母性的な愛情を与えてもらえなかった
温かみのある対応、ハグなどの身体的接触といった母性的な愛情を受け取れなかったことが、母親と上手に関係を築けない原因になることも。
「自分自身も愛情不足、過剰なストレス状態など、母親にもそれができない事情があったのかもしれません。しかし、子どもは母性的な愛情を心の栄養にして育つので、それが得られないとさびしさや不安を感じやすくなります」(大美賀さん)
気持ちを汲み取ってもらえなかった
母親に自分の気持ちを汲み取り、寄り添ってもらえなかったということも、原因として挙げられます。
「母親に余裕がない、他人の気持ちに対応するのが苦手、ということも影響しているかもしれません。しかし、子どもは自分の気持ちを言葉で理解し、説明することができないので、言葉にできない気持ちを母親に気づいてもらい、その気持ちを大事に扱い寄り添ってもらうことを求めています。現実にはそれが100%満足にできる親などほとんどいませんが…」(大美賀さん)
親の求めることを行ったとき以外評価されない
「かけっこで一等賞をとると喜ぶが、そうでないと『なんで負けたの?』というがっかりした表情をする」「不平を言わずにきょうだいの面倒をみると喜ばれ、そうでないと『お姉ちゃんなのに』とがっかりされる」など、親の求めることを行ったときしか評価されず、それ以外のときはがっかりされたり無視されたり…。そうんな経験も、子どもが自分を出せなくなってしまう原因になるそう。
「こうしたことが続くと、子どもは親の求める結果を出せるよう、過剰に頑張るように。すると、本当に自分がやりたいことに取り組むチャンスを失ってしまいます」(大美賀さん)
【目次】
今後もうまく付き合う方法
様々な理由から、たとえ嫌いな母親でもまったく付き合わないわけにはいかない、という状況の人も多いかもしれません。今後もうまく付き合っていく必要がある場合、上手に関係を続けていく方法を大美賀さんに教えていただきました。
境界線を引く
大美賀さんによると、母親との間に「境界線を引く」ということを意識するのが大切とのこと。
「母親との間に精神的な〝境界線〟を引くとよいでしょう。境界線を引くことは突き放す、拒絶することではなく、個としての各々を尊重することです」(大美賀さん)
親子、家族と言っても、1人1人はまったく違う人間。それぞれの気持ちを大切にし、個人として尊重しあうことが必要です。具体的には、家族なんだからと何もかも責任を背負おうとせず、自分でできることは自分でしてもらうようにする、親との電話が負担なら、何時までとあらかじめ時間を区切っておく、同居しているなら、1人で出かけて自分だけの時間を作るようにする、など。自分の人生は自分のもの、親のものは親のもの、と適度な距離感を保つことが、ストレスを減らしていくことにつながります。
メンタルケアコンサルタント
大美賀 直子(おおみか なおこ)
公認心理師、精神保健福祉士等の国家資格を持ち、企業や大学等でのカウンセリング活動に従事。「こころと人生と人間関係」のベストバランスを提案するコンサルティング、執筆、講演活動も行っている。 総合情報サイトAll Aboutで「ストレス」のガイドを務め、現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法を解説。『働く私の「自分時間」』(アスカビジネス)、『心とカラダの磨き方』(PHP研究所)など、著書・監修多数。
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