Summary
- 「天王山」とは勝負の分かれ目を表す言葉。
- スポーツ・ビジネス・受験・政治など多岐にわたり使われる。
- 「裏天王山」や類語も存在し、文脈で使い分けが可能。
「天王山」という言葉は、ビジネスやスポーツなどの場面で「勝負の分かれ目」を表す際に使われることが多いでしょう。しかし、その由来や本来の意味を正しく理解している人は、それほど多くないかもしれません。本記事では、「天王山」の背景や活用方法を見ていきます。
「天王山」の意味とは? 由来と歴史から考える
まずは、「天王山」の意味を確認し、起源とされる戦いについて振り返ります。
天王山の意味
「天王山(てんのうざん)」という言葉には、2つの意味があります。1つは、京都府南部・大山崎町にある小高い山の名称です。もう1つは、そこに由来する比喩表現で、「勝敗や運命を左右する重大な局面」を指します。
辞書では次のように解説されています。
てんのう‐ざん〔テンワウ‐〕【天王山】
一京都府南部、乙訓郡大山崎町にある小丘。淀川の分岐点にあり、古来水陸交通の要地。天正10年(1582)山崎の戦いで、羽柴秀吉が明智光秀を破った。
二《一の故事から》勝敗や運命の重大な分かれ目。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
現在では、スポーツやビジネス、政治などさまざまな場面で、「ここが天王山だ」といった言い回しが使われています。
「天王山」の由来と歴史的背景
「天王山」という言葉が比喩として使われるようになった背景には、1582年に起こった「山崎の戦い」があります。この戦いは、本能寺の変で織田信長が倒れた後、羽柴(豊臣)秀吉と明智光秀が争った合戦です。戦場となったのが、現在の京都府大山崎町にある天王山周辺でした。
この地は淀川の流域に位置し、交通の要衝として知られていました。戦略的にも重要な場所だったため、秀吉軍は戦闘前に天王山を素早く押さえ、戦局を優位に進めたといわれます。その結果、明智軍は不利に追い込まれ、最終的に敗北。これが秀吉の台頭を決定づける契機となりました。
このように、戦局を左右する重要な地点だった「天王山」の名が、「運命の分かれ目」を象徴する言葉として広く使われるようになったのです。

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「天王山」の使い方を例文でチェック
比喩表現としての「天王山」は、日常会話から報道・ビジネスシーンまで幅広く使われています。特に「ここが勝負どころ」「結果を大きく左右する局面」といった場面で用いられ、その緊張感や重要性を際立たせる言葉です。
以下に、さまざまなシーンでの「天王山」の使い方を例文とともに紹介します。それぞれの文脈で、どのような意味合いが込められているのかもあわせて確認してみましょう。
「この試合はリーグ優勝をかけた天王山だ。絶対に負けられない」
プロ野球やサッカーなどでよく使われる言い回しです。優勝や順位決定に大きく関わる重要な一戦を「天王山」と表現します。
「この交渉がまとまるかどうかが、プロジェクト成功の天王山になるだろう」
ビジネスシーンでは、交渉・契約・プレゼンなど、プロジェクトや取引の成否を左右する重大な局面を指して使います。
「夏休みは受験勉強の天王山。ここでどれだけ頑張れるかが合否を分ける」
受験勉強や資格試験などにおいて、特に重要な学習期間(例:夏休み、直前期)を「天王山」と表現することで、その時期の重要性や集中すべきタイミングであることを強調します。
「今回の参議院選挙は、与党にとって天王山となるだろう」
選挙や政策の分岐点となるタイミングを表す際にも使います。結果がその後の政局や支持率に大きく影響を与えると考えられる場面で用いられることが多いでしょう。
「今日のデートが彼との関係を進展させるための天王山だと思って、気合いを入れた」
ややカジュアルな文脈では、恋愛や人間関係において「勝負をかける瞬間」や「結果を左右する場面」を天王山と表現することもあります。
「裏天王山」とは?
「裏天王山」とは、スポーツの文脈で用いられることがある、比喩的な表現です。特にリーグ戦において下位チーム同士が対戦し、残留や降格、順位を左右する試合のことを指します。これは、上位チーム同士の優勝争いを「天王山」と呼ぶのに対し、その対極として位置づけられています。「裏天王山」は、主にサッカーやプロ野球の報道やファンの間で使用されたりしていますよ 。
「裏天王山」の他にも、「裏クライマックスシリーズ」や「天保山(てんぽうざん、大阪市にある低い山。天王山と語感が近いことから使われる)」といわれることもあります。

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「天王山」の類語や言い換え表現は?
「天王山」と似た意味を持つ類語や言い換え表現は、いくつか存在します。場面や文脈によって使い分けることで、表現の幅が広がりますよ。以下に、「天王山」と近い意味を持つ言葉を3つ紹介します。

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正念場(しょうねんば)
「正念場」は、「ここぞ!」という大切な場面を指します。最も肝心なところを指す際に適していますよ。
勝負所(しょうぶどころ)
「勝負所」は、勝敗の決まる大事な場面や局面を指します。競技や勝負事だけでなく、ビジネスや人生の節目にも使われることがあるでしょう。
大一番(おおいちばん)
「大一番」は、競技全般で優勝や王座の決定などを左右するような大事な取組みや試合を指します。特に相撲で使われることが多いです。
最後に
- 「天王山」は、勝負や運命の分かれ目となる重要な局面を表す言葉です。
- スポーツやビジネス、受験、政治など、幅広い場面で使われています。
- 「正念場」や「勝負所」などの類語も知っておくと便利です。
「天王山」という言葉は、戦国時代の戦いに由来しながらも、現代では比喩表現として幅広く使われています。スポーツ、ビジネス、日常のさまざまな場面で「ここが勝負どころだ!」と感じる瞬間に、この言葉を用いることで、状況の緊迫感や重要性を的確に表現することができます。
何気なく使われる言葉にも、過去の出来事や文化が息づいている——そんな視点を持つと、日本語の面白さがより一層感じられるかもしれません。
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Domani編集部
Domaniは1997年に小学館から創刊された30代・40代キャリア女性に向けたファッション雑誌。タイトルはイタリア語で「明日」を意味し、同じくイタリア語で「今日」を表す姉妹誌『Oggi』とともに働く女性を応援するコンテンツを発信している。現在 Domaniはデジタルメディアに特化し、「働くママ」に向けたファッション&ビューティをWEBサイトとSNSで展開。働く自分、家族と過ごす自分、その境目がないほどに忙しい毎日を送るワーキングマザーたちが、効率良くおしゃれや美容を楽しみ、子供との時間をハッピーに過ごすための多様な情報を、発信力のある個性豊かな人気ママモデルや読者モデル、ファッション感度の高いエディターを通して発信中。
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