■金額はほかの人に知らせない
いくらもらったのか、金額をほかの人に知らせるのもマナーに反する行為です。挨拶のときに「〇〇様からご厚志として〇〇円いただきました」と公表するのはもってのほかです。
先ほども説明しましたが、何らかの品物(お酒など)であれば知らせても問題ありません。 お礼のメールを送る場合も、「〇〇円いただきありがとうございました」ではなく「ご厚志をありがとうございました」が適切です。
「ご厚志」の5つの類語と例文
「ご厚志」には「ご芳志」「寸志」「お志」「ご厚意」「ご温情」などの類語があります。それぞれの意味と例文をご紹介します。
「ご厚志」だと堅苦しすぎる、また自分が金銭を渡す立場であるといった場合はこのような類語に言い換えましょう。
1.「ご芳志」
「ご厚志」の類語に「ご芳志」があります。「ご芳志」は「ごほうし」と読み、「相手の気遣い」を意味する言葉です。また「ご厚志」と同じように、主賓や上司からいただく金銭を指します。「ご芳志」の「芳」は「相手を敬う」という意味があり、「ご厚志」よりもより丁寧な表現といえるでしょう。 「ご芳志」の例文をいくつか次に挙げましょう。
【例文】
・〇〇部長より、ご芳志をいただきました。誠にありがとうございます。
・宴会に先立ちまして、〇〇様よりご芳志を頂戴しておりますのでご報告させていただきます。
2.「寸志」
「寸志」も「ご厚志」の類語で「すんし」と読みます。「ご厚志」が主賓や目上の人が包んでくれた金銭を指すのに対して、「寸志」とは金銭や品物を送る側が謙遜して使う言葉です。
「寸志」の「寸」には、「少しですが」といったへりくだった気持ちが含まれているため、目上の人が出してくれた金銭に対して使うのは間違いです。もし、目下の人が目上の人に金銭や贈り物を渡す場合は、「御礼」や「ご挨拶」がふさわしいでしょう。
年齢が上がると職場での地位も上がり、「ご厚志」をもらうよりも「寸志」を渡す場面が増えてくるでしょう。自分が金銭を渡す場合は「寸志」を使うことを覚えておいてください。
3.「お志」
「お志」も「ご厚志」の類語のひとつで、「おこころざし」と読みます。「寸志」と同じように、金銭を差し出す側が謙遜して使う言葉です。
「お志」も「少しばかりですが」という意味を含むため、お礼を伝えるときは「お志をありがとうございます」ではなく、「ご厚志をありがとうございます」と言い換えましょう。
4.「ご厚意」
「ご厚意」も「ご厚志」の類語で、「相手の親切心や思いやり」を意味します。また相手の思いやりだけでなく、「お金」を意味して使うことも可能です。ビジネスシーンでも普段の生活でも、使う機会の多い言葉といえるでしょう。
【例文】
・〇〇様のご厚意を大変感謝いたします。
・入院中の皆様のご厚意を深く感謝いたします。お陰様で、先日退院することができました。
5.「ご温情」
「ご温情」も「ご厚志」の類語のひとつです。「ご温情」は「ごおんじょう」と呼び、上司や目上の人の「心からの深い思いやり」を意味します。会話のなかで使うことはほとんどなく、手紙や礼状などで使うことが多い言葉です。
【例文】
・皆様のご温情に触れ、大変ありがたく感動いたしました。
・これからも一層のご温情とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
「香典」という意味で使われる場合もある
「ご厚志」は、「香典」の意味で使われることがあります。お礼の手紙やメールで「香典」という言葉をそのまま使いたくない場合に、代わりに「ご厚志」を使うのです。とくに「ご厚志辞退」は、大人として知っておくべき知識のひとつでしょう。
ここでは、「ご厚志」を「香典」という意味で使う場合について説明しましょう。
■「ご厚志辞退」は葬儀のひとつの形
「ご厚志辞退」とは、葬儀において「香典や供物はお断りします」という趣旨です。また葬儀だけでなく、関連するお通夜や告別式においても香典や供物を受け取ることはありません。香典をいただくと香典返しをする必要があるため、何かと忙しい葬儀の負担ややりとりを減らすのが主な目的です。
ただし「ご厚志辞退」の連絡を受けた場合でも、念の為、香典を準備しておいたほうが無難でしょう。またほかにも「供物・供花ご辞退」という言葉もあります。
これは「供物や供花は受け取りませんが、香典は受け取ります」という趣旨です。いずれにしても準備しておけば、必要な場合に慌てずにすむでしょう。
「ご厚志」をもらったらきちんとお礼を伝えよう
何らかの集まりで、上司や目上の人から「ご厚志」をいただいたときは、参加者への報告とお礼を欠かさないことが大切です。また、「ご厚志」は金銭を意味するデリケートな言葉のため、相手に失礼がないように、厚意を台無しにするようなマナー違反がないように気をつけましょう。
また類語も多くあり、時と場合、またお互いの関係性によってよりふさわしい言葉選びをすることが大切です。普段から正しい言葉を使えるように、少しずつ知識を増やしていきましょう。
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