取引先との会話で、「私どもは」と言う代わりに「当方は」と表現すること、ありますよね。果たして使用する相手やシーンなどが間違っていないかどうか自信がないという人も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、「当方」の意味やビジネスシーンでの使い方、注意点などを解説します。
「当方」の正しい意味と読み方
「当方」は「とうほう」と読み、「私ども」という意味で使用する言葉です。失礼のないビジネスマナーを身に付けるためにも、まずは「当方」の読み方と意味を確認しておきましょう。
読み方は「とうかた」ではなく「とうほう」
「当方」は、「とうほう」と読みます。「道理にかなうこと」「そのものに相当すること」を意味する「当」と、向きを表す「方」で成り立つ言葉です。書面の読み上げで間違えることのないよう、読み方をきちんと把握しておきましょう。
正しい意味は「私ども」「こちら」
「当方」の意味は以下のとおりです。
自分の属している方。自分の方。こちら。「―は皆無事です」⇔先方。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「当方」は、「自分の所属している方」や「こちら」といった意味を持つ言葉です。「私たち」というニュアンスで使用するため、「当方としましては~」と意見を述べるときは、個人ではなく部署や会社全体の意向を表します。
ビジネスで「当方」を使うときの注意点3つ
ビジネスシーンで「当方」を使う時には、気をつけておきたいポイントがいくつかあります。注意点を理解した上で、使いこなしてくださいね。
自社内での使用は誤り
自分の所属を意味する「当方」は、取引先や顧客に対して使用する言葉です。そのため、社内で「当方は」と用いるのは場にそぐわないかもしれません。特に、異なる部署に「当方の意見としては」と伝えると、他人行儀に感じられてしまうでしょう。
個人を表す場合は「私」を用いるのが無難
前述したように、「当方」は「自分の所属している方」という意味を持つ言葉です。そのため、個人を指す場合には「私」が適しています。ビジネスシーンでは、一人称として「当方」を用いるケースもあります。しかし、混乱を避けるためにも、個人には「私」を用いるのが無難です。
特に「当方は~」と述べた意見は、組織全体のものとして受け取られる可能性もあります。個人の考えやアイディアを「当方は」とまとめると、あとになって相違が生まれる恐れもあるでしょう。取引先や目上の人に対するマナーのひとつとして、「当方」と「私」は正しく使い分けましょう。
文書では「弊社」「当社」と表記する
正式なビジネス文書では、「当方」を用いることはありません。代わりに「弊社」や「当社」と表記します。「当方」は社外に向け、口語やメールで用いることを心がけるといいでしょう。
ここで注意したいのが、「当社」は社内での使用に適していることです。報告書やスピーチ文書など、へりくだった表現が必要のない場面で使用します。一方、「弊社」は社外向けの文書に適した表現です。社内に向けて「弊社」と使用するのは誤りなので、注意しましょう。
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「当方」の使い方とメール例文
「当方」の意味と注意点をおさえたら、次は使い方をマスターしましょう。ここでは、3つのビジネスシーンに応じたメールの例文を紹介します。
対応者が確定していないとき
取引先から問い合わせを受けたものの、担当者が決まっていない場合は「当方」を使用します。恐縮する意味を持つ「恐れ入りますが」を付け加えると、よりていねいな表現になります。
例文
・お時間を頂戴して恐れ入りますが、詳細が分かり次第、当方よりご連絡差し上げます。
・ご注文が確定次第、当方から返信いたします。
・こちらの不手際で申し訳なく存じますが、当方からの連絡をお待ちいただけますでしょうか。
会社の総意だと言い切れないとき
クレームに早急な返答が求められるものの、会社の総意だと言い切れないときも「当方」を用います。真摯な対応が求められる場面でこそ、適切なビジネスマナーが必要です。後のトラブルを避けるためにも、会社全体の意見としてまとまっていない段階では「当方」でていねいな気持ちを伝えましょう。
例文
・ご迷惑をおかけしており、誠に申し訳なく思っております。当方といたしましては、貴重なご意見を参考に再発防止に努める所存です。
・当方としましては早急に対応策をまとめ、あらためてお返事させていただく所存です。
「当方」の類義語と言い換え表現5つ
「当方」には、「私ども」「弊社」など、複数の類義語や言い換え表現があります。それぞれの正しい意味を理解し、ビジネスシーンに応じた表現力を身に付けましょう。
「私ども」
「私ども」は、「私」をへりくだって表した言葉です。「当方」と同様に、個人ではなく所属する部署や会社全体を指します。
例文
・この度は私どもの不手際でご迷惑をおかけし、誠に申し訳ないことでございます。
・こちらが私どものおすすめするプランです。ぜひご利用をご検討ください。