「鉄面皮」の意味や読み⽅とは?
普段の会話ではあまり耳にすることのない「鉄面皮」。まずは、その意味や読み方など、基本的な知識から学んでいきましょう。さらに語源や由来を紐解くと、いっそう「鉄面皮」という言葉の理解が深まるでしょう。
■読み⽅と意味
「鉄面皮」の読み方は「てつめんぴ」です。「鉄面皮」を辞書で引くと、以下のような説明があります。
《鉄でできている面(つら)の皮の意》恥知らずで、厚かましいこと。また、その人や、そのさま。厚顔。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
「鉄面皮」は、何も感じない「鉄」という物質でできている人間の面を表しています。このことから、「恥を恥とも思わない」、「恥知らず」、「厚かましい」という、人を評価する上では、マイナスな意味を持つ言葉だということがわかります。
■語源や由来
あまり良い意味では使われない「鉄面皮」ですが、その言葉の語源や由来は、どのようなものでしょうか。「鉄面皮」は、中国に由来する言葉で、以下のような逸話があります。
昔、中国に、王光遠という学問に秀でた人物がいました。王光遠の実力は、科挙の試験のなかでも特に難しいとされる進士に合格するほどのもの。科挙の制度は隋の時代から清の時代まで続き、非常に倍率が高かったといわれています。進士は「殿試(でんし)」という、皇帝の臨席する試験を受け、その結果によって後の待遇が決まります。
非常に優秀で、進士にもなった王光遠。進士にまでなったなら、将来安泰だと思うのですが、彼は出世欲のすこぶる強い野心家で、出世のためならどんな恥ずかしい行為も厭いませんでした。有力者に取り入るために近づき、門前払いをされても諦めず、お世辞を重ね、時には酒の席で鞭で打たれても、怒るどころかご機嫌取りをするほど。
これを見た人々が、「光遠顔厚きこと、十重の鉄甲のごとし(光遠の厚かましさは、十重の鉄の甲のように分厚い)」と称したことが、「鉄面皮」の由来といわれています。
また、「鉄面皮」は、太宰治の著書『鉄面皮』や、コミック『恋する鉄面皮』などにも、その言葉が使われていますので、言葉だけは耳にしたことがあったという人もいるかもしれませんね。
ここまでで「鉄面皮」の基本的なことを学びましたが、最初は「鉄面皮」を「鉄仮面」と混同していた人もいたのではないでしょうか。同じような漢字が並んでいるので、勘違いしやすいですが、「鉄面皮」と「鉄仮面」は、意味が全く違う言葉です。
「鉄面皮」が厚かましいことを意味する言葉であるのに対し、「鉄仮面」は、表情の変化を出さないので、何を考えているかわからない人のことを指します。
「鉄面皮」の使い⽅を例⽂でチェック
ここからは、「鉄面皮」の使い方を具体的に例文で確認していきましょう。
1:彼女の厚かましさを見ていると、「鉄面皮」という言葉が思い浮かぶ
あまりにも厚かましい行動をしていると、その姿から「鉄面皮」という言葉が浮かんでくるかもしれません。「鉄仮面」というイメージを持たれるような不名誉なことは避けたいものです。
2:そんな自分勝手な要求をするなんて、彼は「鉄面皮」ですね
恥を恥とも思わないような自分勝手な要求を平気な顔で行うと、「鉄面皮」と言われてしまうかもしれません。どんな些細なことでも相手を煩わせることには、謙虚な態度でお願いするようにしましょう。
3:無料の列に何度も並ぶなんて、そんな「鉄面皮」なことはできない
街角や商業施設で行われる新製品のサンプリングの列に、何度も何度も並ぶというような、他人のことなどは気にしない行為は、まさに「鉄面皮」です。
類語や⾔い換え表現にはどのようなものがある?
「鉄面皮」の類語にはどのようなものがあるか、紹介します。
1:厚顔無恥
「厚顔無恥」は、「こうがんむち」と読みます。「厚」、「顔」、「無」、「恥」という漢字で構成されており、それぞれの漢字から想像できるように、厚かましくて恥知らずなことを表す言葉です。「厚顔無恥」の「厚顔」は、面の皮が厚い様を表し、「鉄面皮」と同じ意味を持ちます。
2:面張牛皮
「面張牛皮」は、「めんちょうぎゅうひ」と読みます。「面張牛皮」も、それぞれの漢字から想像がつくように、面の皮が厚いことを表す言葉、厚かましいことの例えです。
3:恥知らず
「恥知らず」は、「恥」を「知らない」ということで、「恥を恥とも思わない」という意味を持つ「鉄面皮」の類語です。
4:野面皮
「野面皮」は、「のめんぴ」と読み、「鉄面皮」とほぼ同じ意味で使われます。
「鉄面皮」の英語表現は?
「鉄面皮」と似た意味を持つ英語表現についても学んでおきましょう。「鉄面皮」の意味する厚かましさ、図々しさは「impudence」、「impudent」という英単語で表すことができます。「impudence」は名詞、「impudent」は形容詞です。
1:What impudence(なんて図々しいんだ)
「What impudence」は、図々しさに驚いた時に発せられる表現です。
2:She showed impudent behavior(彼女は厚かましい振る舞いを見せた)
「She showed impudent behavior」の「behavior」は、振る舞い、態度、素行という意味を持つ名詞です。動詞で表す場合は、「behave」を使います。
3:I can’t stand her impudent behavior(彼女の「鉄面皮」が我慢できない)
「can’t stand ~」は、「我慢できない」というイディオムです。便利な表現なので、覚えておくと表現の幅が広がります。
最後に
あまり耳にしない言葉ですが、陰で「鉄面皮」と言われていたら、自分の日頃の行いを見直してみる必要があります。「鉄面皮」はかなりダメージの大きな評価、悪口に近いものだと言えます。「鉄仮面」のほうがまだマシです。今一度、なぜ「鉄面皮」と言われるのかをよく考えてみましょう。また、今は大丈夫な人も、ふとしたことから「鉄面皮」と言われることのないように、日々の行いに気を付けることも大切です。