感化とは?意味をご紹介
感化(かんか)とは、考え方や行動に影響を与えて、自然にそれを変えさせることを意味する言葉です。「感化を受ける」や「感化される」のように使います。
【感化】かんか
考え方や行動に影響を与えて、自然にそれを変えさせること。「兄の―を受ける」「映画に―される」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
例文1.感化を受ける
「感化を受ける」とは、特定の人や考え方などの影響を受け、自然と同じような考え方や行動をするようになることを意味します。いくつか例文をご紹介します。
・彼女は恋人の感化を受けている。
・彼が誰かの感化を受けていることは明らかだ。
・姉の感化を受け、次第に社交的に振る舞うようになった。
例文2.感化される
「感化される」とは、特定の人や考え方などから影響を受け、自然と同じような考え方や行動をするようになることを意味します。例文から、使い方を見ていきましょう。
・彼は周囲の人々に感化されやすい。
・彼女が感化されやすいのは、今に始まったことではない。
・友人に感化され、春からスポーツクラブに通うことにした。
感化と類似する表現を例文でご紹介
「感化」のように、影響を与えて、もしくは受けて、何らかの変化が見えることを指す言葉は少なくありません。たとえば、次の言葉を「感化」の代わりに使うことがあります。
それぞれの言葉の使い方や、感化とのニュアンスの違いについてご紹介します。
教授
「教授(きょうじゅ)」とは、学問や技芸を教え授けることです。また、児童・生徒・学生に知識・技能を授け、その心意作用の発達を助けることや、大学や高等専門学校などで研究職・教育職の最高位を指すこともあります。
きょう‐じゅ〔ケウ‐〕【教授】
[名](スル)
1 学問や技芸を教え授けること。「書道を教授する」
2 児童・生徒・学生に知識・技能を授け、その心意作用の発達を助けること。
3 大学や高等専門学校・旧制高等学校などで、研究・教育職階の最高位。また、その人。「大学教授」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・教え子たちに書道を教授する。
・教授したことは多いが、生徒たちを見ていると身についているとは思えない。
・子どもたちに教授する仕事は、困難は多いが、やりがいも多い。
「感化」は影響を受けて自然に変化することを指しますが、「教授」は意図を持って教えることを指します。また、「感化」は考え方や行動に変化が表れますが、「教授」は学問や技芸の習得・熟達に変化が表れる点も異なります。
教育
「教育(きょういく)」とは、ある人間を望ましい姿に変化させるために、身心両面にわたって、意図的・計画的に働きかけることです。また、知識の啓発や技能の教授、人間性の涵養(かんよう)などを図り、その人の持つ能力を伸ばそうと試みることも指します。
きょう‐いく〔ケウ‐〕【教育】
[名](スル)
1 ある人間を望ましい姿に変化させるために、身心両面にわたって、意図的、計画的に働きかけること。知識の啓発、技能の教授、人間性の涵養かんようなどを図り、その人のもつ能力を伸ばそうと試みること。「教育を受ける」「新入社員を教育する」「英才教育」
2 学校教育によって身につけた成果。「教育のある人」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・子どもの教育は、自分自身を教育するようなものだ。
・新入社員を教育する。
・彼は教育を十分に受けているはずだが、時折、驚くような無知な発言をする。
「感化」では影響を与える側に特別な意図があるとは限りませんが、「教育」は影響を与える側に明確な意図があり、その意図に沿って相手を変えることを指すときに使われる傾向にあります。
アドバイス
「アドバイス(advice)」とは、忠告や助言をすること、また、その言葉を指す言葉です。英語ですが、日本語の会話や文章にも広く浸透しています。
アドバイス(advice)
[名](スル)忠告や助言をすること。また、その言葉。「先輩としてアドバイスする」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・陶芸の先生が、色を重ねないようにとアドバイスをした。
・彼女は他人のアドバイスを聞き入れるような人ではない。
・新入部員たちに先輩としてアドバイスした。
「感化」では、相手に対して具体的な言葉がけを行うとは限りません。相手側が自発的に何かを感じたり、行動や考え方が変わったりします。一方、「アドバイス」は、相手に具体的な言葉がけを行うことや、相手に対する言葉そのものを指します。
薫陶
「薫陶(くんとう)」とは、徳の力で人を感化し、教育することです。香をたいて薫りを染み込ませ、土をこねて形を整えながら陶器を作り上げることから、時間をかけて丁寧に教育していく意味で使われています。
くん‐とう〔‐タウ〕【薫陶】
[名](スル)《香をたいて薫りを染み込ませ、土をこねて形を整えながら陶器を作り上げる意から》徳の力で人を感化し、教育すること。「薫陶のたまもの」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・彼が常に礼儀正しいのは、親の薫陶の賜物だと思われる。
・偏見のない価値観を持つように薫陶してきたはずだが……。教育とは難しいものだ。
・薫陶するという意識はなかったが、よい子たちに育ってくれた。
「感化」は悪い意味でも使われますが、「薫陶」はよい意味でのみ使われる言葉です。
洗脳
「洗脳(せんのう)」とは、その人の主義や思想を根本的に改めさせること(新しい思想を植え付けること)です。
せん‐のう〔‐ナウ〕【洗脳】
[名](スル)
1 共産主義社会における思想改造。中華人民共和国成立後の、旧体制の知識人などに対する強制的な思想改造を非難したbrainwashingに由来。
2 その人の主義や思想を根本的に改めさせること。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・彼はすでに洗脳されていて、何が正しいのかも判別できなかった。
・彼に愛されているというよりは、洗脳されているといったほうが的確だ。
・洗脳されて怪しい組織に入った。
「感化」はよい意味でも使われることがありますが、「洗脳」はあまりポジティブなニュアンスがありません。本人の意思を奪って教え込むニュアンスがあるため、使用するシチュエーションを選ぶ言葉です。
影響
「影響」とは、物事の力や作用が他のものにまで及ぶことや、また、その結果を指す言葉です。影が形に従い、響きが音に応じることから生まれた言葉とされています。
えい‐きょう〔‐キヤウ〕【影響】
[名](スル)《影が形に従い、響きが音に応じるの意から》
1 物事の力や作用が他のものにまで及ぶこと。また、その結果。「環境に影響を及ばす」「大勢に影響しない」「影響力」
2 影と響き。また、物事の関係が密接なこと。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・汚水をそのまま排水溝に流すと、環境に影響を及ぼしてしまう。
・彼女は兄の影響を強く受けている。
・彼は影響力のある人間だ。
「感化」は影響を受けて変わることを指す言葉ですが、「影響」は相手が変わったかどうかは問いません。ただし、いずれの言葉も、よい意味だけでなく悪い意味でも使うという点は共通しています。
感化と反対の意味を持つ言葉をご紹介
「感化」の反対の意味を持つ言葉としては、「感化されない」や「惑わされない」「影響を受けない」が挙げられます。
・偏った考え方の組織にいたが、彼はあまり感化されていないようだ。
・彼女は先輩の言葉に惑わされず、自分の意思で決定した。
・親の影響を受けない子どもはいるのだろうか。
状況に応じた言葉で「感化」を表現しよう
「感化」は、「感化を受ける」や「感化される」のように受身形で使うことが一般的な言葉です。相手に影響を与えるときは、「教育する」や「教授する」のほうが適切なこともあります。状況に応じた言葉を選び、正確にニュアンスを伝えるようにしましょう。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock