【目次】
・ハンドリガードとは?
・なぜハンドリガードをするの?
・いつからいつまで?
・しない場合の原因や対処法とは
・ハンドリガードをしはじめた 気をつける点は?
・気になることがあれば専門家に相談を
ハンドリガードとは?
ハンドリガードは、赤ちゃんが成長・発達する過程で見られるしぐさのひとつです。ハンドリガードのやり方は赤ちゃんによって異なります。気にするママも多い利き手との関係性も理解しておきましょう。
自分の手をじっと見つめるしぐさ
ハンドリガード(hand regard)のリガードは「じっと見る」という意味をもちます。その意味のとおり、赤ちゃんが自分の手を見つめる行為を指しますが、ハンドリガードのスタイルは十人十色です。手をかざしながら動かしたり、指を口に入れたりするなど、赤ちゃんが自分の手に興味を示す行動をひっくるめてハンドリガードと呼んでいます。両手に関心をもつ子もいれば、片手だけにハンドリガードが見られる子も少なくありません。赤ちゃん特有の愛らしいしぐさとあって、一部始終を写真や動画におさめるママも多くいます。
赤ちゃんの利き手がわかるってほんと?
いつも同じ手でハンドリガードをしていると「そっちが利き手?」と気になってしまうかもしれません。ハンドリガードと利き手の関係性は明確ではありませんが、 指しゃぶりに関していえば、しゃぶる指=利き手になる可能性が示唆されています。利き手が固定されるのは3~4歳ごろといわれており、赤ちゃんがハンドリガードをする時点では利き手がまだ定まっていない状態です。赤ちゃんがどちらの手に興味を示すかは、そのときの気分や寝ているときの向きグセの影響が大きい(非対称性緊張頚反射により向いているほうの手を見やすい)とされています。
なぜハンドリガードをするの?
赤ちゃんがハンドリガードをするのは、脳・視覚・運動機能が順調に発達している証拠です。視界に入った自分の手に興味をもつことでハンドリガードが始まり、脳を働かせながら手や体の動かし方を学び、自分の体の境界やボディーイメージを認識していきます。
脳が発達したから
自分が手を動かすと目の前に見えている手も動くので、不思議に思ってじっと見つめているのです。視覚の働きなどをつかさどる「後頭葉」と、手の運動などをつかさどる「前頭葉」が働いている証拠です。手を口に入れる行為も「唇や舌で舐めている感覚」と「手を舐められている感覚」を同時に得て、舐めるとどうなるかを学ぶとともに、ここまでが自分の体だという境界を認識していきます。このように、ハンドリガードは、脳のエクササイズともいえる行為なのす。
視覚が発達したから
生まれて間もない赤ちゃんの視力は0.01~0.02程度で、目がほとんど見えていません。認識できる色も少なく、黒・白・グレーの無彩色に限られています。赤・黄・緑などの色が少しずつ認識できるようになるのは、生後1週間ごろからです。徐々に視力が発達して近くにあるものに焦点を合わせたり、動くものを目で追えたりするようになると、ハンドリガードが始まります。赤ちゃんは腕をW字型に曲げて寝ており、目の前にはいつも手がある状態です。視界に入ることが多いため、真っ先に興味がわく対象であると考えられています。
運動機能が発達したから
生後間もないころは首や手足の筋肉が発達していません。また、モロー反射や把握反射などの原始反射(生まれつき備わった反射的な反応)が残っていることによって、思いどおりに体を動かせません。向きたい方向に首を動かしたり、手足をバタバタさせたりと、動作の範囲や強さが大きくなってきたころにハンドリガードが見られるようになります。自分の意思で体を動かしてハンドリガードができるのは、原始反射が消失し筋肉が脳からの指令に反応する「随意運動」のメカニズムが整ってきた証です。手を前後左右に動かし実際にどう動くのかを目で観察することで体の動かし方を学び、手を閉じたり開いたりして指の筋肉を使っているのです。
いつからいつまで?
ハンドリガードが始まる時期は、赤ちゃんの成長速度によって大きく左右されます。期間も赤ちゃんによって異なり、早く終わる子もいれば長く続ける子もいるのが普通です。あまり神経質にならず「見られたらラッキー」くらいに思って、成長を見守りましょう。
生後3〜4カ月頃に始まるのが一般的
生まれて間もないころは、母乳やミルクを飲んだり排泄したりするときだけ目が覚めて、ほとんどの時間を寝て過ごします。ハンドリガードが始まるのは起きている時間が長くなり、視力が向上して自分の手を認識するようになる生後3~4カ月が一般的です。この時期は自分の手に限らず視界に入ってくるあらゆるものに興味を示すようになります。ハンドリガードをはじめる時期は、赤ちゃんが成長するスピードによっても大きく異なります。生後2カ月でハンドリガードをする子もいれば、生後5カ月ではじめる子もいます。生後6カ月でお座りができてから見られるようになるケースも少なくありません。
見られなくなる時期は?
