「身から出た錆」とは?
日常の中で、「身から出た錆」という表現を耳にすることがあるでしょう。しかし、この言葉の意味や由来まで、正確に把握している方は少ないかもしれません。
そこで本章では、「身から出た錆」の意味や由来などを解説します。日常のコミュニケーションの中で「身から出た錆」を使う場合は、まず本章の内容を参考にしてみてください。
■語句の意味
「身から出た錆(みからでたさび)」ということわざは、自分の不正行為や過ちの結果として、自身が苦しむことを指す言葉です。
日常の対話において、災難や苦難が訪れた場合、それを受け入れる必然性があることを示しており、自業自得という意味合いで用いられるケースが多いでしょう。なお辞書で「身から出た錆」と調べると、以下のような解説がされています。
《刀の錆は刀身から生じるところから》自分の犯した悪行の結果として自分自身が苦しむこと。自業自得。
<小学館 デジタル大辞泉より>
■語源・由来
なぜ自分自身に責任があることを、「身から生じた錆」と表現するようになったのでしょうか。この表現は、刀の手入れから派生したものと言われています。
少々の錆であれば砥石ですぐに研ぎ落とせますが、手入れを怠ることで錆が蓄積し、もはや刀としては使い物にならなくなってしまうこともあるでしょう。いざというときに使えず、自分の命を落とすこともあります。
このことから自分自身を刀身になぞらえ、犯した罪や誤りによって生じる自己の苦しみを「身から生じた錆」と表現するようになりました。
「身から出た錆」の2つの使い方
「身から出た錆」は、相手によってはかなり厳しい表現と捉えられてしまうかもしれません。そのため人に使う場合は、前後の文脈などに十分注意しましょう。
なお「身から出た錆」の使い方としては、自分自身への戒めと他者への批難といった2つがあります。それぞれの例文を本章で解説していくため、使用する際の参考にしてください。
■自分へ向けて使う場合
自分へ向けて「戒め」として使用する場合は、以下のような使い方をします。
・大学に不合格であったことは悔しいが、よくよく振り返ってみると、身から出た錆かもしれない
・仕事へのモチベーションが低下している。ミスが続き、上司からの評価が下がってしまったことは身から出た錆だ
・今の状況は、身から出た錆に違いない。しかし、もう自分ではどうにもならない。
■他者に対して使う場合
自分ではなく、他者へ向けて「身から出た錆」を使う場合は、以下の例文を参考にしてください。なおこのことわざには、批判的なニュアンスが込められてしまうため、使用には注意しなければなりません。
・毎日ろくに勉強せず、遊んでばかりいたじゃないか。大学受験に失敗したのは、身から出た錆としか言いようがないだろう
・君は残業が終わらないと嘆いているけれど、先週サボっていたのだから、身から出た錆だ
■注意すべき“誤用”
身から出た錆ということわざには、注意すべき誤用があります。たとえば、「何度も練習して、上司にもチェックしてもらっていたプレゼンが本番で失敗した。これは、身から出た錆だ」などです。
「身から出た錆」という言葉は、何かをサボるなど悪いことをしたケースにのみ、使用します。単に「努力が実らなかった」という意味で使うのは誤用であるため、注意してください。
「身から出た錆」の類語
「身から出た錆」ということわざには、状況や状態に応じて使える、類似の表現が複数存在します。これらの表現を知っておくことで日常生活で役立ち、また言い換え表現を複数覚えておくことで、ボキャブラリーも一気に向上するでしょう。
本章では「身から出た錆」の類語の中から、いくつか代表的なものを紹介していきます。
「自業自得(じごうじとく)」
自業自得(じごうじとく)とは、自身の行動によって受ける結果や報いを指し示す言葉です。かつてはよい行動にも使用されていましたが、現在では主に悪い行動に言及する際にのみ、用いられます。