単身赴任の定義とは?
単身赴任は、配偶者や子どもなどの家族と離れ、勤務地の近くでひとり暮らしをしながら仕事をすることです。具体的な例や、転勤・出向との違いなどを紹介します。
会社都合で家族と離れて働くこと
単身赴任とは会社の都合により、家族と離れてひとりで赴任先で働くことを指します。たとえば、東京に勤める社員が大阪への異動を命じられ、家族を残して単身大阪へ赴任するケースなどが該当します。
たんしん‐ふにん【単身赴任】
[名](スル)所帯持ちが、家族を置いてひとりで任地におもむくこと。
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
企業の人材配置の柔軟性を高める一方で、従業員の生活スタイルを大きく変化させる点が問題になりがちです。ただ、家族との別居は心理的な負担を伴いますが、キャリアアップの機会にもなり得ます。
単身赴任の期間は企業や職種によって異なるものの、数カ月から数年に及ぶことが一般的です。 長期化する場合、家族とのコミュニケーション維持が課題となります。
単身赴任に似ている言葉
単身赴任と似た言葉に「転勤」や「出向」があります。勤務地が変わる点はどちらも同じですが、はっきりとした違いがあります。
転勤は勤務地の変更を指す言葉です。家族と共に引っ越すケースも含み、転勤になっても近くであれば住居の移動が不要な場合もあります。
出向は、他社や関連会社への異動を意味し、必ずしも遠隔地に移るとは限りません。出向には出向元の企業と雇用関係を維持したままの「在籍出向」と、出向元を退職して出向先企業と雇用契約をする「転籍出向」の2種類があります。
企業が単身赴任を命じる目的
企業が単身赴任を命じる目的は、主に組織の効率化と人材育成にあります。たとえば、大手メーカーが新工場を地方に設立する際、熟練社員の技術指導が必要です。
この場合、ベテラン社員の単身赴任は有効な解決策だといえます。また、将来の幹部候補生に多様な経験を積ませるため、あえて単身赴任を命じることもあります。
新しい環境での業務経験は社員の視野を広げ、組織の新陳代謝を高める絶好の機会となるのです。全国に多数拠点を持つ大企業、製造業・建設業・金融業、国家公務員などは単身赴任や転勤が多い傾向です。
単身赴任のメリット・デメリット
単身赴任のメリットとデメリットを前もって知っておくと、事前準備や過ごし方について対策できるので安心です。赴任者と家族、それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
キャリアアップやマンネリ打破がメリット
新しい環境で責任ある立場を任されることで、スキルアップや人脈拡大への可能性が高まる点は単身赴任者にとってメリットといえます。
また、自己啓発の時間が増えることもメリットのひとつ。仕事帰りに語学教室に通ったり、趣味の読書に没頭したりと、自己投資の機会を広げることができるのです。さらに、家族との関係性を見直すきっかけにもなる点も見逃せません。離れて暮らしてみてはじめて、家族の大切さを再認識する人もいます。
単身赴任する本人だけでなく、配偶者も自身のキャリアに集中でき、子どもにとっては自立心を養う機会になるのも利点といえるでしょう。
さみしさや経済面での負担がデメリット
家族との物理的な距離が生まれる点は、単身赴任の大きなデメリットのひとつです。単身生活による孤独感やさみしさは無視できません。
特に子育て中だった場合、子どもの成長を日々見守れないことは大きな喪失感につながります。また、二重生活による出費増加が避けられず、家計を圧迫する点も問題になりがちです。
対策としては、定期的なビデオ通話で家族とのコミュニケーションを密に取ったり、赴任先で新しい趣味を見つけたりすることで充実した単身生活を送れます。経済的なデメリットを最小限に抑えるには、各種手当の存在をしっかりと把握し活用することをおすすめします。
単身赴任の手当の種類
単身赴任者の経済的な負担を和らげるために、さまざまな手当が用意されています。内容や金額は企業によって違いがあり、担当部署への確認が必要です。単身赴任者がもらえる手当の種類や相場について解説します。
