「一球入魂」の意味や読み⽅は?
皆さんは、「一球入魂」の意味についてご存じでしょうか? 何となく、球技系の部活のユニフォームや横断幕にプリントされている四字熟語というイメージがある人も多いでしょう。ここでは、「一球入魂」の意味や由来について紹介します。
読み⽅と意味
「一球入魂」は「いっきゅうにゅうこん」と読み、精神を統一して一球を投ずるという意味があります。元々は野球の試合などで使われていた造語ですが、いつしか野球以外の場面でも使われるようになりました。
「一球入魂」に含まれる「入魂」には、ある物事に精魂をかたむけること、魂を入れるつもりで懸命に取り組むことという意味があります。この「入魂」という言葉と、一球を投じるごとに全神経を集中させるという意味を組み合わせて生まれた造語が「一球入魂」であるといわれています。
精神を集中させて一球を投じるという意味を持つ「一球入魂」。選手の士気を高めるために、野球のみならずテニスやバレーボール、バドミントンなど、あらゆる球技系スポーツのモットーとして掲げられることが多くなったと考えられます。
由来
「一球入魂」は、野球の試合などで使われていた造語ということが分かりました。この「一球入魂」という四字熟語を生み出したのは、大正・昭和にかけて野球評論家として活躍した飛田穂洲(とびたすいしゅう)という人物です。
飛田穂洲は、早稲田大学卒業後、読売新聞社の記者を経て、同大学野球部の監督を務めた人物。早稲田大学野球部の創設者で、社会運動家の安部磯雄(あべいそお)が掲げた、「知識は学問から、人格はスポーツから」という教育方針にのっとり、独特かつ厳しい指導と訓練によって早稲田大学野球部の黄金期を築き上げました。
早稲田大学の野球部といえば、「東京六大学野球連盟」に所属している野球の強豪としてよく知られています。また、慶応義塾大学との早慶戦も毎回非常に盛り上がりを見せます。この、早稲田大学野球部の基礎を築き上げた人物が、飛田穂洲です。
監督引退後、朝日新聞社に入社した飛田穂洲は、野球評論家として精神野球を説き、1957年には紫綬褒章(しじゅほうしょう)を受章するなど、学生野球の発展に大いに貢献しました。その飛田穂洲が、精神野球を向上させ、選手の士気を高めるために生み出した言葉が、「一球入魂」です。
一生懸命に頑張るという意味を含む「一球入魂」は、今日においても様々な場面で使われるようになりました。
使い⽅を例⽂でチェック
では、「一球入魂」にはどのような使い方や言い回しがあるのか、例文を見ながら確認していきましょう。
1:「彼の一球入魂のピッチングが、試合の勝因だ」
彼の魂のこもった投球のおかげで試合に勝つことができた、という意味です。この例文では、「一球入魂」の由来である野球の試合での一場面を表す言葉として使われています。
2:「一球入魂で挑めば、そのプロジェクトはきっと上手くいくだろう」
真剣に取り組むことができたなら、プロジェクトは成功するだろうという意味です。先述の通り、「一球入魂」は野球評論家の飛田穂洲が生み出した造語ですが、現在では野球以外にも様々な場面で使われています。一生懸命に頑張るという意味として、大事な試合や発表前などで気合を入れたいという時にも使うことができます。
3:「一球入魂の気持ちで頑張ろう」
魂を込めるように、真剣な気持ちで頑張ろうという意味です。この例文では、自分自身または他者を励ますようなニュアンスで「一球入魂」が使われているのが分かります。「一球入魂」は、試合に出る選手の士気を高めるために使われていた言葉のため、ここぞという場面で相手を勇気づける応援メッセージとしても使うことができます。
類語や⾔い換え表現にはどのようなものがある?
では、「一球入魂」の類義語や言い換え表現にはどのようなものがあるでしょうか? それぞれの意味について確認しておきましょう。
1:全力投球
「全力投球」とは、全力を尽くしてボールを投げることという意味です。こちらも野球が由来となって生まれた言葉ですが、出せる限りの力を出して取り組むことという意味として、「一球入魂」と同じように広く使われるようになりました。
一球一球に魂を込めるつもりで投球するという意味である「一球入魂」と大変よく似ています。
2:全身全霊を注ぐ
「全身全霊を注ぐ」とは、持っている体力と精神力の全てを出し切るという意味です。あることに対して、全精力を注いで真剣に取り組むという意味として使われるため、「一球入魂」の言い換え表現として挙げられます。