「勘案」を尊敬語として使う場合
「勘案」を尊敬語として目上の立場の人に使う場合は、名詞である「勘案」に「ご」を付け丁寧な表現にします。また、「勘案する」といった言い方は「れる」「られる」を使った表現に変更します。
ビジネスメールや会話で「勘案」を依頼するときは、以下のように「ください」「お願いいたします」などの表現も使いながら、失礼のない言い回しを心がけましょう。
・依頼している案件について先方がご勘案されたかどうか、もう一度確認してください。
・先日ご相談したプロジェクトの資料を添付いたします。内容について、ご勘案ください。
・予定しているイベントのスケジュールについて、ご勘案お願いいたします。
「勘案」を謙譲語として使う場合
自分が「勘案する」という行為を目上の人に伝えるときは、謙譲語を使用します。例えば、「うかがう」「いただく」なども謙譲語のひとつです。
あえてへりくだった表現にすることで、相手に対して敬意が伝えられます。謙譲語はメールや会話での使用機会が多い表現になるため、具体的な使い方をしっかりと確認しておきましょう。
・ご相談のあった件について、勘案させていただきます。
・資料を送付いただきありがとうございました。本日中に内容について勘案いたします。
「勘案」の類語や言い換え表現
「勘案」には、以下のような類語や言い換え表現があります。
いずれも物事を考えたり、思いをめぐらせたりすることを意味する言葉です。日常生活やビジネスシーンでは、場面に応じた言葉の選択が求められます。それぞれの例文も参考に、語句への理解を深めていきましょう。
勘定(かんじょう)
「勘定」は、物の数や金銭を数えることです。また、代金を支払うことも「勘定」と言い表します。
さらに「勘定」には、「物事をいろいろと考え合わせて出た結論」という意味合いも含まれます。「勘案」も考えることを意味する語句ですが、「勘定」は結論そのものを指す点が大きな違いです。
「勘定」は、先々に生じる事態を前もって見積もる際にも用いられます。意味合いが広いぶん、活用シーンの多い言葉といえるでしょう。
・実家の店で売上げを勘定するのは、いつも祖父の役目だった。
・ここの勘定は私が支払います。
・「うまくいけば全員が得をする」というのが、今回の施策における彼の勘定だった。
・当日は忙しくなりそうなので、列車の待ち時間を勘定に入れて行動する必要がある。
かん‐じょう〔‐ヂヤウ〕【勘定】
[名](スル)
1 物の数量、または金銭を数えること。「売上金の勘定が合わない」「人員を勘定する」
2 代金を支払うこと。また、その代金。「勘定を済まして店を出る」
3 他から受ける作用や、先々生じるかもしれない事態などを、あらかじめ見積もっておくこと。「列車の待ち時間を勘定に入れて行動する」
4 いろいろ考え合わせて出た結論。「うまくいけばみんなが得をする勘定だ」
5 簿記で、資産・負債・資本の増減、収益・費用の発生を記録・計算するために設ける形式。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
熟考(じゅっこう)
「熟考」は、念を入れよく考えることを意味します。「勘案」との違いは、物事についてよくよく考え抜く点です。以下のように、熟考することを「熟考を重ねる」と言い表すこともあります。
そもそも「念を入れる」には、間違いがないように気を配るという意味合いがあります。いろいろなことを考え、念入りに検討するシーンでは「熟考」という語句を活用してみてください。
・クライアントからの案件について熟考を重ねた。
・彼女にどのような声をかけるべきなのか、長時間熟考している。
・彼は正しい解答を導き出すのに2日間熟考した。
じゅっ‐こう〔ジュクカウ〕【熟考】
[名](スル)念を入れてよく考えること。熟慮。「熟考を重ねる」「熟考した上での行動」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
思慮(しりょ)
「思慮」とは、注意深く心を動かせ、考えることです。「勘案」との違いは、考えに心を配る点にあります。また「思慮」は以下のように、さまざまな言い回しが可能です。
・思慮深い
・思慮が浅い
・思慮に欠ける
思慮深いことは「深慮」(しんりょ)、浅いことは「浅慮」(せんりょ)と呼ぶこともあります。日常生活はもちろん、ビジネスでも「思慮」は必要です。ビジネスでは情報収集や分析、検討などの一連の行動が「思慮」に含まれます。
・彼女は思慮深い人だと周囲から言われている。
・彼が発した思慮のない言葉に失望してしまった。
・その仕事はいつも思慮深さが求められる。
・彼女の態度は思慮に欠けている。
し‐りょ【思慮】
[名](スル)注意深く心を働かせて考えること。また、その考え。おもんぱかり。「思慮が浅い」「思慮に欠ける言動」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
商量(しょうりょう)
「商量」は物事をいろいろと考え、推し量ることを意味します。「推し量る」とは、見当を付けたり推測したりすることです。また、他者と相談し考えることを「商量」と言い表すこともあります。
・このまま計画を進めるべきか、商量したいと思う。
・新しいプロジェクトについて商量する。
しょう‐りょう〔シヤウリヤウ〕【商量】
[名](スル)いろいろ考えて推しはかること。
「あらゆる返事は、…相手と自分を―して、臨機に湧いて来るのが」〈漱石・それから〉
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
千思万考(せんしばんこう)
「千思万考」は、何度も考えることを意味する四字熟語です。「千」と「万」は数が多いこと、「思」は細かいことを考えることを表しています。
また、考える行為だけでなく、そこから導き出した結論も「千思万考」という言葉で言い表します。
・千思万考の末、解決策を導き出した。
・千思万考しているが、なかなかいい案が思い浮かばない。
せんし‐ばんこう〔‐バンカウ〕【千思万考】
[名](スル)あれこれと思いをめぐらすこと。また、その思いや考え。千思万慮。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「勘案」の意味や使い方を知りビジネスで活用しよう
「勘案」には、複数の要素や情報を考え合わせるという意味があります。「考慮」や「考察」とは、ニュアンスが異なる言葉です。
物事への配慮が必要なシーンなど、場合によっては「考慮」という言葉が適しています。物事を明らかにすることが目的の場合は「考察」という表現を検討してみてください。
また、ビジネスで用いる機会の多い「勘案」は場面に応じた敬語表現が必要です。「ご勘案ください」、「勘案いたします」のように場面に応じて使い分けながらビジネスで活用していきましょう。
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