退職届の書き方は?
仕事をやめるときに、必ずと言っていいほど提出を求められるのが、「退職届」です。書き方や封筒、用紙などに決まりがあるのか、いつまでに出せばいいのかなど、疑問点がたくさんあるという方も、いるかもしれません。
退職届を書く際、書き方に決まりがあるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。また、「所定の用紙や様式があるの?」などの疑問の声も聞こえてきそうですね。そこでここでは、退職届の書き方と用紙について解説します。
結論から言うと、退職届には、専用の用紙や様式はありません。また、手書きが一般的ですが、最近ではパソコンで作成することも増えてきているようです。
一般的には、A4かB5程度の用紙に、縦書きで記入します。専用の様式がないので、どう書けばいいのか迷う…というときは、以下のようなポイントで書くのがおすすめです。
1:届け出のタイトル
「退職届」などと、届け出の名称を冒頭に記載します。よく似ているものに、「退職願」がありますね。厳密に言うと、これは退職を願い出るための届け出で、「退職届」とは異なるものということも、おさえておきましょう。
場合によっては、一度「退職願」を提出して打診してから、正式に退職日を決定し、改めて「退職届」を提出することも。会社によっては、いきなり「退職届」を出すことは、マナー違反と見られることもあるので、注意した方がよいでしょう。
2:退職日を伝える本文
「退職届」の次の行に「私儀」と書き、さらに次の行に「この度、一身上の都合により、〇年〇月〇日をもちまして退職いたします」などと記載します。退職日を記載する際は、「来月末」などの表現は誤解されやすいので避けましょう。
ここで注意したいのが退職理由。通常、退職理由は詳しく書く必要がなく、自己都合での退職の場合、「一身上の都合」で足ります。ただし、事業縮小など、会社の都合で退職する場合は、そのことを書くようにしましょう。退職理由によって、雇用保険の失業給付などにも影響があるからです。
3:退職を申し出た日
退職届を提出する日を記載します。原則は、退職日の14日前までに申し出をする必要がある点も注意しましょう。また、就業規則に「退職日1か月前に所属長へ提出すること」というように、退職の申し出のルールが定められている可能性もあります。あらかじめ確認しておきましょう。
4:退職者の部署名、氏名と押印
自分の所属部署名と、氏名をフルネームで記載し、印鑑を押します。
5:届け出の提出先
「○○株式会社 代表取締役社長○○殿」のように、会社名と代表者の氏名を記載します。
以上のようなポイントを押さえておけば、細かい文章に決まりはありません。
封筒はどうすべき?
退職届は、封筒に入れて提出することが一般的です。義務ではありませんが、むき出しで渡すのはマナー違反。できれば白無地の二重封筒が良いでしょう。退職届の中身が透けてしまうのを避けるためです。
また、正式な書類は、柄入りのものや茶封筒は、好ましくないとされています。サイズは、書類が三つ折りで入るような、長4封筒か長3封筒がおすすめ。プライベートの手紙に使うような、小さなサイズの封筒は避けるようにしましょう。反対に、あまりに大きすぎる封筒は目立ってしまうので、やめておいた方が無難ですね。
なお、封筒表面には「退職届」と記載し、裏面に所属部署名と氏名を記載するようにしましょう。封入する際は、しっかり糊付けをして、「〆」という印をつけると安心ですよ。
退職届はいつまでに出す?
退職届は、いつまでに出せばよいのでしょうか? ここからは、退職届の提出期限についても見ていきましょう。
民法の規定上、正社員などの、期間の定めがない雇用契約の場合、退職を申し出た日から数えて14日を過ぎれば、退職となることとされています。つまり、14日前までに退職届を提出すればよいということですね。
ただし、就業規則で「退職は〇か月前までに申し出ること」などとされている場合は、どうでしょうか? この場合、民法より就業規則が優先するという説もあるのですが、過去の裁判例では、民法が優先されるというものも。一概には言えないということも、注意したいところです。
なお、「代わりの人が入社するまでは、退職できない」というような独自ルールは、法律上の定めではないため、従う義務はありません。
ちなみに、契約社員などの、期間に定めがある契約の場合は、いつでも退職できるとは限らないということをご存じでしょうか?
原則、雇用契約の期間に定めがある場合は、その契約期間中の退職はできません。しかし、1年を超える契約の場合は、1年を過ぎた日以後であれば、退職ができることとされています。もちろん、やむを得ない事情がある場合は、例外もあるでしょう。しかし、期間の定めがない場合と比べて、このように一定の制限があることは、おさえておきたいところです。
事前の相談は必要?
円満に退職するには、就業規則を事前にチェックした上で、上司に一度相談しておくのがおすすめです。
また、会社の事情も、できる限りは考慮した方がよいでしょう。できれば、「退職願」などの形で、上司にあらかじめ打診をしてから、退職届を提出する方が、トラブルは防ぎやすくなります。業務の引継ぎなども考えると、期間に余裕をもって相談しておくのが安心です。
ちなみに、退職届は一度提出してしまうと、原則撤回ができません。一時の感情で退職届を出してしまい、後悔した経験があるという人も。そういったことにならないよう、慎重に判断してから提出するようにしましょう。
郵送でもOK?
退職届の提出の仕方は、上司への手渡しがマナーとされています。郵送は郵便事故や、会社内で紛失してしまう可能性もあるため、トラブルの元に。中には、総務などで郵便を一律で受付して、開封してしまう会社もあります。そのため、上司の下に届く前に見られてしまう可能性も。やむを得ない場合以外は、手渡しにした方が安全でしょう。
ただ、例えば病気休職をしていて、そのまま退職するという場合。わざわざ会社まで退職届を渡しに行くのは、難しいこともあるかもしれません。このような場合は、会社にあらかじめ相談した上で、郵送するのもひとつの方法。その場合、特定記録郵便など、配達記録が追えるようにしておくのが安心です。
最後に
この記事では、退職届の書き方や提出期限、用紙や封筒について解説しました。立つ鳥跡を濁さずという言葉もあります。スムーズに退職するためにも、参考にしてみてください。
執筆
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
ライター所属:京都メディアライン
あわせて読みたい