【目次】
友達には隠していた介護生活
「フケたね~!」
自宅での介護生活を始めてから、数か月たったある日。久しぶりに会った友達の第一声。
なかなかのショックでしたが、「最近どうしてる?」と聞かれても「相変わらずだよ~」と曖昧に答えて、介護のことは一切語らずにいたので、忖度なしの正直な印象だったんだろうなと思います。
ダディが倒れてから最初の1年は、インスタもブログも他の人の投稿をまったく見ていませんでした。見られなかった、というのが正しいかもしれません。
同世代の友達はみんな、仕事に趣味に、遊びにおしゃれに子育てに…とそれぞれ忙しそうで、キラキラして見えました。一方の私は、介護を始める前は毎週のように飲みに出かけていたのに、出られる時間が無いのもあったけど、まったく遊ぶ気持ちにもなれず、、、。
自分の周りにいた人たちは華やかだったんだな。仲良くしていたけど、もう違う世界の人なんだな、と思うように。
じわじわふさぎ込んでいく私にとって、救いはネットゲームでした。
ゲームを通じて出会えるのは、日本各地に住む子供たちや、主婦の方、経営者のおじさまなど、年齢も立場もさまざまな人。プレー中のチャットで「こっちは派手なこともなく、地味な日常だよ」というような話を聞きながら、「確かにこれが普通の生活だよな」と気づいたり。
中には私と同じように家族の介護をしている方や、介護職に携わる方もいて、身近な友達には隠していた自分の状況を話せたことで気持ちが軽くなりました。知らない人のほうが、気を許せることがあるんですね。
ただし、盲点だったのは、気づかないうちにトータルで100万円以上課金していた(!)こと。最初は子供たちに喜んで欲しくて、課金して手に入れたアイテムをあげていたんですが、その後大人のグループに参加するようになり、今度はレベルを上げるために課金。ハマりましたね。
そしてもうひとつのストレス解消法が、パチンコでした。イヤなことを何も考えないでボーッとしていられる。当たりが出るとやっぱり楽しい。
おしゃれして出かける気にもなれなかったのでひどい格好で、この姿は見られたくないなーと思いつつ、ダディがデイケアに行っている間に通っていましたね。当時、友達に「誕生日プレゼント、何がいい?」と聞かれて、「パチンコ台」と答えたくらい。
そうやって現実逃避していた時期は3年ほど。その間も、自分のインスタのタイムライン上は何ごともなかったかのように振る舞っていました。やっと外の世界に目を向けられるようになりましたが、介護を始めて間もないころ、顔も見えない本名も知らない人たちに助けられて今までやってこれたことに感謝しています。
イラスト/佐藤えつこ 構成/佐藤久美子
前回のお話▶︎自由気ままな生活が、三十路半ばにして激変!
これまでのお話▶︎だれにでも起こりうる介護のリアルって?元モデルの介護奮闘記【うちのダディは脳梗塞】
佐藤えつこ
1978年生まれ。14歳で、小学館『プチセブン』専属モデルに。「えっこ」のニックネームで多くのティーン読者から熱く支持される。『プチセブン』卒業後、『CanCam』モデルの傍らデザイン学校に通い、27歳でアクセサリー&小物ブランド「Clasky」を立ち上げ。現在もデザイナーとして活躍中。Twitterアカウントは@Kaigo_Diary