妬心(としん)
「妬心」は字のとおり、妬む気持ちを表す言葉です。そもそも「妬む」とは、他者が自分より優れていることを羨ましく思って憎んだり、男女間のことで嫉妬をしたりすることを意味します。
また、「妬む」には「腹を立てる」という意味も含まれます。そのため「妬心」は、「羨望」が持つ「羨ましい状態への不満感」がより強いときに適した表現といえるでしょう。
と‐しん【妬心】
ねたむこころ。嫉妬心しっとしん。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
やっかみ
「やっかみ」は、主に関東地方で用いられる表現です。「やっかむ」ということもあり、主に羨んだり、妬んだりといった意味合いを持ちます。
「やっかみ」が指す妬みの対象は、「焼き餅」や「悋気」のように、男女間に限ったものではありません。
「やっかみ半分で噂をする」「人の成功をやっかむ」のように、仕事やプライベートなど、多様な関係に適した言葉といえます。
やっかみ
(主に関東地方で)うらやみ。ねたみ。「やっかみ半分でうわさする」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「羨望」を使った例文
「羨望」には「羨望する」のほか、「羨望の眼差し」(せんぼうのまなざし)、「羨望の的」(せんぼうのまと)などの言い回しがあります。
「羨望の眼差し」は、羨ましい気持ちで他者を見る際に適した表現です。「羨望の的」は、周囲から羨ましいと思われている状態を表します。
以上を踏まえ、日常会話では「羨望」という言葉を以下のように使用してみてください。
・私は彼女の優れた仕事ぶりを羨望している。
・彼女はいつだって仲間のなかで羨望の的だった。
・大きな成功を収めた彼に対し、その場にいた人たちは一斉に羨望の眼差しを向けた。
羨むことを意味することわざや四字熟語
以下のことわざや四字熟語は、「羨望」のように他者を羨むことを意味します。
ことわざや四字熟語は、その場の状況や自分の感情を端的に言い表したいときに適しています。ここでは、それぞれの意味とともに使用例を確認していきましょう。
亀の年を鶴が羨む(かめのとしをつるがうらやむ)
「亀の年を鶴が羨む」とは、千年の寿命を持つといわれる鶴が、万年の寿命を持つ亀を羨ましがることを表したことわざです。
「鶴は千年亀は万年」(つるはせんねんかめはまんねん)ということわざがあるように、どちらも長寿の象徴とされています。そのことから、「亀の年を鶴が羨む」は、人の欲には限りがないことを言い表しています。
・人の願望にはきりがない。足ることを知らず、亀の年を鶴が羨む人間ばかりだ。
・彼のように亀の年を鶴が羨むようでは、どれだけ成功を収めても満足できないだろう。
隣の芝生は青い
「隣の芝生は青い」は、他人のものは何でも良く見えることを表したことわざです。語源は海外のことわざ「The grass is always greener on the other side of the fence.」にあります。
似た意味のことわざには「隣の花は赤い」「隣の糂粏味噌 (じんだみそ)」などが挙げられます。糂粏味噌とはぬかみそのことで、こちらも隣の味噌のほうが香ばしく感じられるように、よそのものは何でも良く見えることの例えです。
・友人の活躍ぶりに転職が頭をよぎるが、今は隣の芝生が青く見えているだけなのかも、と考えてしまう。
瞻望咨嗟(せんぼうしさ)
「瞻望咨嗟」の「瞻望」は、はるかを仰ぎ見て慕うことを意味します。「咨嗟」はため息をつくことです。2つを組み合わせることで、高貴な人をなどを敬いつつ、ため息をつくほど羨む様子を表しています。
以下のように、自分では到底手の届かない人や状況を羨む際に用いることが多いでしょう。
・絢爛豪華な結婚式に、瞻望咨嗟の念を抱くばかりだった。
・自分とは状況の違う見知らぬ人に対し、瞻望咨嗟を抱いても仕方がない。
法界悋気(ほうかいりんき)
「法界悋気」とは、自分に関係のない人に対して嫉妬することです。他人の恋を妬むことも意味します。
「羨望」の類語に登場したように、「悋気」とは嫉妬心のことです。また、「法界」は「ほっかい」とも読み、自分とは無関係な人を意味します。
・芸能人の恋愛ニュースに対して法界悋気を抱いても仕方がないよ。
・関わりない人の出世に法界悋気を抱くより、その時間を勉強にあてよう。
「羨望」の意味と使い方を知り会話の幅を広げよう
「羨望」は、他者への羨ましい気持ちを表す言葉です。また、羨ましいだけでなく不満を抱く際にも適しています。
似た意味を持つ言葉には「嫉妬」がありますが、こちらは自分が好意を持つ人の愛情が、他者に向くことに対する妬みを言い表します。
日常会話では「羨望」の意味や類語などについて知ったうえで、正しく活用していきましょう。
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