ビジネスシーンで「頑張ります」は使っても大丈夫?

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丁寧語の「頑張ります」は、ビジネスシーンでも活用できる言葉。しかし、何の気なしに使っていると、時と場合によっては誤解を受ける可能性があるため注意が必要です。
まずはじめに、「頑張ります」を使うときの注意点を解説します。注意点を知っているのと知らないのとでは、言葉の見え方が大きく変わってくるため、よく理解しておきましょう。
使えるが、使用の際には注意も必要
「頑張ります」は、与えられた仕事や課題に向かう熱意を表現する際に使う言葉です。丁寧語の助動詞「ます」で終わっていることから、ビジネスシーンでも問題なく使えます。
がん‐ば・る〔グワン‐〕【頑張る】
[動ラ五(四)]《「が(我)には(張)る」の音変化、また「眼張る」の意からとも。「頑張る」は当て字》
1. 困難にめげないで我慢してやり抜く。「一致団結して―・る」
2. 自分の考え・意志をどこまでも通そうとする。我がを張る。「―・って自説を譲らない」
3. ある場所を占めて動かないでいる。「入り口に警備員が―・っているので入れない」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
ただし、ビジネスシーンで安易に使っていると、状況次第ではやや稚拙な印象を持たれかねません。「頑張ります」は小学生でも使える言葉であるため、使い方次第では悪目立ちしてしまうおそれもあります。フォーマルな場面では、ほかの言葉に言い換えたほうが賢明といえるでしょう。
また、「頑張ります」という言葉を使うときは〝思考停止に陥っている〟と思われかねない点にも注意が必要です。抽象度が高い言葉であるために、「とりあえず『頑張ります』と言えばいいと思っているのだろう」と捉えられてしまう可能性があるのです。
さらには、多用にも注意が必要です。繰り返し「頑張ります」という言葉を発すると、不誠実な印象を持たれてしまうリスクがあります。「頑張ります」を使うときには、ここぞというときにピンポイントで使うのが望ましいといえるでしょう。
文章の中で使うのは避けた方が無難
ビジネスシーンでも「頑張ります」は活用できるものの、使用は話し言葉に限定するのが適切といえます。書き言葉で仕事に向かう熱意を表したいなら、ほかの、よりフォーマルな表現を使うべきといえるでしょう。
話し言葉の「頑張ります」は、声のトーンや表情で相手に与える印象が大きく変わるのが特徴です。明るく元気な声で言えば仕事への情熱がストレートに伝わる一方で、暗くて弱々しい声ならば仕事に対する自信のなさが露呈してしまいますので要注意。
書き言葉で「頑張ります」を使った場合、前後の文脈によっては軽薄な印象を与えることも。文字でしか表現できない文章の中で、この5文字に熱量を込めるのは、実は難しいことなのです。
もっと、きちんと感のある表現を使ったほうが間違いなくやる気が伝わるため、わざわざ文章の中で「頑張ります」を使うメリットはほとんどないと考えられます。
ビジネスで「頑張ります」を使うときのポイント

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いくつかのポイントさえクリアすれば、ビジネスシーンであっても「頑張ります」を惜しみなく使うことができますので、そのコツを解説します。ポイントをしっかり押さえて、「頑張ります」を適切に使いこなしましょう。
具体的な言葉を添える
「頑張ります」という言葉が持つ「具体性のなさ」を補うためには、〝何をどのように頑張るのか〟を伝えることが大切です。追加すべき情報の例には下記のようなものがあります。
・どのようなアプローチで頑張るのか
・どのような目標を達成するために頑張るのか
・どのような計画で頑張るのか
例文は以下のとおりです。
【例文】
・顧客満足度の向上を図るために頑張ります
・売上を前年比で20%増やせるように頑張ります
・3年以内にFP1級を取得できるように頑張ります
このように具体的な表現ができれば、「頑張ります」を使っても「思考停止に陥っている」という印象を持たれずに済むはずです。
相手やTPOを選んで使用する
「頑張ります」はいつでも使える万能な言葉ではありません。相手もしくはTPOによっては、さらに礼儀正しい言い回しを使ったほうが適切なこともあります。
たとえば、同僚や友だちに仕事への熱意を語る場面では、「頑張ります」をたくさん使っても問題はないでしょう。しかし同じビジネスシーンであっても、上司や取引先の人を相手に自身のやる気を形容する場面では、意識して丁寧な表現を使ったほうが好印象を与えられます。
TPOを考えて使用する言葉を変えるのも大切です。自己紹介や朝礼などの場面で仕事への意気込みを表現する場合は「頑張ります」という言葉が適切であっても、大事なプレゼンや会議などの場面では、よりフォーマルな表現の方が自然です。
ビジネスシーンで使える「頑張ります」の言い換え表現

