「デフォルメ」の意味とは
「デフォルメ」は、何かしらの表現をする際に使う言葉ですが、実は正しい意味を知らないという人も多いかもしれません。本記事では、芸術の分野で使われる表現方法の一つである「デフォルメ」について、言葉の意味や使い方などを解説します。
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デフォルメ【(フランス)déformer】読み方:でふぉるめ
[名](スル)デフォルマシオンの技法により、対象を変形して表現すること。「人物を—して描く」
『デジタル大辞泉』(小学館)
「デフォルメ」は、フランスの言葉です。表現の対象となる物の原形を誇張したり、変形させたりして、新しい形で表現することを指します。「デフォルメ」は意図的に表現するものであり、技術不足で変形やゆがみが生じた作品に対しては使いません。
主に芸術分野で使われている言葉ですが、最近では日常会話やビジネスシーンで登場する機会が増えました。
「デフォルメ」はどう使う?
「デフォルメ」という言葉の使い方を紹介します。例文を挙げますので、参考にしてくださいね。
使い方の例文
《例文》
・偉人をデフォルメしてイラストにしたところ、おもしろいと褒められた
・デフォルメして描写しているのに、その人物の特徴がよく出ている
・先方が気に入ったのは、デフォルメしたデザインのようだ
・あの話はデフォルメされ過ぎて、信ぴょう性に欠ける
「デフォルメ」は作品以外に、話や提案などに対しても用いられます。この場合も「誇張している」「変形している」の意味になり、「話を盛る」というニュアンスを含むことになります。
「デフォルメ」に似たイメージの言葉
「デフォルメ」に似たイメージのある言葉を紹介します。誤用を避けるためにも、それぞれの意味を把握しておきたいですね。
「デフォルト」
「デフォルト」には次の3つの意味があります。
1:債務不履行。公社債の利払いが遅延したり、元本の償還が不能となったりすること。借入金の返済が不能となったことをもいう。
2:コンピューターで、ユーザーが特に指定しない場合に、あらかじめ設定されている値また動作条件。初期設定。
3:俗に、標準であること。初めから決まっていること。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用/「3」の使い方は日本語での用法
「デフォルト」は初期設定、あるいは標準設定という意味。「デフォルメ」とはまったく違う意味を持ちます。「デフォルメ」と読み方が似ていることもあり混同しやすいので、誤用や勘違いがないようにしてください。
「パロディ」
元の作品や現象を模倣しながら、その特徴に風刺や皮肉を盛り込んで強調し、新たな形や意味で表現する手法のこと。「デフォルメ」同様、芸術分野でよく用いられています。
「パロディ」と「デフォルメ」の線引きはあいまいで、明確な基準があるわけではないようです。どちらも元の作品を変形して新しい表現を生み出しますが、風刺や皮肉の度合いが強めだと「パロディ」になるでしょう。
「オマージュ」
既存の作品や人物などに対して敬意を表明し、引用や模倣などで新しい表現をすることを指します。元の作品や人物を彷彿とさせるものや、要素を取り入れ似せたものなどが多いでしょう。
敬意や尊敬の意味を込めて制作するのが「オマージュ」ですから、その点が「デフォルメ」とは異なります。また、単に似ているだけの作品は「オマージュ」にはなりません。
「インスパイア」
他者の作品やアイデアなどに刺激を受け、新たな作品や考え方を生み出すことを意味する言葉。基本的には元の作品やアイデアからヒントを得て作り出すことが多いでしょう。
「変形」「誇張」などの意味合いは含みませんので、「デフォルメ」とはまったく違う意味になると考えてください。
「トリビュート」
感謝・賞賛・尊敬などの気持ちを表すしるしという意味の「トリビュート」は、「オマージュ」と似ている言葉です。感謝の証として自分の作品などを捧げるという意味合いで使うため、「デフォルメ」とは意味が異なります。
アーティストが「トリビュートアルバム」や「トリビュート作品」を発表することがありますが、これらは特定のアーティストや作品などに捧げる意味が込められています。
「デフォルメ」の反対の意味を持つ言葉も紹介
「デフォルメ」と反対の意味を持つ言葉も見ていきましょう。原形に変形や誇張を加えず、そのままの状態で表現することを指す言葉が該当します。
「コピー」
「写し取る」「複写」という意味の言葉。元の作品やデータをそのまま表現することや、複製することを指します。「コピー」は元の作品などと見分けがつかないほどそっくりという場合に使いますので、「デフォルメ」とは反対の意味になると言えるでしょう。
「写実的」
現実を、主観を交えず、ありのままに表現しようとするさまを意味する言葉。読み方は「しゃじつてき」です。芸術分野でよく使われる言葉であり、現実の情景や風景を再現するように表現します。「写実的な絵画」という言い回しは、ありのままに表現されている絵画であることを表しています。
「模写」
似せて写すことや、実物通りに写しとることという意味。読み方は「もしゃ」。芸術作品などを、そっくりそのまま写し取ったものに対して使われます。美術の分野で使われることが多い言葉です。
「デフォルメ」はおもちゃにも生かされている
人気アニメのキャラクターなどを、「デフォルメ」した玩具(おもちゃ)も多数あります。既存のキャラクターを大きな頭に小さな手足や、体が特徴の二頭身キャラクターにした「デフォルメフィギュア」は、大人にも大人気。シリーズ化されるなど、人気を博しています。
「デフォルメ」したものは、原形の2~2.5頭身に落とし込み表現されています。「デフォルメ」が生み出した絶妙なバランスはキャラクターに新たな魅力を与え、多くの人の心をつかんでいると言えるでしょう。
最後に
「デフォルメ」という言葉を紹介しました。元はフランス語であり、「~を変形させる」「~の形をゆがめる」という意味を持つ言葉ですが、カタカナ語として日本に定着しています。「デフォルメ」より生み出された作品は多数あり、絵画からアニメ、漫画まで、幅広く用いられています。「デフォルメ」という言葉の意味を正しく把握しておくと、作品をより理解しやすくなるかもしれません。
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