「立錐の余地もない」とは?
「立錐の余地もない」という言葉は、観光地やフェス、イベント会場などに多くの人がつめかけているときに、その混雑状況を伝えるニュースなどで、よく使われている語句です。この言葉を聞いたことはあるけれど、正確な意味はわからない人もいるのではないでしょうか?
この言葉の意味について、デジタル大辞泉では以下のように説明されています。
【立錐の余地もない】
《「呂氏春秋」為欲から》人がたくさん集まって、わずかのすきまもない。
「会場は超満員で―・い」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「立錐」が具体的に何を指しているのかも含めて、「立錐の余地もない」の意味・読み方・語源を解説します。
■「立錐の余地もない」の意味と読み方
「立錐の余地もない」とは、人や物が密集していている状態を表す言葉で、読み方は「りっすいのよちもない」です。「錐(すい)」とは木材に穴をあける大工道具の「錐(きり)」のことで、「立錐」とはその「錐(きり)」が立った状態を表しています。
細くて先の尖った「錐(きり)」が立っている光景を想像してみると、「錐(きり)」が立つために必要なのは、わずかな空間であることがわかります。「立錐の余地もない」とは、その「錐(きり)」が立つすきまもないほど混雑していることの比喩的な表現であることがわかるでしょう。
■「立錐の余地もない」の語源
「立錐の余地もない」の語源は、中国・秦の宰相だった呂不韋(りょふい)が食客の著作を編集した書「呂氏春秋(りょししゅんじゅう)」の「為欲」です。この中で「無欲な人間は、この広い世界全体のことも立錐の地くらいのわずかなものとしか思っていない」と記述されていることから、「立錐」という表現が広まったとされています。
また、中国・前漢時代の歴史家である司馬遷の歴史書「史記」の「滑稽伝」でも、「立錐」という語句が登場します。「いまや秦(しん)六国(りっこく)の子孫を滅ぼして立錐の地さえないようにした」という一節です。
どちらも「わずかな空間」を「立錐」という言葉で表現しているところが共通しています。
「立錐の余地もない」の例文
「立錐の余地もない」は、混雑した状況を形容する決まり文句のように使われる点が特徴的です。テレビのニュースでよく耳にする言葉といえるでしょう。