、悲哀や哀憐の感情を表現する際に使われます。可哀想と、ほぼ同じ意味で使える言葉の1つです。
「気の毒」
「気の毒」は、他人の不幸や苦痛などに同情することで、可哀想の類語の1つとされる言葉です。気の毒は、面白いことや心の保養になることを意味する「気の薬」に対する言葉であり、もともとは気分を害するものや心の毒になることをあらわす際に用いられました。
やがて他人の不幸や苦痛に接すると、自分のことのように苦しい気持ちになることから、同情の意味で使われるようになったとされます。
そのほか、「気の毒なことをしてしまった」など、相手に迷惑をかけて申し訳なく思う際にも用いられます。
「痛ましい」
「痛ましい」は、目をそむけたくなるほど悲惨な様子を意味し、「痛ましい交通事故」というように使う言葉です。わが身が痛むほど可哀想であるという意味もあり、可哀想の類語の1つとして挙げられます。
「可哀想」と思われがちな人の特徴3選
可哀想と思われてしまいがちな人には、次のような特徴があると考えられます。
1.後ろ向きな発言が多い
2.感情のコントロールができない
3.人の幸せや成功を素直に喜べない
順番にみていきましょう。
1.後ろ向きな発言が多い
可哀想と思われがちな人の特徴として、後ろ向きな発言が多い点が挙げられます。
ネガティブな発言が多かったり、物事を悪い方に捉えやすかったりする人は、周囲から不幸な状況にあると思われても仕方がないのかもしれません。そのため、可哀想だと思われやすいといえます。
2.感情のコントロールができない
感情のコントロールができず、ささいなことに声を荒らげたりすぐにイライラした態度を取ったりする人も、可哀想な人だと思われやすいでしょう。
いつも気持ちに余裕がない様子だと、精神的に追いつめられるほど大変な悩みや不安を抱えているのだろうと、周囲から同情される可能性が高いためです。
3.人の幸せや成功を素直に喜べない
人の幸せや成功を素直に喜べないのも、可哀想な人の特徴の1つといえるでしょう。他人がなにかで成功したりおめでたいことがあったりしても素直に喜べない理由として、常に自分と他人を比較してしまっていることが挙げられます。
「〇〇さんってすごいよね」という言葉をそのまま受け取れず、「あなたは〇〇さんよりも劣っている」と解釈している可能性もあります。
精神的な余裕がないと他人と自分を比較してしまいやすくなるため、人の幸せや成功を素直に喜べない人も、可哀想と思われがちです。
「可哀想」の意味や由来を理解しよう
可哀想とは弱い立場や逆境に置かれているものに対し、気の毒に思ってなにかをしてあげたくなるような気持ちをあらわす言葉です。語源は、顔映ゆしから派生したかわいいであるとされます。
顔映ゆしは見ていられないほど不憫だ、気の毒だといった意味でしたが、かわいいは徐々に愛らしいという意味に移行しました。それに伴い、かわいいという言葉から消えつつあった不憫の意味を、可哀想が担うようになったといわれています。
可哀想という言葉は、弱い立場や気の毒な状況にあるものに対して用いる言葉であるため、他人に対してすぐに「可哀想」と口にするのは避けたほうがよいでしょう。
深い意味で言ったわけではなくても、相手を不幸と決めつけ、上から目線で発した言葉と受け止められるかもしれません。可哀想という言葉の由来や意味を理解し、適切な使い方をしましょう。
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