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上司や取引先の人に自分の熱意を伝えたいときは、「頑張ります」の言い換え表現が活躍します。ここでは、ビジネスシーンで使える「頑張ります」の言い換え表現を4つ紹介します。シーンに合った表現を使って、自分の熱意を的確に言い表せるようになりましょう。
尽力いたします
「尽力」とは、「持てる力を出し切って頑張る」「力の限り努力する」などの意味を持つ言葉です。「する」の謙譲語である「いたす」を付け加えて「尽力いたします」とすることで、仕事や課題に対する意気込みをフォーマルに表現できます。
「尽力いたします」を使った例文は以下のとおりです。
【例文】
・お客様の期待に応えられるよう、精一杯尽力いたします
・このプロジェクトを成功に導くため、微力ながら尽力いたします
・チーム一丸となって、目標達成に向けて尽力いたします
努めてまいります
「努める」とは、「物事に一生懸命取り組む」「努力して事を行う」という意味を持つ言葉です。謙譲語である「まいる」とつなげて「努めてまいります」とすれば、仕事や課題に対する熱意を表現できます。なお「つとめる」は、「努める」のほか「務める」と表記することもあります。
「努めてまいります」を活用した例文は以下のとおりです。
【例文】
・より高品質な製品の開発につなげるため、技術の向上に努めてまいります
・再発防止策を徹底し、信頼回復に努めてまいります
・部長のご期待に添えるよう、力の限り努めてまいります
最善を尽くします
「最善」とは、「できる限りのこと」や「ベスト」を表す言葉です。「あるものすべてを出し切る」を意味する「尽くす」とつなげて「最善を尽くす」とすることで、仕事や課題達成のために自ら持てる力のすべてを注ぎ込む意志を表現できます。
「最善を尽くします」を用いた例文は以下のとおりです。
【例文】
・この経験を生かし、次回はさらに最善を尽くします
・問題解決に貢献できるよう、最善を尽くします
・持てる力のすべてを発揮して、最善を尽くします
精進いたします
「精進」とは、ひとつの事柄に全神経を集中させて努力することを表す言葉です。「する」の謙譲語である「いたす」を付けて「精進いたします」とすることで、仕事の達成や課題の解決に力を尽くす心持ちを表現できます。メールや電話の締めくくり、新年の挨拶などで使われるケースが多い言い回しです。
「精進いたします」を使った例文は以下のとおりです。
【例文】
・一日も早くみなさまのお役に立てるよう、精進いたします
・今回の失敗を教訓に、今後はより一層精進いたします
・今後とも現状に満足することなく精進いたします
「頑張ります」は適切に使おう

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丁寧語である「頑張ります」はビジネスシーンでも活用できる言葉です。しかし「頑張ります」という言葉が適切ではない状況もあるため、使用する際には注意が必要です。
「頑張ります」を単独で使わないようにしたり、より丁寧なほかの言葉に言い換えるなど工夫が求められる場面があることを知っておけば、言葉使いでのミスも少なくなるはずです。ポイントをしっかり押さえて、「頑張ります」という言葉を適切に使えるようになりましょう。
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Domani編集部
Domaniは1997年に小学館から創刊された30代・40代キャリア女性に向けたファッション雑誌。タイトルはイタリア語で「明日」を意味し、同じくイタリア語で「今日」を表す姉妹誌『Oggi』とともに働く女性を応援するコンテンツを発信している。現在 Domaniはデジタルメディアに特化し、「働くママ」に向けたファッション&ビューティをWEBサイトとSNSで展開。働く自分、家族と過ごす自分、その境目がないほどに忙しい毎日を送るワーキングマザーたちが、効率良くおしゃれや美容を楽しみ、子供との時間をハッピーに過ごすための多様な情報を、発信力のある個性豊かな人気ママモデルや読者モデル、ファッション感度の高いエディターを通して発信中。
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