台湾で受けた3か月間の鬼訓練で鍛えられました!
入社していちばん最初に受ける「イニシャルトレーニング」では、飛行機のこと、サービスのこと、急患対応のこと、税関規則のこと、つまりCAになる上で大切なことのすべてを勉強します。
その中でも「苦労したこと BEST3」に入るのが、緊急脱出時の掛け声 in 中国語。
「船 (ツヮァン)」と「床 (ツヮァン)」、ほぼ同じ発音だけど間違えると…
万が一、火災やエンジントラブルなどでどうしても緊急着水をするしか手段がなかったとき、飛行機は海や川など水の上に降りることになります。そして着水後は基本、乗客も乗務員も救命ボートに乗り込み飛行機から離れたところまで避難します。
緊急脱出の際CAは、担当しているドアのすぐ隣に立ってこう叫びます。
「シートベルトを外して! こちらへきて! ここで救命胴衣を膨らませて! ボートに乗り込んで!」
ちなみに、英語だと…
「Release your seatbelt! Come this way! Inflate your lifevest here! Get onto the boat!」
そして、中国語だと…
「解開安全帶! 到這邊來! 在這裡將救生衣充氣! 跳進船上!」
訓練センターには実寸大の飛行機ドアのモックアップがあり、そこで本番さながらに大きな声を出し、身振り手振りも使いながら脱出時の指示出しの練習を行います。
そんなピリッとした空気の中で、いつも私たち日本人クルーが台湾人教官を苦笑いさせてしまうポイント、それが中国語の掛け声の「船 (ツヮァン)」のところでした。
「床 (ツヮァン)」は中国語で〝ベッド〟という意味
実はこの単語、ベッドという意味の「床 (ツヮァン)」と発音がほぼ同じ。しかも私たち日本人が「船」といってるつもりでも台湾人には「床」に聞こえるらしく、なかなか正しい発音ができない。
そんなわけで大真面目で叫んでいるのにも関わらず、台湾人教官には、「跳進床上♡」(ベッドに乗り込んで♡) と、まぁなんとも場に相応しくない聞こえになっていたというわけなのです。
(c) shutterstock.com
何度も発音の練習した結果、ちょっと早口で 「ツヮァン」といったら「船」っぽく聞こえるということがわかり、それ以来みんなそこだけ駆け足で叫ぶようになりました。
船 (Chuán)
床 (Chuáng)
この日本人にはほぼ聞こえない「g」の音がつく中国語の単語は多く存在し、中国語を話す上で、私が非常に難しいと感じた部分でもあります。
そして…、緊急脱出時の不謹慎発言は、これに止まらなかったのです。
【続】
▼ あわせて読みたい記事
ベテランCAが15年経っても越えられない「香檳」の壁って?【元CAの中国語ってムズカシイ】
機内で「米果」を配っていたらお客さんに笑われた【元CAの中国語ってムズカシイ】
先輩に「熊貓」の話をするのはやめておこう【元CAの中国語ってムズカシイ】
美容ライター
有田 千幸
外資系航空会社のCA、建築設計事務所の秘書・広報を経て美容ライターに。ニュージーランド・台湾在住経験がある日・英・中の トリリンガル。環境を意識したシンプルな暮らしを心がけている。プライベートでは一児の母。ワインエキスパート。薬膳コーディネーター。