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「脆弱」とは?正しい意味と読み方
「脆弱」とは、もろくて弱いことを意味する言葉です。「ぜいじゃく」と読み、日常会話のみならずIT業界などでも用いられます。
【ぜいじゃく】ぜい‐じゃく
[名・形動]もろくて弱いこと。また、そのさま。「—な地盤」「—な神経」
[派生]ぜいじゃくさ[名]
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
そもそも「脆い」(もろい)とは、もとの形や状態などが崩れやすいことです。そのため、「脆弱」という言葉は、「脆弱な地盤」「脆弱な壁」のように用いられます。
また、「脆い」には持ちこたえる力が弱かったり、感情に動かされやすかったりという意味も含まれることから、「脆弱」は「脆弱な神経」のように気持ちを表す語句としても使用できます。
「脆弱」の熟語や慣用句
「脆弱」には、以下のような熟語や慣用句があります。
「脆弱性」は、IT業界での使用頻度が多い言葉です。また、「脆弱国家」はある一定の性質を持つ国に対して用いられます。ここでは正しい意味と共に、それぞれの語句について理解を深めていきましょう。
脆弱性
「脆弱性」という言葉は、「脆弱」と同様に脆い性質を表すだけでなく、コンピューターネットワークにおける安全上の欠陥を指す際に用いられます。
【脆弱性】ぜいじゃく‐せい
1. もろくて弱い性質または性格。
2. コンピューターネットワークにおける安全上の欠陥。オペレーティングシステムやアプリケーションソフトのバグ、開発者が予期しなかった利用方法などにより、悪意のある第三者によってコンピューターウイルスに感染させられたり、不正アクセスの被害にあったりするおそれがあること。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
安全上の欠陥とは、不正行為のために利用されやすいシステム上の問題点のことです。バルネラビリティ(vulnerability)とも呼ばれることもあります。
脆弱性を狙われトラブルが生じれば、企業の信用問題にかかわります。情報セキュリティの観点でも「脆弱性」は重要視したいポイントです。ITにおける「脆弱性」については、後の章でも詳しく解説します。
脆弱国家
脆弱国家(ぜいじゃくこっか)とは、治安維持や公共サービスの提供など、本来国家が果たすべき役割が困難な国のことです。主に、政府の施策が国全体に及ばず、国民からの信頼が失われている国に対して用いられます。
NGO組織平和基金会による、脆弱国家のランキング「Fragile States Index 2024」によると、脆弱国家の上位3位は「ソマリア」「スーダン」「南スーダン」が占めています。日本の順位は、179位中160位です。
最下位(179位)である「ノルウェー」は、もっとも脆弱性が弱く、持続可能な国家だと判断されています。
(参考〈「グローバルデータ | 脆弱国家指数」〉より)
「脆弱」の類語や言い換え表現
「脆弱」には、以下のような類語や言い換え表現があります。
いずれも「脆弱」のように、脆さや弱さを表す言葉です。「脆弱」と近しい意味を持つ一方で、細かなニュアンスの違いがあります。
シーンによっては「脆弱」ではなく、類語や言い換え表現のほうが適している場合があります。それぞれの意味や使用例などを知り、使い分けの参考にしてください。
軟弱(なんじゃく)
「軟弱」という言葉は、質がやわらかく弱いことを意味します。「脆弱」のように、「軟弱な地盤」「軟弱な壁」のように用いられる表現です。
「脆弱」との違いは、「意志がしっかりしていないさま」を表すことです。以下のように、態度が弱かったり、相手の言いなりになりやすかったりすることも「軟弱」に当てはまります。
・プラモデルが完成したはいいが、組み立てが軟弱ですぐに傾いてしまった。
・その地域では軟弱な地盤が問題となっている。
・彼は意志が軟弱で、物事をすぐ決められない一面がある。
・商談時に軟弱な態度をとっていると、先方に不安感を与えてしまうよ。
華奢(きゃしゃ)
「華奢」は、器物などの作りが頑丈でないさまを意味します。弱さや脆さを表す点は、「脆弱」と同様です。
また、「華奢」は姿かたちがほっそりして、上品に感じられる様子も表します。上品なだけでなく、華やかな状態にも用いる言葉です。
以上のように、「華奢」には複数の意味があることを理解したうえで、日常生活では次のように活用してみてください。
・その机は華奢な作りで今にも傾いてしまいそうだった。
・ピアニストは華奢な指で力強い音楽を奏でた。
・演者の華奢な姿が観客の目を引いた。
虚弱(きょじゃく)
「虚弱」も「脆弱」のように弱さを表す言葉です。「脆弱」との違いは、主に力や勢い、体が弱いことを意味する点にあります。
例えば、介護を必要とするほどではないものの、日常生活の一部に介助を必要とする高齢者は「虚弱高齢者」と呼ばれます。また「虚弱児」は、体の弱い児童や生徒を意味する言葉です。
モノではなく体の弱さを表す際は、「虚弱」という言葉の選択を検討してみてください。
・確かな根拠が示せない限り、その考えは虚弱だと言わざるを得ない。
・姉は生まれつき虚弱な体質だった。
・体が虚弱だと気温の変化の影響を受けやすい。
薄弱(はくじゃく)
「薄弱」も「虚弱」のように、体力が弱いことを意味する言葉です。また、意志が弱いことやその様子も表します。
さらに「薄弱」には、「あいまいではっきりしない」という意味合いがあります。
以下のように物事の状態が脆く弱いだけでなく、あいまいさを有する場合は「薄弱」という言葉を当てはめてみましょう。
・彼の主張は薄弱で採用するには至らなかった。
・すぐに決断できないところに意志の薄弱さを感じた。
・根拠が薄弱な議論をいくら重ねても意味がない。
「脆弱」と反対の意味を持つ語句「強靭」
脆さや弱さを表す「脆弱」と反対の意味を持つ語句には、「強靭」(きょうじん)が挙げられます。
「強靭」とは、しなやかで強いことです。また、柔軟で粘り強いことも意味します。
「強靭」の類語には「タフ」や「たくましい」などが挙げられることからも、「脆弱」と対極の意味を持つことがわかります。日常生活では以下のように「強靭な肉体」、「強靭な意志」のように用いることが多いでしょう。
・何度失敗しても諦めない姿に、彼の強靭な意志を感じた。
・スポーツ選手の強靭な肉体は日々の鍛錬のたまものだといえる。
・新製品には従来にはない強靭な素材を使用している。
「脆弱」を使った例文
ここからは、例文を参考に「脆弱」の使い方を確認していきましょう。「脆弱」には、さまざまな類語が存在します。それらとの違いをふまえたうえで、ビジネスや日常生活で活用してみてください。