「能ある鷹は爪を隠す」とは?
「能ある鷹は爪を隠す」ということわざは、誰でも一度は耳にしたことがある言葉でしょう。馴染み深い表現ではあるものの、正確な意味や語源、四字熟語での表現方法まで知らないかもしれません。本章では「能ある鷹は爪を隠す」の意味や語源、四字熟語での表し方などを詳しく解説します。知っている人も知らなかった人も、本章で確認してください。
■言葉の意味は?
「能ある鷹は爪を隠す」ということわざは、実力のある人ほどそれを公にはしない(ひけらかさない)、という意味の比喩表現です。人は自分の能力を他人に認めてもらいたいという欲求を、誰もが持っています。しかし真に優れている人は、このような欲求が赴くままに行動するのではなく、本当に必要なときだけ能力を発揮するでしょう。なお辞書に書かれている意味は、以下の通りです。
【能ある鷹は爪を隠す】のうあるたかはつめをかくす
実力のある者ほど、それを表面に現さないということのたとえ。
<小学館 デジタル大辞泉より>
■言葉の語源は?
言葉の語源は、鷹の特徴に関連しています。鷹は非常に鋭い爪を持っている鳥類です。しかし獲物を捕まえる瞬間までは、猫のようにその爪を内側に隠しています。そして獲物に接近する瞬間だけ爪を出し、一撃で仕留めるのです。
このような鷹の行動は、獲物を油断させて確実に捕まえるための知恵と考えられていることから、「能ある鷹は爪を隠す」といった言葉が生まれました。
■四字熟語で表現すると?
「能ある鷹は爪を隠す」ということわざは、「能鷹隠爪」といった四字熟語で表現することもできます。読み方は「のうよういんそう」です。ことわざの平仮名だけを除いた四字熟語であるため、文字の並びを見ただけでも、ことわざと同様の意味だと推測できるでしょう。
「能ある鷹は爪を隠す」の言い換え表現は?
「能ある鷹は爪を隠す」と似た意味で用いられる表現は、他にもいくつかあります。具体的には、以下3つの表現です。「能ある猫は爪を隠す」などは、鷹から猫に変わっただけなので、わかりやすいかもしれません。それぞれの意味について、本章で解説していきます。
・能ある猫は爪を隠す
表現も意味も似たことわざに「能ある猫は爪を隠す」というものがあります。鷹の代わりに猫が使用されており、「能ある鷹は爪を隠す」と同様の意味で用いられる表現です。
もはや説明不要かもしれませんが、猫も鷹と同様に、爪を隠せる動物です。また「獲物を捕まえるまで無闇に爪を見せない」という習性も、両者は共通しています。
・大賢は愚なるが如し
「大賢(たいけん)は愚(ぐ)なるが如(ごと)し」ということわざもまた、能ある鷹は爪を隠すと同様の意味をもつ言葉です。大賢とは「非常に賢明な人」のことであり、このような人は、自身の知識や才能を表面に見せません。そのため第一印象では「愚かな人」のように見えることを表しています。
周囲の緊張をほぐすために、あえてふざけて見せる人などが、これに当てはまるでしょう。
・食いつく犬は吠え付かぬ
「食いつく犬は吠え付かぬ」ということわざは「自信や実力がある者は、無駄に騒ぎ立てずに行動する」という意味を持ちます。勇敢な犬は無駄に吠えることなく、すぐに行動に移しますが、臆病な犬は吠えるだけで「噛みつく」というアクションは起こしません。このことから無駄に騒ぎ立てず、迅速に行動できる優れた人のことを表すようになりました。
「能ある鷹は爪を隠す」の反対語
「能ある鷹は爪を隠す」のように、優秀な人を表した表現もあれば、その逆の言葉も存在します。本章では「能ある鷹は爪を隠す」の反対語として、以下2つを紹介します。いずれも口先だけで、実際の行動には映さない人を指した表現です。それぞれの意味を本章で詳しく解説していきます。
・能なしの口たたき
「能なしの口たたき」は読んで字の如く、能なし=才能(能力)のない人ほど、無駄口だけはたたくといった意味です。能力の高い人ほど、自分自身が話すよりも人の話をしっかり聞くことに長けています。しかし人の話を聞かず、自分ばかり話す人ほど、実力が伴っていません。
仕事をしていると、このような人を度々目にするかもしれませんが、気にしなくても良いでしょう。
・吠える犬は噛みつかぬ
「吠える犬は噛み付かぬ」とは、「食いつく犬は吠え付かぬ」と逆の意味をもつことわざです。噛み付くという行動ができる犬は、無駄に吠えることがありません。しかし吠えてばかりいる犬は、実際にはただ吠えるだけです。臆病なので、吠えることで自分を強く見せる能力には長けていますが、行動に移すことはありません。
鷹にまつわるアレコレ
ここからは、ことわざに使われている「鷹」という動物について、もう少し詳しく解説していきます。鷹とはどのような動物なのか、また見た目がよく似ている「鷲(わし)」とは何が違うのか、本章で紹介していきます。鷹について深く知ることで、ことわざもより馴染み深いものになるでしょう。
・森の王者と呼ばれる鳥
鷹の中でも、オオタカは「森の王者」と呼ばれています。また日本でもよく見かけるクマタカの体長は、オスが72センチメートル、メスが80センチメートルほど。しかしタカのサイズには個体差があり、大きい個体では1メートルを超える個体もいます。
日本をはじめ、中国南部やヒマラヤなどに生息する鳥です。日本ではほぼ全国で見られ、山地の広葉樹林を生息地としています。主な獲物は小さなネズミ類やタヌキ、ヤマドリなどの動物です。鷹の種類は多く、確認されているだけでも220種類が存在します。
・鷲(わし)との違い
鷹とよく似た鳥に「鷲」がいます。模様や顔つきなども非常に似ていることから「どう違うのだろう」と感じる方も多くいらっしゃるでしょう。それもそのはずで、鷹と鷲は同じタカ目タカ科に分類される鳥です。
両者の違いは明確に定義されておらず、基本的には個体の大きさで区別しています。ただし、前述したように個体差が大きいため、判別するのは難しいかもしれません。
「能ある鷹は爪を隠す」を正しく使いこなそう!
「能ある鷹は爪を隠す」ということわざについて、正しい意味や言い換え表現、反対語について解説しました。また、鷹という動物がどのような鳥なのかもおわかりいただけたでしょう。優れた人は、その能力をひけらかすことなく、必要なときにのみ発揮します。本記事をご覧になったみなさんも、「能なしの口たたき」ではなく鷹を目指しましょう。
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