精進揚とは?
精進揚は「しょうじんあげ」と読みます。「精進揚げ」と書く場合もあり、法要などで出される精進料理のひとつです。
精進料理は古くから伝わる食文化で、野菜や豆腐など植物性の食材のみを使います。仏教の戒律を守る修行僧が食べる食事として誕生しました。
ここでは、精進揚の詳しい内容や由来、精進落としとの違いについて解説します。
■仏教の伝統的な料理
精進揚は、仏教の伝統的な料理・精進料理のひとつです。精進料理は仏教の教えに基づき、肉や魚などを使用しない料理を指します。精進とは 、「仏道修行に専心する」「肉食を断って菜食をする」といった意味です。
精進料理は「殺生(生き物を殺すこと)」を避けるために肉や魚を用いず、「煩悩(人を苦しめ、煩わせる心)」を刺激しないため、ニンニクやネギなど刺激のある食物を使いません。
精進料理の食材には野菜類・穀類・海藻類・豆類・木の実・果実などを使い、精進揚は主に野菜を使った揚げ物になります。
一般的な揚げ物のころもとして使われる卵も使用できません。だしを使う場合はカツオなど魚を原料とするものではなく、昆布などを使ったものを使用します。
■精進揚の由来
精進料理は、中国に由来するものとされています。仏教の伝来と一緒に伝わり、平安時代には精進料理の原型とされる食事が生まれていたということです。そのころはまだ魚や鶏肉などが用いられるなど、厳格ではありませんでした。
その後、鎌倉時代に禅宗が広まるとともに、菜食のみの精進料理が定着したとされています。精進揚も、精進料理とともに人々の間に定着していきました。
■精進落としとの違い
精進揚と似た言葉に精進落とし(しょうじんおとし)があります。精進落としとは、葬儀のあとに僧侶や参列者のために用意する食事のことです。もともと、四十九日の忌明けの際に食べる料理のことを精進落としと呼んでいました。
仏教では故人が浄土へ行けるよう、四十九日までの間遺族は肉や魚を食べず精進料理を食べるものとされていました。
四十九日目の法要が行われたあと、遺族は久しぶりに肉や魚を食べることができます。これを「精進落とし」と呼ぶようになったのです。精進落としは精進料理から普通の料理に戻ることを指し、精進落としの料理は肉や魚を含む豪華なメニューが振る舞われます。
時が経つにつれて四十九日間も精進料理を食べるのが難しくなり、精進落しの料理を食べるのは初七日の法要が終わったあとへと変わっていきました。
さらに、近年は参列者が再び集まる負担を減らすため、火葬場から戻ったその日に初七日の法要を終えるケースも増えています。精進落としはその際に振る舞われるようになりました。
精進揚は天ぷらとどう違う?
精進揚は一見すると天ぷらと似ていますが、食材や調理法が異なります。まず、天ぷらは食材に制限がなく、エビをはじめとする魚介類や鶏肉などの肉類も使われています。また、ころもには卵、天つゆにはかつお節のだし汁など、動物性のものを使うのが一般的です。
ここでは、精進揚と天ぷらの違いについて、食材と調理法に分けてみていきましょう。
■食材
前にもお伝えしたように、精進揚の食材に動物性のものは使いません。主に使われるのは、ナスやゴボウ、レンコン、ニンジン、サツマイモ、カボチャなどです。椎茸などのキノコ類もよく使われます。
これに対し、天ぷらには材料の制約がありません。特に、エビやキス、アナゴなどの魚介類はよく天ぷらの具材に使われます。
■調理法
精進揚も天ぷらも、油で揚げる工程に違いはありません。異なるのは、揚げる際にころもをつける作業です。
天ぷらには小麦粉と卵を使います。天ぷらを食べるときの天つゆは、かつお節でとっただし汁を使う場合もあります。これらの卵やだし汁は動物性のため、精進揚には使いません。精進揚を食べるときの天つゆは、昆布や椎茸などでとっただし汁を使います。
また、野菜ならなんでも使えるわけではなく、以下の野菜は精進揚には使われません。
〈精進揚に使わない野菜〉
・ニンニク
・ニラ
・ネギ
・らっきょう
・アサツキ(またはタマネギ)
これらの野菜は辛味があり強い匂いがするため、人間の煩悩を刺激をするとされています。そのため、精進揚に使ってはいけないとされています。
精進揚のレシピ
精進揚のレシピは、材料に“動物性のものを使わない”以外はほとんど天ぷらと変わりません。材料の切り方や揚げ方などに特別な決まりはなく、揚げる温度も基本的に同じです。
具材の野菜は、強い匂いや刺激のある野菜以外は自由に使えます。好みの野菜を使って、精進揚を作ってみましょう。
ここでは、精進揚のレシピをご紹介します。
〈材料〉
精進揚2〜3人分の材料です。
(具材)
・さつまいも:小1本
・なす:1~2個
・かぼちゃ:小1/8個
・にんじん:5cm
・ごぼう:10cm
・そのほかお好みで
(ころも)
・小麦粉:1カップ
・塩:小さじ1/4
・冷水:3/4カップ
・揚げ油:適量
下ごしらえとして、さつまいもやかぼちゃは厚さ1cmほどに切ります。ナスはヘタを切り落として縦に半分に切り、切り込みを入れて扇状にします。にんじん、ごぼうは5cmほどの長さで細切りにしておきましょう。
〈作り方〉
1.ボウルにころもの材料を入れます。ころもは冷やしながら作ると粘りが出ずにサクッと揚がるため、ボウルに氷水をあてながら混ぜましょう。混ぜすぎず、泡立て器で軽く混ぜるのがコツです。縁に粉が残る程度で混ぜるのを止めてください。
2.油を高めの温度(約175℃)に熱し、さつまいも、かぼちゃをころもにくぐらせて油に入れます。弱火でじっくり揚げ、完全に浮き上がってカラリとしてから取り出しましょう。なすは扇形に少し広げてころもにくぐらせ、皮目から揚げます。
3.にんじんとごぼうをボウルに入れてからめ、食べやすい大きさにまとめて油に落とします。カラリと揚がったら器に盛り、塩や昆布だしで作った天つゆ、大根おろしなどを添えていただきます。
精進揚は動物性の食材を使わない料理
「精進揚」は仏教に由来する精進料理のひとつで、動物性の材料を使わないで作るのが特徴です。衣には卵を使いません。天つゆのだし汁もかつお節ではなく、昆布だしなど動物性ではないものを使います。作り方の手順は、基本的に天ぷらと変わりありません。
精進揚について正しく知り、禁止されている材料は使わないようにしましょう。
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