法律上の婚姻関係はあるものの、同居をせずに過ごすスタイルの「別居婚」。円満な関係でありつつ、多様なライフスタイルのひとつとして選ぶ人たちもいます。
そもそも別居婚とは?
まずは、別居婚とはどんな夫婦をさすのか? そしてどんなメリット・デメリットがあるのか? 体験者やアドバイザー、弁護士などの意見を聞きつつ、考えてみましょう。
入籍後、夫婦別々に暮らすこと
別居婚とは、入籍をして法律上の夫婦でありながらも別々に暮らす夫婦の形をいいます。仲が悪くなって別居した場合と違って、お互いの生活や価値観を尊重しつつ、よりよい生活スタイルを求めるという、ポジティブな理由が多いのが特徴です。完全に住まいを分けている場合もあれば、週末にはどちらか一方の家で生活を送る週末婚も、別居婚に含まれます。
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事情があり期間限定で行うことも
夫婦の意思とは別に、家庭の事情によって期間限定での別居婚のケースも多くあります。たとえば、単身赴任や、看護や介護のための一時的な帰省、里帰り出産など。これらは多くの場合、期間限定だったり、目的が終わったら元の生活に戻ります。
また、
「子どもができるまでの期間限定で、それぞれ仕事に集中するために別居婚を選びました」(飲食店経営・女)
という例も。それぞれのペースで自由に生活するイメージが強い「別居婚」。けれど、目的と期間ありきの場合は、「頑張る相手を応援する」気持ちも重要といえそうです
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住民票や扶養の手続きはどうなる?
「別居状態であっても、一時的なことであり、婚姻関係を続けるのであれば、住民票は移さないことをおすすめします。国民健康保険、遺族年金そのほか、行政の書類は、生計同一(家族でひとつの家計)を基準にしているものが多いからです」(ファイナンシャルプランナー・井戸美枝さん)
なお、夫が会社員の場合の社会保険については、妻が収入面などの条件を満たしている場合は別居婚であっても夫の扶養に入れます。
別居婚の離婚率
厚生労働省の統計データ「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、令和4年の婚姻件数は504,878組、離婚件数は179,096組であったようです。
離婚率(人口千対) は 1.47 で前年の 1.50 より低下しているようですが、2022年の「特殊離婚率」(年間あたりの離婚件数を婚姻件数で割ったもの)を見ると、約35.5%と高いものになっています。ただし、特殊離婚率はあくまで計算上のもの。その年に結婚したすべての夫婦のおよそ1/3が離婚したというわけではありませんので、ご注意ください。
この中で「別居婚」の離婚率は? というと、公式データはないのが実情です。そもそも別居婚が全体の婚姻数の中でどれくらいの割合を占めるのかということも、わかっていません。理由としては、「別居婚」というスタイルがまだ新しく、世の中に浸透していないことが挙げられるでしょう。
ただ、別居婚は、独身時代と比べても生活環境の変化が少なく、双方の状況が把握しづらい面があります。「婚姻関係である」ことへの意味付けが薄まるということから、離婚に至るケースもあるでしょう。
同居婚か別居婚かに関わらず、離婚となるケースはさまざまです。生活スタイルに関わらず、どのようなパートナーシップが築けるのかが大切ですね。
参考:令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省)
メリットとは
では、「別居婚」にはどんなメリットがあるのか、体験者の声をもとに検証してみましょう。
新鮮さを味わうことができる
「彼が地方転勤中に結婚したので、結婚直後から別居婚です。でも、週末や長い休みを一緒に過ごすと、恋人時代より仲よかったりして…(笑)。しばらくはこの関係がいいかな」(食品・女性)
毎日一緒にいる夫婦より、たまに再会できる間柄のほうが、恋人気分が味わえて断然新鮮! マンネリ感を感じたカップルの打開策として、別居を“前向きに”検討するのも、ひとつの方法です。
自由に生活できる
「必要があればLINEでいつもつながるけど、生活上はお互いに干渉し合わないのが暗黙のルールです。夫婦といってもやっぱり他人なので」(コンサルタント・男性)
「仕事や女友達と遊んだ後、終電に間に合わせて早く帰らなきゃと焦ることがなくなりました。今は、仕事場と住まいを兼ねたマンションにひとりで住んででいます」
と話すのは、「アラフォー女子のセカンドハウス物語」にも登場した、エステティシャンの真理子さん。
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デメリットとは
気持ちの上での孤独や責任。それ以外には、どんなリスクが潜んでいるのでしょうか? 別居婚を始める前に、解決しておきたいことはなんでしょうか?
浮気する可能性がある
「いちばんのリスクは、配偶者の浮気の可能性が高くなり、かつ気づきにくいことでしょう。同居していればすぐに気づく朝帰り、浮ついた様子、下着や香水の変化などもわかりにくい。実際に、週末婚を十数年続けていて、相手の浮気に気づかなかった実例もあります」
と話すのは、弁護士の金野志保さん(金野志保はばたき法律事務所)。
「浮気はそれぞれの自由」と堂々と言えるほど、精神的に自立したカップルならば話は別ですが、相手の秘密が気になるなら、お互いの合鍵を持ち、状況を常にオープンにしておくのも、ひとつの手。それを提案して拒むようであれば、何かしら怪しいことがあるのかも?
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