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「悪貨は良貨を駆逐する」とは?
「悪貨は良貨を駆逐する」は、日常生活でも使うことができることわざです。頻繁に使用することわざではないかもしれません。しかし、いざ、この言葉がでてきた時に「意味がわからない」となっては困りますよね。そこで、「悪貨は良貨を駆逐する」の意味や使い方を正しく理解するために、どんな意味のことわざなのか、読み方や由来も一緒にチェックしていきましょう。
「悪貨は良貨を駆逐する」意味や読み方は?
「悪貨は良貨を駆逐する」は「あっかはりょうかをくちくする」と読みます。直接的な言葉の意味は「1つの国の中で、名目的に同じ価値のある悪貨と良貨が流通すると、人々は良貨を使うことなく貯め込む。そうすると悪貨だけが使用されて世に出回る」ということ。この「悪貨」とは、「不正なお金(悪いお金)」のこと、「駆逐」とは「追い払う」という意味の言葉です。
しかし現在では、少し異なる意味合いで使われています。「悪貨は良貨を駆逐する」は、上記の意味合いが転じて、「悪いものほど世の中に広がり、良いものは消え去る」という意味で使われていることがほとんど。また、「下品で良くない文化が流行し、上質な文化が衰退する」や、「悪人が我がもの顔で好き勝手振る舞い、善人が抑え込まれる」などという状況をたとえていいます。
「悪貨は良貨を駆逐する」の由来は「グレシャムの法則」
このことわざは、16世紀のイギリスで財務官を務めた、貿易・為替・金融業者トーマス・グレシャムが唱えた「グレシャムの法則」に由来するといわれています。「グレシャムの法則」とは、「同じ貨幣価値の貨幣であっても、質の良い貨幣は溜め込まれ、質の悪い貨幣だけが市場に出回る」ということをいったものです。
悪貨とは「質の悪い貨幣」のこと、良貨とは「質の良い貨幣」のこと。それは当時、貨幣に含まれる銀などの量は、国の財政によって変わったそう。そのことから「悪貨」とは、銀などの含有量が低く、混ぜ物の多い貨幣のこと。銀や金などの含有量が多く、質の良い貨幣が「良貨」とされていました。
銀や金そのものに価値があるため、同じ金額の貨幣でも銀や金などの含有量が多い貨幣は、使わずにしまっておきたくなりますよね。そのため、市場に出回る貨幣は、混ぜ物の多い貨幣になるというわけです。このような状況をグレシャムは、「グレシャムの法則」として提唱しました。
「悪銭身に付かず」とは意味が異なる
「悪貨は良貨を駆逐する」に似ている、「悪銭身につかず」ということわざがあります。これらは混同して使われがちなのですが、意味は異なります。
「悪銭身につかず」とは、「悪事や博打などをして得たお金は、勢いよく使って手元に残らない」という意味のことわざです。「悪銭」とは、盗みなどの悪事や、博打など不正をして手に入れた金銭のこと。そのようなお金は、すぐになくなってしまう。「お金は真面目に労働して稼ぐものだ」という戒めとして使われることもあります。
「悪貨は良貨を駆逐する」の使い方とは? 例文でチェック
「悪貨は良貨を駆逐する」の使い方は、主に、人に対してや社会に対して使うことができます。例文で使い方をチェックしていきましょう。
1:「モチベーションが低い人ばかりで、やる気がある人が辞めてしまう事態に。悪貨は良貨を駆逐するとはこのことだ」
職場などで、モチベーションが低い人が多いと、やる気のある人のモチベーションも下がってしまいます。その結果、職場を辞めてしまうというケースも少なくないでしょう。まさにモチベーションの高い人が追い出されてしまう、「悪貨が良貨を駆逐」するという状況だといえますね。
2:「悪貨は良貨を駆逐するというように、違法なコピー品が安価で出回ると、正規品が売れなくなる」
安価で違法な商品が蔓延して、正規品が売れなくなるということも。海賊版のCDや本、ネット上に違法にアップロードされた音楽や映画を、安価でダウンロードして楽しむ人が増えると、正規の値段で映画や音楽などを購入する人が減るということを伝えています。
3:「みんなズルをしているからといって、ズルをしていい訳がない。悪貨は良貨を駆逐することになってはいけない」
子どもなどに「みんなやっているからいいという訳ではない」という戒めの言葉としても使うことができます。例えば「宿題をしていない人が多いから宿題はしなくてもよい」など、「みんなやっているから」ということに対して、周囲に流されるのではなく、正しいことをするように伝える際にも用いることが可能です。
「悪貨は良貨を駆逐する」の類語・言い換え表現とは?
「悪貨は良貨を駆逐する」の類語・言い換え表現には、「衆寡敵せず」・「憎まれっ子世に憚る」があげられます。
1:「衆寡敵せず」
「衆寡敵せず」は「しゅうかてきせず」と読み、「少数のものが多数のものに挑んでも勝ち目がない」ということ。「寡は衆に敵せず(かはしゅうにてきせず)」と表すことも。「衆」は数が多いこと、「寡」は少ないという意味です。
(例文)
・衆寡敵せずで、我が社のような小さな会社は大企業には勝てない。
2:「憎まれっ子世に憚る」
「憎まれっ子世に憚る(にくまれっこよにはばかる)」は、「人から憎まれるような子は、社会に出ると、威勢をふるって、思いのままに生きる」や「嫌われ者ほど、世渡り上手」という意味です。
それが転じて「やんちゃな子どもは、大人になると出世する」や「厚かましいくらいの人が上手に世の中を渡っていける」または、「世の中の理不尽さ」を表す際に用いられることもあります。
(例文)
・憎まれっ子世に憚るで、わがままな彼女は昔からいつも輪の中心にいる。
「悪貨は良貨を駆逐する」は英語ではどう表現する?
「悪貨は良貨を駆逐する」を英語で表すと以下のようになります。
・Bad money drives out good(money).
※「drives out」は「追い出す」という意味。
最後に
「悪貨は良貨を駆逐する」ということわざについて、意味や由来、使い方などを見てきました。意味や由来をセットで知っておくと、より言葉の意味が理解できるのではないでしょうか。
また「悪貨は良貨を駆逐する」は、子どもに対しても使える表現です。「みんな勉強してないから」、「みんな遊んでいるから」など、いいがちな言い訳ですよね。周りに流されないで正しいことをするように伝えたい、そんな時にも使えることわざです。子どもと一緒にことわざの意味や、使い方などを学べるといいかもしれませんね。
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