職場見学
職場見学の機会を設けることで、学生に企業の雰囲気や社員の働き方を体感してもらうことができます。多くの場合、オフィスツアーの形式で行われ、各部署や会議室、休憩スペースなどを巡るのが一般的です。
デスクの配置や社内の様子から、組織文化や働き方の特徴を伝えられるほか、最新の設備や技術を紹介することで、企業の先進性なども理解してもらえるでしょう。
ただし、機密情報や個人情報の保護の観点から、見学に適していない場所もあるため注意が必要です。
ワークショップ
ワークショップは、学生の積極的な参加を促す重要なプログラムです。たとえば、企業の課題解決や製品開発などをテーマに、グループワークやディスカッションを行うことも少なくありません。
マーケティング戦略の立案や新商品のアイデア出しなど、実際の業務に近い内容を体験してもらうといったケースもあります。参加した学生が企業の業務内容をより具体的に理解し、自分の適性を確認できるような機会を与えることが大切です。
また、企業にとって学生の発想力や協調性が観察できる機会は貴重であり、活用すれば大きなメリットとなるでしょう。社員がファシリテーターとして参加することも多いため、学生と社員の交流を深める場にもなります。
オープン・カンパニーのメリット

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オープン・カンパニーがもたらす具体的なメリットを紹介します。それぞれの視点から、企業にとってどのように有益であるかを見ていきましょう。また、学生側のメリットについても触れています。
企業の認知度を高めることができる
オープン・カンパニーは、企業の認知度を高める効果的な手段です。学生に自社を知ってもらう絶好の機会となり、後の採用活動に大きな影響を与えることができます。
特に知名度の低い中小企業にとっては、企業説明や職場見学、社員との交流などを通じて、学生に自社の魅力を直接伝えるチャンスです。強く印象に残れば、就職活動の際に自社を選んでもらえる可能性が高まります。
社長・役員のサプライズ出演や興味を引くワークショップの実施など、趣向を凝らし、よりポジティブな印象を与えることが大切です。
優秀な学生へ早めにアプローチできる
オープン・カンパニーは企業が優秀な学生に対し、早期にアプローチできる機会といえます。なぜなら、就活生だけでなく1、2年生などの採用候補者層にもアピールでき、将来の採用活動への道筋がつくれるためです。
直接的な交流を通じて、企業文化や働き方をいきいきと伝えられるのも大きな魅力のひとつでしょう。学生はオフィスツアーや社員との座談会を通じて、企業の雰囲気を肌で感じ取ることができます。これにより、自社のビジョンやバリューへの共感度を高められるのです。
社員のモチベーションアップにつながる
先述の座談会などを用いてオープン・カンパニーを実施すれば、社員のモチベーションアップや成長、企業全体の活性化が期待できる可能性があります。学生と交流することは社員らにとって、自身の仕事を振り返り、成長を実感する機会へつながるためです。
また、自社の魅力を伝える役割を担うことにより、責任感や誇りが芽生え、モチベーション向上へ直結するケースも珍しくありません。社員が企業理念や業務内容を改めて学び直す好機となり、仕事への理解が深まるほか、やりがいが再確認できるともいえるでしょう。
学生の新鮮な視点や質問に触れる機会が、社員自身の業務を客観的に見直すきっかけにもなり得るのです。
オープン・カンパニーの学生側のメリット
学生にとってのメリットは、なんといっても企業や業界への理解を深められる点です。事業や業務の内容、業界についての詳しい説明を受けられるだけでなく、先輩社員との質問会・座談会、職場見学などを通じて、より具体的なイメージがつかめます。
学年を問わず参加できるプログラムが多いのも魅力です。低学年から計画的に参加することで、将来の方向性を早期に定められる可能性があります。同じ業界の複数企業のオープン・カンパニーへ参加すれば、自己適性や興味関心が明確になるでしょう。
また、オープン・カンパニーは基本的に1日で完結するため、学業との両立も容易です。多くの企業が平日の夕方や夜に開催するほか、オンラインで行われるケースも増えていることから、学生は負担なく参加できます。
オープン・カンパニーのデメリット

