生活費がかさむ
別々に部屋を借りるのであれば、家賃がそれぞれにかかるのは当然。それ以外の出費で覚えておきたいのはーー。
「光熱費、生活用品や食事代。こうしたものは、夫婦二人世帯でも、ひとりの世帯でも、大きくは変わりません」(ファイナンシャルプランナー・井戸美枝さん)。
夫婦ともに、独立した家計を支えられるくらいの、経済力はやはり必要。さらに、それをチェック(監視)する相手がいなくなると、浪費しやすくなる人もいるそう。また自炊が面倒になりがちな人の場合、外食が増えて出費がかさむ可能性も大。
あとで後悔しないためには、
「別居婚に移行するとき、これまでどれくらい生活費がかかっていて、今後どれくらい増えそうか、把握しておくことをおすすめします」(ファイナンシャルプランナー・井戸美枝さん)
参考/『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(井戸美枝・著)
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向いている夫婦って?
メリットとデメリットを見てきましたが、それらを総合して、別居婚に向いているのは、どんな夫婦なのでしょうか。別居婚に興味を持っている人は、自分たち夫婦が現在当てはまっているか・別居婚後も実現できそうかを考えてみましょう。
信頼関係を築いている
浮気や浪費など、別居婚で新たな心配ごとは出てくるものの、それを乗り越えて信頼関係が築けるかどうか。離れていても、相手のことを思いやる気持ちがもてるか。別居婚が成功するかどうかは、そこにかかっていると言ってもいいでしょう。
「週末やたまに会ったとき、じっくり目を見て話しをすれば、隠し事をしているかどうか、だいたいわかります。理想は週に1回、少なくても2週に1回は顔を合わせるのがいいと思います」(アパレル・女性)
経済的に自立している
夫婦それぞれでの出費が必要になることは、すでにご紹介しました。さらに貯金と経済力があるなら、「自分の城」としてマンションを購入し、別居婚の長期戦に備えるという人も。
「フリーランスで保証人もなく、賃貸マンションの審査がなかなか通りませんでした。それで思い切ってマンションを購入!家族は神戸、私は仕事のために東京暮らしをしています」(キャリカウンセラー・女性)。
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離婚や法律について
夫婦が合意の上での別居婚は、法律を理由に解消する必要はなく、別居婚による罰則も当然ありません。ただ、注意したいのは上記の「始めるとき」と「別れるとき」。さて、弁護士のアドバイスはー。
別居婚をするとき・離婚するときの注意点
家庭・夫婦問題を多く扱う弁護士・金野志保さん(金野志保はばたき法律事務所)に聞きました。
「別居婚に合理的理由があって、双方合意の上であることを書面でなどで残すことをおすすめします。現在の裁判実務では、双方に落ち度がなくても2〜3年別居していたら離婚が認められることが多いです。もしも別れることになったとき、その理由として相手から『婚姻が破綻して別居していた』と主張され、(本来は合意の上だった)週末婚期間を『2〜3年の別居期間』にカウントされかねないからです」。
別居婚からの離婚というと、生活スタイルは大きく変化はないので、できればスムーズに済ませたいもの。事前の書面だけなら、お互い関係が良好なうちに済ませておく。自分を守る手段として、覚えておきたいことのひとつです。
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連絡方法や会う頻度
「私が東京、夫が福岡なので、あまり頻繁に会うことはできません。航空代が安いタイミング、ふたりの有給が同時に取れたときなどに行き来したり、中間地点の大阪や京都で会ったりします。平均して月1〜2回です」(食品・女性)
「ルールは決めず、気軽に妻を食事に誘ったり誘われたり。週末に旅行に行ったり。恋人と夫婦の中間くらいの関係で、ちょうどいい」(コンサルタント・男性)
必要な連絡や報告のために電話やメール、SNSでやりとりするのは当たり前。それ以外に、顔を合わせて会話をしたり、食事に行ったり、どの夫婦も毎日のようにやっていることは、やはり夫婦の絆を確認しあう時間として必要。さらに、ときどき旅行に行ってリフレッシュを。別居婚でストレスをためない工夫でもあります。回数や頻度は家庭ごとにそれぞれ。相手のために自分の時間を割かれたくないという理由で別居婚をしている人も多いのだから、頻度の多さや一緒にいる時間で夫婦の仲をはかるのは難しい…。つまりは、頻度や時間よりも「相手への思いやり」「夫婦でいることの確認」が何より大事なのかもしれません。
子供との暮らしや将来のビジョン
実際に別居婚をしている夫婦には、「子どもがいない」または「子どもができるまで」という場合が多く、子どもができたら「夫婦一緒に住む」と考えている人たちも多数。
「別居婚を始めても、ずるずると長期におよんでしまうより、<○年間だけ><子どもができるまで>と決めておくほうがいいと思います。目安は賃貸物件の契約期間の2年が、区切りがいいでしょう」
とファイナンシャルプランナーの井戸美枝さん。
別居婚開始時には、それぞれ別居の目的やメリットがはっきりしていても、長期になるうちに曖昧になったり、夫婦としての感覚が薄れてしまうこともありえます。出費ばかりが増えて、さらに離婚の確率が高くなるという心配も。いっときの別居婚を経て、通常の生活に戻り、夫婦によってはそれまでの出費を子育てにあてる。その後に「もう一度自分の時間が欲しくなって」「子どもが自立したから」という理由で、別居婚を再開する。人生を長い目で見ながら、こんな別居婚の形もありかもしれません。
写真・イラスト/(C)Shutterstock.com
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