齟齬って何と読む?
この言葉、何と読むかわかりますか? 正解は「そご」です。一方、「そご」と聞いてこの漢字を正しく書ける人はそう多くはないでしょう。部首は「はへん」です。
難しく聞こえますが、ビジネスシーンではよく使われる言葉でもあります。本記事では、齟齬の意味や、類義語、対義語、使う際の注意点について解説していきます。ためらうことなく使える言葉にしてみてください。
齟齬とは
「齟齬」とは、物事がうまく合わないこと、特に計画や意図が他者と一致しない状態を指します。ビジネスコミュニケーションの中では、計画やコミュニケーションがスムーズにいかない際によく使います。
「齟」の「且」は、元々は供え物を載せる台のことで、歯の上にものを載せてかむという意味です。また、「齬」の「吾」は交互になるという意味で、歯が互い違いになる、かみ合わないという意味なので、ふたつ合わせてもかみ合わない、食い違うということになります。
齟齬と相違との違い
「齟齬」と「相違」は確かに似た文脈で使われることがあり、時として混同されることもありますが、明らかな違いがあります。
齟齬
齟齬は、何かが一致しない、合わない状態を指します。特に、計画や意図、期待などがズレている状態を指すことが一般的です。また、基本的に齟齬は、そのズレが問題を引き起こしている、または引き起こす可能性がある状況で使われます。
〈例文〉
1:チームメンバー間でのコミュニケーションの齟齬が、プロジェクトの遅れを招きました。
2:チーム内で意見の齟齬が見られ、結論を出すのが難しい状況が続いています。
3:顧客との契約内容に齟齬が生じ、再交渉を余儀なくされました。
相違(そうい)
一方で相違は、単にふたつのものや意見が異なっている状態を指し、それが必ずしも問題を生むわけではありません。相違は客観的な違いを表し、その違いがポジティブであったり、単なる事実であったりする場合もあります。
〈例文〉
1:ふたりの専門家の意見には相違があり、興味深い議論が繰り広げられました。
2:同じ事件でも、報道によって伝えられる内容に相違が見られます。
3:同じ製品でも、国によって仕様に相違があることがあります。
このように「齟齬」は何かがうまくいかない原因となる「不一致」を、「相違」は単なる「違い」を指すと理解すると、違いがはっきりするかもしれません。
齟齬の類義語
齟齬と同じような意味を持つ言葉にはどんなものがあるのか、一緒に見ていきましょう。
不一致
不一致は、物事が一致しない、合わない状態を指す言葉です。何かがほかのものや期待と異なる、もしくは予定とズレている状態を表現するのに使います。特に、期待や計画、規則などと現実が異なる場合に使うことが多いです。
〈例文〉
1:データと在庫の不一致で、お客様に正確な情報を提供できませんでした。
2:メンバー間で意見の不一致が見られ、方針を決めるのに時間がかかってしまいました。
3:製品の実際の性能と広告での内容に不一致があり、クレームが多発しています。
食い違い
食い違いは、意見や情報、認識などが一致せず、異なる状態を指します。何かが互いに合わない、誤解や認識のズレが生じている状況を表現するのに使います。人と人との間でのコミュニケーションや認識において、予期せず異なる結果や反応が出たときに用いられることが多いです。
〈例文〉
1:計画の方向性について、メンバー間で意見の食い違いが生じ、議論が白熱しました。
2:製品の発売日について、サイトと店舗で情報の食い違いがあり、混乱を招きました。
3:友人との待ち合わせ時間の認識に食い違いがあり、別の時間に到着してしまいました。
齟齬の対義語
齟齬と反対の意味を持つ言葉にはどんなものがあるのか、見ていきましょう。
一致
一致は、ふたつ以上の物事や意見が同じである状態を指します。何かが同じ方向を向いている、同じ結果や答えになる状況を表現する言葉です。特に、意見や情報、結果などが同じであることを強調する文脈で使用されます。
〈例文〉
1:チームメンバー全員の意見が一致し、プロジェクトの方向性が決まりました。
2:オンラインデータベースと紙の記録が一致し、誤りがないことが確認できました。
3:実験室で行ったふたつのテストの結果が一致し、仮説が確認されました。
合致
合致は、物事や意見が一緒である状態を指します。異なる要素や部分が同じ方向性を持って、同じ結果に結びついている状況を表現するのに使います。
〈例文〉
1:プロジェクトメンバー間で意見が合致し、新しい提案に全員が賛成しました。
2:フィールド調査と理論モデルの結果が合致し、研究が進展しました。
3:事件に関するふたりの目撃者の証言が合致し、警察は新しい手がかりを得ました。
齟齬を使うときの注意
齟齬はネガティブな印象を持たれることがあるため、この言葉を使う際は、注意が必要です。なぜなら、こちらが意図せず、相手に不快感を与えてしまう可能性があるからです。場合によっては、齟齬ではなく前述した類義語や、「ズレ」や「ギャップ」など、もう少しカジュアルな言葉を使って表現してみてもよいかもしれません。
ビジネスシーンで齟齬を生じさせないようにするには、十分なコミュニケーションを図ることはもちろん、具体的に伝える、記録を残す、といった基本的なことを心がけることが大切です。
まとめ
ビジネスシーンでのコミュニケーションは、デリケートな場合も多いです。言葉ひとつで相手の印象が変わることもあるため、齟齬を生じさせないよう、注意深く、そして相手を尊重したコミュニケーションを心がけたいですね。
執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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