私情・私事・私用
私情には「個人的な感情」、私事や私用には「個人的な都合」というニュアンスがあります。一方で諸事情は、自分自身の事情ではなく、外的な別の事情がある際にも使われる表現です。
たとえば、会社を早退したい場合を想像してみましょう。「私用のため早退します」と言った場合は自分の個人的な都合で早退するという意味になりますが、「諸事情のため早退します」と言うと外的な要因の場合も含むことができます。
諸事情の使い方を例文で紹介
日常生活で諸事情はどのように使われるのでしょうか? 使い方を例文で紹介します。
1:「この度の共同プロジェクトの提案はまたとない機会ですが、諸事情により辞退させていただきます」
諸事情はビジネスシーンでも使うことができます。この例文は、断る際の諸事情の使い方。場合によっては、長く理由を述べると言い訳のように受け取られる可能性があるため、そういう場合は諸事情を使うと簡潔な印象になります。
2:「部下の精神面や能力面などの諸事情を考慮して、来月の仕事量を調整することにした」
諸事情のうしろに「考慮」や「勘案」、「鑑み」、「加味」などを続けて使用できます。事情に配慮して柔軟に対応することを「諸事情を考慮して」などと言えるのです。
諸事情を使う際に気をつけたいポイント
ここまでは、諸事情と類語表現の意味や使い方を紹介してきました。これらを踏まえて、最後に諸事情という言葉を使う際の注意点を挙げます。
1:私情・私事・私用と諸事情は使う場面が異なる
私情や私事、私用は、基本的に自分の都合、利己的な理由の際に使う表現です。たとえば、「社長は私情で会議を欠席しております」といった表現はあまり自然とはいえません。なぜなら社長が「会議に出席したくない」といった個人的な感情で欠席するような印象を与えるからです。
たとえ私情であったとしても、渋滞に巻き込まれてしまったなどの予期せぬトラブルであっても、このような場合には「諸事情により欠席しております」という表現を使うのがおすすめ。
たとえば、私情は「私情を交えない判断をするべきだ」のように使えます。私事は「私事ではございますが、〇月〇日に結婚いたしました」、私用は「子供の運動会という私用と会社のプレゼンの日程の板挟みになり辛い状況だ」など、あくまでも個人的なことに使われる表現です。
2:自己都合の退職時は「一身上の都合」がよく使われる
一般的に自己都合で退職をする際は、「一身上の都合」という表現が多く使われます。たとえば、「一身上の都合により、〇月〇日をもって退職することになりました」などの表現が使用できます。
3:断る際に「諸事情」は多用しない
複雑な事情を端的にまとめて伝えることができる言葉ですが、多用は禁物。何度も使ってしまうと「説明もなしに何でもかんでも断るなんて失礼だ」と思われてしまう可能性があります。基本的には、やむにやまれぬ事情がある際にのみ使うように心がけましょう。
4:諸事情は詮索しない
これまでは、諸事情を「言う」側の注意点を紹介しましたが、言われた場合も押さえておきたいポイントがあります。それは詮索しないこと。諸事情という言葉の裏には複雑な事情や言いたくない理由があります。そのためにオブラートに包んだ諸事情という言葉を使っているのだと汲んで、詮索しすぎないように気をつけましょう。
最後に
本記事では、諸事情の意味や類語表現などを紹介しました。あわせて例文つきで使い方も挙げているので、ぜひ会話の参考にしてみてください。
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