「膾炙」とは評判になって広く知れ渡ること
「膾炙」は「膾」と「炙」のどちらも見慣れない漢字であり、初めて見たときに正しく読める方は少ないかと思います。「膾炙」の意味は、人々の評判になって広く知れ渡ることです。意味がわかっても、どのように読むのかは想像できないかもしれません。
ここでは「膾炙」の読み方や言葉の由来、どのような使い方をするのかについて詳しく紹介します。
「膾炙」はどう読む?
それぞれの漢字だけでも読み方が難しい「膾炙」、読めた方はいるでしょうか。さっそく答えをお伝えしましょう。
正解は、【かいしゃ】です!
【膾炙】
[名](スル)《「膾」はなます、「炙」はあぶり肉の意で、いずれも味がよく、多くの人の口に喜ばれるところから》世の人々の評判になって知れ渡ること。「人口に膾炙する」
(引用〈小学舘 デジタル大辞泉〉より)
「膾」は「なます」と読み、お正月のおせち料理にある紅白なますを思い浮かべる方も多いでしょう。
「炙」は炙る(あぶる)からきています。「炙る」は火にあてて温める、または焼くという意味です。
「膾炙」の由来
「膾炙」の「膾(なます)」は古代中国で食べられていた料理で、生肉を細かく刻んで酢で和えたものです。魚介類を使ったものは魚編の「鱠」と書きます。日本でも生魚と野菜を味付けしたものをなますと呼んでいましたが、現代でなますといえば、大根や人参などの野菜を酢で和えた料理です。
「炙」はあぶり肉という意味で、なますもあぶり肉も味が良く、人の口を喜ばせることから転じ、「膾炙」は「人の口にのぼり評判になる」という意味で使われるようになったとされています。
「人口に膾炙する」という使い方をする
「膾炙」は一般的に「人口に膾炙する(じんこうにかいしゃする)」という使い方をします。「人口に膾炙する」はもともと中国の故事で、唐の時代の詩人である林嵩(りんすう)が『周朴詩集序(しゅうぼくししゅうじょ)』の中に記した一節です。
「膾炙」そのものにも「広く人々に知られている」という意味がありますが、「人口」と合わせて使われることが多いでしょう。
人口とは人の数を表す「人口」ではなく、「人々の口を喜ばせる」という語源を見てもわかるとおり「人の口」という意味です。
「人口に膾炙する」は、次のような使い方をします。
・この本は【人口に膾炙して】、あっという間にベストセラーになった
・彼は長い間、【人口に膾炙する】作品を生み出し続けている
四字熟語「人口膾炙」もある
「膾炙」は「人口膾炙」という四字熟語にもなっています。広く世間に知られて、もてはやされることを一言で表すものです。「膾炙人口」という使い方もされています。
四字熟語を使う場合の例文は、次のとおりです。
・昔から親しまれている彼女の作品は、まさしく【人口膾炙】の一例だろう
・昔は【人口膾炙】していた彼も、今では誰も話題にしない
・彼は昨日までは無名の一般人だったのに、たちまち【人口膾炙】してしまった
「膾炙」の例文
「膾炙」は広く人気があるもの、有名なものに使われ、悪い評判で広まっている場合には使われません。「人の口が喜ぶ」という語源を覚えておくとよいでしょう。「膾炙」を使った例文を見て、使い方を確認してみてください。
・ノーベル文学賞を受賞し、彼は【人口に膾炙する】存在になった
・彼はあの発明により、すっかり【人口に膾炙する】ようになった
・多額の寄付をしている人物として、彼の名は広く世間に【膾炙】している
・彼女の善行はマスコミで話題になり、あっという間に【膾炙】することになった
「膾炙」の2つの意味と類語
「膾炙」は人々から注目され、高い評価を受けるという意味合いで使われる場合が多い言葉ですが、「人の噂になる」というニュアンスで使われる場合もあります。前者であれば「もてはやされる」などが類語となり、後者であれば「取り沙汰される」と言い換えることができるでしょう。
それぞれの意味に対する類語を確認しておけば、「膾炙」の意味がより深く理解できます。ここでは、「膾炙」の2つの意味に対応する類語について見ていきましょう。