単身赴任準備金
単身赴任準備金は、新たな生活を始めるための初期費用をサポートする手当です。「転勤支度金」という名称でも呼ばれ、引っ越し代や家具・家電の購入費用など、赴任先での生活立ち上げに必要な経費をカバーします。
この手当は概ね一時金として支給されます。金額は企業によって異なりますが、一般的な相場は10万円から13万円程度のようです。赴任先の物価や住宅事情などの影響で変動する場合もあり、一定ではありません。
単身赴任準備金は、新しい環境での生活をスタートさせる際の不安を和らげ、仕事に集中できる環境を整えるのに役立ちます。ただし、その多くは一度きりの支給であるため、計画的な使用が大切です。
単身赴任手当
単身赴任手当は、赴任者の生活を継続的に支えるために重要な手当です。通常の給与に加えて毎月支給され、赴任先での生活費や二重生活による経済的な負担を和らげます。
手当の金額は企業によって異なりますが、厚生労働省が2020年に行った調査によると、民間企業では4万7,000円前後とされています。準備金と同じく、赴任先の物価や住宅事情、赴任者の役職などによって調整される傾向です。
この手当は、赴任者と家族が安定した生活を送るための要となります。毎月の給与にいくらプラスされるのか、事前に把握しておきましょう。
出典:令和2年就労条件総合調査の概況(13〜14ページ)- 厚生労働省
住宅手当
住宅手当は、赴任先での住居費用をサポートする手当です。赴任先と家族が暮らす家、ふたつの住居費は大きな負担となりますが、住宅手当があれば経済的負担が軽減できます。
企業によって割合が異なり、家賃の何割かが住宅手当として支給されます。ただし、企業が借りている住宅や社宅などを利用できる場合、支給されないことが多いようです。
住宅手当を活用すれば、仕事場へのアクセスがよく快適な住居を選びやすくなります。しかし、住居費は毎月固定で出ていくもの。家計を圧迫しないためには、無理のない範囲での物件選びが必要です。
帰省旅費手当
帰省旅費手当は、赴任者が家族のもとへ帰省する際の交通費をサポートする制度です。この手当は家族との絆を維持し、心身のリフレッシュを図る上で重要な役目を果たします。
一般的に、年に数回程度の帰省費用を支給されるケースが多く、交通手段や距離に応じて金額が設定されます。新幹線や飛行機を利用する場合は実費が支給されることもありますが、企業によって条件はさまざまです。
この手当を活用すれば定期的に家族と顔を合わせ、コミュニケーションを取ることができます。家族との時間を大切にしながら、仕事と私生活のバランスを保つ助けにもなります。
単身赴任をする際に必要な準備
家族が単身赴任するにあたっては、さまざまな準備が必要です。住民票・社会保険などの手続きや、住居を決めるポイントなどを紹介します。
単身赴任をする際の手続き
単身赴任先での滞在期間が1年以上の場合、住民票を移すのが一般的です。住民票を移せば、運転免許証の更新や各種証明書発行などの行政サービスを受けやすくなります。ただし、健康保険や年金の扱いが変わる可能性もあるため、社会保険の手続きについては会社の人事部門に確認しておきましょう。
そのほか、家族とのコミュニケーション方法を事前に決めておくと安心です。ビデオ通話やSNSの活用など、離れていても心の距離を保つ方法はたくさんあります。
住居を決める際のポイント
単身赴任の住居選びは、新生活の質を左右する重要な決断です。まず、家賃と手当のバランスを検討します。会社からの住宅手当を最大限活用できるよう、予算を立てることがポイントです。
次に、通勤時間を考慮します。職場までの距離が近いほど、時間とエネルギーを節約できます。セキュリティ面の配慮や、スーパー・病院などの生活に必要な施設が近くにあるかどうかも大切です。
家族との交流を考えると、新幹線停車駅や空港へのアクセスがよい場所も魅力的といえます。交通の便がよい場所なら、帰省や家族の訪問が比較的容易になるためです。
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