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メリットは存分にあるオープン・カンパニーですが、企業側にとってはいくつかの課題もあります。ここでは、3つの主なデメリットについて解説します。これらの課題を理解して適切に対応すれば、一層効果的に実施できるでしょう。
企業の魅力が伝わらないこともある
学生は社会経験が少なく、企業のビジネスや仕事の価値を理解しにくいといえます。そのため、単日のイベントでは、企業の魅力や本質が十分に伝わらない可能性があるのです。
また、魅力を伝えようとするあまり自慢話のようになり、学生が興味を失ってしまうこともあるため注意が必要です。
効果的に惹きつけるためには、順を追ってアプローチする必要があります。たとえば、導入では企業が利益を得る仕組みについて説明し、続いて組織構造を紹介、最後に日々の仕事内容を具体的に伝えるといった内容にすると、学生の理解を深められるでしょう。
オンライン開催やワークショップ、実務体験など、工夫を凝らした人気企業の事例を参考にするのもおすすめです。
個人へのアピールが難しい
多数の学生に向けて情報を発信するため、個々の学生へのアピールが難しいという課題があります。殊に大規模なイベントの場合、ひとりひとりと深いコミュニケーションを取ることは時間的にも物理的にも困難です。
集団形式での情報提供や交流に頼らざるを得ないため、ターゲットを明確にし、自社への興味や関心を高めるアイデアが必要です。一例ですが、グループワークやQ&Aセッションを取り入れて双方向のコミュニケーションを促進すると、個々の学生の理解度や反応を把握しやすくなります。
学生情報を採用活動に利用できない
学生情報を採用活動に利用できない点もデメリットといえるでしょう。2025年卒採用から適用される新しいインターンシップ類型では、オープン・カンパニーに参加した学生の情報を採用活動に活用することが禁止されているのです。
学生の適性や能力を早期に見極めて採用につなげることが難しいため、企業はオープン・カンパニーの内容を一層充実させ、自社の魅力を徹底的に伝える必要があります。
その際の手段としておすすめしたいのは、業界の将来性や自社の独自性を強調したり、社員との対話の機会を増やすことです。就職に迷う学生の興味を引き出し、後の採用活動につなげられるでしょう。
オープン・カンパニーを行う際のポイント

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オープン・カンパニーを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。印象に残る内容にするため押さえておきたいことを紹介します。
学生目線になり、わかりやすく伝える
オープン・カンパニーを成功させるためには、学生目線で考えることが重要です。学生は社会経験が少ないため、専門的な内容をいきなり説明されても理解できません。そういった事情を考慮し、ビジネスをわかりやすく噛み砕いて説明する必要があるのです。
学生の興味を引くコンテンツを準備することも意識しましょう。採用サイトでは得られない限定情報を提供したり、経営層との特別な対話の機会を設けたりするのもおすすめといえます。
学生から見てわかりやすく興味を持てる内容にすることで、自社の魅力が伝わり、優秀な人材の獲得へ結びつくのです。
企業情報に加え、業界の情報も提供する
特定の企業だけでなく、業界全体の動向や将来性にも強い関心を持っている学生は少なくありません。自社を選ぶメリットについて紹介するに留まらず、業界の現状や課題、今後の展望などを包括的に伝えると参加者の理解度も向上します。
たとえば、業界のトレンドや技術革新・市場規模の推移などを説明し、その中での自社の位置づけを示せば、一段と具体的なイメージを持ってもらえるでしょう。また、業界特有の課題や社会貢献の機会について触れると、学生の問題意識や使命感を刺激できます。同業他社との比較や協業関係なども紹介しておけば、さらに業界全体の構造を理解しやすくなるはずです。
このように、広い視野で情報を提供することによって、学生は自身のキャリアを考える上で貴重な洞察を得られます。
座学以外のプログラムを取り入れる
学生の興味を引き深い理解を促すためには、座学だけでなく、多様なプログラムを用意することが重要となります。現在は、業務を疑似体験できるプログラムなどが人気のようです。
職場見学は、働く環境や雰囲気を肌で感じてもらえる有益な時間となります。また、ビジネスの仕組みや仕事内容を楽しく学べるゲームや自己分析、ビジネスコミュニケーションを深めるワークショップなども効果的です。
これらのプログラムを座学と組み合わせて用意すれば、学生の企業理解度を高め、将来のキャリアを考えるきっかけを提供できます。
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