「ガラパゴス」とは?由来と意味
近年、ニュースやSNSなどで「ガラパゴス」という言葉を耳にすることが多くなりましたが、その意味や由来までは知らない人も少なくないでしょう。ガラパゴスの意味や由来、どのような場面で使われるかを解説します。
「ガラパゴス諸島」を由来とする
「ガラパゴス」という言葉は、エクアドルに属する「ガラパゴス諸島」が由来とされています。ガラパゴス諸島はエクアドル本土の西部に位置しており、いくつもの島々からなる火山性諸島として有名です。
大陸は長い年月の中で移動していますが、ガラパゴス諸島は他の大陸と地続きになったことがなく、独自の進化を遂げた生物が数多く存在しているのが特徴です。
生物学者・自然科学者であるダーウィンもガラパゴス諸島を訪れており、その経験から進化論の着想を得たともいわれています。こうした理由から、ガラパゴスという言葉は「独自の発展を遂げたさま」を指す言葉として使われるようになりました。
ガラパゴス【Galápagos】
ガラパゴス諸島のこと。
(出典:小学館 デジタル大辞泉)ガラパゴス‐しょとう【ガラパゴス諸島】
《Galápagosはスペイン語で亀の意》太平洋の赤道直下にある火山性諸島。エクアドルに属し、主島はイサベラ島。面積7680平方キロメートル。ガラパゴスゾウガメ、ガラパゴスリクイグアナ、ウミイグアナなど固有の動植物が生息。ダーウィンが、島ごとに生物が微妙に違うところから進化論のヒントを得たといわれる。1978年、世界遺産(自然遺産)に登録。2001年には周辺の海洋保護区が追加登録された。コロン諸島。
(出典:小学館 デジタル大辞泉)
意味は「閉鎖的環境で独自に発展したさま」
大陸から影響を受けずに生物が独自に進化したとされるガラパゴス諸島。このことから、ガラパゴスという言葉には「周囲とは異なる独自の進化を遂げた」だけでなく「孤立している」「閉鎖的である」という意味も含まれるケースがあるようです。
ガラパゴス‐か【ガラパゴス化】
[名](スル)(ガラパゴス諸島の生物進化のように)周囲とは懸け離れた、独自の進化をすること。特に、IT技術やインフラ、サービスなどが国際規格とは違う方向で発達すること。日本の携帯電話など、高度で多機能であるが特殊化されていて世界市場では売りにくいものについていう。「—する日本の製造業界」
(出典:小学館 デジタル大辞泉)
「この店のメニューはガラパゴス状態だ」「その業界は閉鎖的でガラパゴスといわれている」のように使います。
ガラパゴスは、ビジネスシーンでもよく登場する言葉です。しかし「あくまで外部には通用しない」という皮肉がこもったニュアンスで使われるケースも少なくないため、使う対象については気をつける必要があります。
「ガラパゴス」に関連する言葉
ガラパゴスという言葉は、そのまま単語のみで使用される以外にも、ガラパゴスから派生した関連用語がよく使われます。主に使用される二つの関連用語とその例文を紹介します。
ガラパゴス携帯
当たり前のように使われている「ガラケー」という言葉は「ガラパゴス携帯」の略語です。電話やメール以外にもさまざまな機能を備えた携帯端末は、日本独自で発展したという意味でガラパゴス携帯と呼ばれています。
スマートフォンの普及によってあまり利用されなくなったものの、ガラケーはかつて多くの人が持っていたアイテムでした。カメラ機能やワンセグなどの豊富な機能があったガラパゴス携帯は、フィーチャーフォンとも呼ばれています。
ガラケーはハイスペックにもかかわらず、日本国内では人気でも海外ではそれほど利用されませんでした。日本の中で独自の発展を遂げた代表的な例といえます。
ガラパゴス化・ガラパゴス現象
ガラパゴス化とは、日本と海外の文化・技術を比較する際によく使われる言葉です。日本独自の方法と国際基準に隔たりがあることを表しており、「ガラパゴス現象」とも表現されます。
ガラパゴス‐げんしょう【ガラパゴス現象】
ガラパゴス化すること。また、その状態。ガラパゴス化現象。→ガラパゴス化
「日本の経営戦略はガラパゴス化している」「新製品のガラパゴス化を警戒する」のように使われます。ほとんどの場合、批判的な意味合いで使われることが多いでしょう。
日本と海外という大きな枠組みに限らず、限定的な環境の中で物事が独自に発達している状態もガラパゴス化と表現できます。会社や業界など、独自のやり方が外部から孤立していくことを表現する際にも用いられます。
「ガラパゴス」を言い換えるなら?
ガラパゴスという言葉は一般的に使われているものの、意味を知らない人も少なくありません。正確な意味を伝える必要のある場面では、他の言葉で表現する方が賢明です。ガラパゴスの言い換え表現として使える言葉を3つ紹介します。
独自
ガラパゴスのよい意味での言い換え表現には「独自」があげられます。独自とは、他のものにはみられない特別な特徴があることを意味する言葉です。
「その村は独自の伝統を守り、独自の祭りでにぎわっている」「この企業は独自の技術を開発し、市場で成功を収めている」のように使われます。他のものとは違う発展を遂げたという点で、ガラパゴスと共通するのがポイントです。
独自と似たような意味を持つ言葉としては、「独特」「特有」などが挙げられます。ガラパゴスにネガティブな意味をこめず、賛辞として使いたいときに役立つ言い換え表現です。
独立
「独立」もまた、他のものとは離れている状態を表す言葉です。何かに左右されず自分自身の意思で行動することを意味するため、ガラパゴスの「独自に発展した」というニュアンスをポジティブに表現できます。
ガラパゴスを独立と言い換えるのは、孤立しているという意味合いを避けたいときにもおすすめです。「そのアーティストは既存のスタイルから独立した芸術表現を追求している」のように使います。
また、勤めていた会社を退職して自ら事業を営むことも独立といい、「彼は会社員として数年経験を積んだのち、独立することを選んだ」と表現します。
タコツボ化
「ガラパゴス化」のような、やや批判的な意味を含める場合の言い換え表現には「タコツボ化」があります。タコツボとは、名前の通りタコを捕まえるために海に沈めて使う道具のことです。
日本の会社はいくつもの部門に分かれていることが多く、それぞれの部門が専門性を持ち、孤立しがちな性質もみられます。このような状態をタコツボになぞらえ、企業形態を意味する言葉としてタコツボ化(サイロ化)と呼びます。
なお、リモートワークが普及している近年、自宅での勤務が増えたことで他の人や部門の人への関心が薄くなり、同僚や他部署とのコミュニケーションが減っている状態を、タコツボ化と表現するようにもなっているようです。
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