ハンドリガードは赤ちゃんの成長過程で見られる現象のひとつにすぎません。心も体も目まぐるしく発達していくため、始まってから2~3カ月という短い期間で終わるケースが大半です。ハンドリガードの期間にも個人差があって、すぐに終わってママが見逃してしまうこともあれば、3カ月以上続ける赤ちゃんもいます。期間が短すぎたり長すぎたりして心配するママもいますが、赤ちゃん全員が同じ速度で成長するわけではありません。ハンドリガードの期間も人それぞれと思って、温かく見守りましょう。
しない場合の原因や対処法とは
ハンドリガードの有無にも個人差があります。ハンドリガードがなくても焦る必要はありませんが、手遊び歌などのスキンシップはハンドリガード同様に発育を促す効果が期待できます。視界に映る自分の体を触られる感覚や動く様子を見ることができるからです。歌に合わせて赤ちゃんの体をタッチしながら、親子のコミュニケーションを満喫してはいかがでしょう。
発達は個人差がある、焦らなくてOK
ハンドリガードの時期や期間が赤ちゃんによって異なるのと同じように、する子もいればしない子もいます。ハンドリガードをあまりしない赤ちゃんの場合は、ママが見ていないときにしている可能性もあります。興味を示すものは手だけに限らず、足を持ち上げるようになると視界に入ってきた足を見つめる「フットリガード」をすることもあります。原理はハンドリガードと同様です。自分の手足以外にも、目の前にあるものをじっと注視したり、口に入れて確かめようとしたりするのも、ハンドリガードと同様の発達過程です。ハンドリガードをしないからといって焦らず、個人差があると思っておおらかに構えましょう。
刺激を与えて好奇心をくすぐる
赤ちゃんが自分の手にあまり興味を示さないなら、スキンシップをとおして発育を促す手もあります。乳児期早期の赤ちゃんは自分の意思で自由に体を動かせませんが、大人よりも「触覚」が敏感です。手遊び歌やマッサージで刺激を与えることで、発育が促されるといわれています。スキンシップがきっかけで、自分で体を動かすことへの意欲や知的好奇心が芽生えることもあるかもしれません。スキンシップは親子関係をよりよくする大切なコミュニケーションでもあります。積極的に触れ合いを楽しめば、親子の絆も深まって一石二鳥です。
この時期の赤ちゃんにおすすめの手遊び歌
手遊び歌をすることで、視覚・聴覚・触覚が刺激を受けて、脳と体の発達が促されます。歌に合わせて赤ちゃんの全身をタッチしていると、その愛くるしい姿にキュンとするママも多いかもしれませんね。「あたまかたひざぽん」は、歌詞に出てくる部位をタッチするシンプルな手遊び歌で、テンポやタッチする部位をアレンジして楽しむこともできます。ほかにも「きゅうりができた」「らららぞうきん」など、赤ちゃんを身近なものに見立ててタッチやマッサージをする歌は、赤ちゃんもママも飽きずに楽しめます。
ハンドリガードをしはじめた、気をつける点は?
汚れた手を舐めてしまって、衛生面や感染症を心配するお母さんも多いことでしょう。これに対して、小児科医の生田陽二先生はこうアドバイスします。 「なめることは心配かもしれませんが、手が荒れるほどなめすぎたりしていなければ、神経質になる必要はないのでしょう。赤ちゃん自身の手が自分になめられているのを感じて楽しんでるんだな、くらいに受け止めましょう」。
赤ちゃんの手を清潔な状態に保つ
いろいろなところを触って汚れていないかぎり、舐めた手の不衛生に神経質になる必要はありません。気になるようなら、ウェットティッシュでふく程度でOKだそうです。
ミトンはしない方がいい?
ミトンをはめると手をなめる機会が奪われることから、発達によくないといううわさを聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。ミトンによる影響は医学的には根拠がなく、うわさ話がひとり歩きしているといえそうです。というわけで、手を口に入れてしまうからという理由でミトンを使用する必要はありません。肌荒れがひどく引っかかないようにするためなど、ほかの理由でミトンをする必要があるならば、自己判断せずに医師に相談しましょう。
気になることがあれば専門家に相談を
赤ちゃんによって成長速度に個人差があると頭ではわかっていても、心配してしまうのが親というものです。ハンドリガードのことで心配な点があれば、保健師や小児科医などに相談してみましょう。
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保健センターや小児科の活用も
ハンドリガードだけで発育の状態がわかるわけではありませんが、ちょっとでも気になることがあると不安になるママもいます。前向きな気持ちで赤ちゃんと向き合うためにも、子育ての専門家に相談するのも手です。乳児健診とも呼ばれている「乳幼児健康診査」では、発達や育児に関する相談を受け付けています。「地域子育て支援センター」や「児童発達支援センター」でも専門家からアドバイスを得られ、料金もかかりません。乳児期には、ハンドリガード以外にも不可解な動きが見られますので、てんかんなどの病気かどうかが不安な場合は「小児神経外来」、発達障害かどうか不安な場合は「相談外来」や「発達外来」などを活用してみるのも、一案です。
小児科医
生田陽二
東小金井小児神経・脳神経内科クリニック 院長
小児科専門医(指導医)、小児神経専門医、てんかん専門医
2007年北海道大学医学部卒業。東京都立小児総合医療センター神経内科、公立昭和病院小児科医長を経て2020年東小金井小児神経・脳神経内科クリニックを開院。
乳児期の発達の悩みや、てんかんと間違われやすい乳児期の行動について多くの相談を受けている。
https://higako-neuro.tokyo
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